阪神、栄光の土台となった「2020年ドラフト」を振り返る
毎年行われるドラフト会議で指名した全員が1軍で華々しい活躍をすることはない。複数人の主力が出てくることもそう多くはない。レギュラーや先発ローテーション投手、勝ちパターンといった主力が同一のドラフト会議から生まれれば、それは”大当たりドラフト”と言っても過言ではない。
近年、各球団に大当たりドラフトはあっただろうか。高校生と大学生社会人の分離ドラフトが終わった2008年以降のドラフトで振り返ってみたい。
岡田彰布監督のもとで18年ぶりとなるセ・リーグ制覇を果たした阪神は、2020年のドラフト指名選手が大活躍している。
1位指名では、競合を覚悟で佐藤 輝明内野手(仁川学院出身)に入札。4球団競合となったが、抽選の末に交渉権を獲得し見事入団となった。
その佐藤輝は1年目から3年連続で20本塁打以上を記録。今シーズンは2軍落ちの時期があったものの132試合の出場で打率.263(486打数128安打)、24本塁打。92打点はキャリアハイだった。
同じ野手では6位の中野 拓夢内野手(日大山形出身)の存在も大きい。1年目、2年目は遊撃手のレギュラーとして活躍すると、今シーズンは二塁手にコンバート。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場した疲れがあるなかで、全試合フルイニング出場を果たし最多安打のタイトルも獲得した。
ドラフト4位の栄枝 裕貴捕手(高知高出身)は捕手というポジションもあり、ここまでわずか3試合の出場にとどまっている。しかし今シーズン終盤は梅野 隆太郎捕手(福岡工大城東出身)が離脱したことなどで1軍に帯同を続けた。同7位の高寺 望夢内野手(上田西出身)は昨シーズンに1軍デビューしプロ初安打を放ったが、今シーズンは1軍での出場はなかった。
投手も佐藤輝と中野に劣らぬ戦力が生まれている。ドラフト2位の伊藤 将司投手(横浜高出身)、同5位の村上 頌樹投手(智辯学園出身)、同8位の石井 大智投手(秋田高専出身)だ。
伊藤は先発ローテーションに入り、3年間で29勝を挙げた。規定投球回に達したのは今年が初めてだったが、過去2年も135回以上は投げている。3年間トータルで423.2回を投げ防御率2.49は圧巻で、左腕エースの座をつかんだと言っていい。
村上はルーキーイヤーの21年に1軍デビューするも2試合の登板で防御率16.88と振るわなかった。しかし今年は22試合(先発21試合)の登板で10勝6敗、防御率1.75と大ブレーク。最優秀防御率のタイトルを獲得した。
石井は昨シーズン18試合の登板で防御率0.75と結果を残していたものの勝ち星、ホールドともに0で競った場面での登板はなかった。しかし今年は44試合の登板で1勝1敗19ホールド、防御率1.35と開花。勝ちパターンの1人に定着した。
一方で同3位の佐藤 蓮投手(飛龍出身)は現在、育成契約となっている。育成1位の岩田 将貴投手(九産大九州出身)は支配下登録を勝ち取ったものの1軍登板はない。
ドラフト指名からわずか3年。規定打席到達が2人、規定投球回到達が2人、そして勝ちパターンの主戦力が誕生した阪神の2020年ドラフトは大成功だった。
<2020年ドラフトにおける阪神の指名選手一覧>
1位:佐藤 輝明(仁川学院ー近畿大)
2位:伊藤 将司(横浜高ー国際武道大ーJR東日本)
3位:佐藤 蓮(飛龍ー上武大)
4位:栄枝 裕貴(高知高ー立命館大)
5位:村上 頌樹(智辯学園ー東洋大)
6位:中野 拓夢(日大山形ー東北福祉大ー三菱自動車岡崎)
7位:高寺 望夢(上田西)
8位:石井 大智(秋田高専ー高知ファイティングドッグス)
育1位:岩田 将貴(九産大九州ー九州産業大)
記事=勝田 聡