<春季三重県大会:海星6-3菰野>◇7日◇決勝◇津市営球場

 昨秋県大会決勝の再現となったカードである。

 そのとき優勝したのは海星だったが、今春は準決勝で昨秋の1回戦で競り勝った三重に敗れ、3位決定戦に回ることになった。機動力を生かしながらの攻撃野球も、しっかりと定着してきている。

 菰野は、昨年はスタートメンバーが全員2年生という陣容で戦い、結果的には夏の選手権を制して甲子園出場を果たした。しかも、甲子園でも初戦突破を果たしている。そのメンバーがすべて残っているので、昨秋も準優勝、今大会も安定した戦いでベスト4進出を果たしたが、準決勝では津田学園に敗れている。

 夏の甲子園経験者が全員残っている菰野は、絶対的なエースと言ってもいいクレバーな投球が光る栄田 人逢投手(3年)がいる。もっとも、戸田 直光監督は、「この大会は、いかに栄田を使わないで戦えるのかというところがポイント」ということを一つテーマとして掲げていた。

 そのための試しを多くやってきた大会だったというが、この日は打っては4番で打の中心でもある森 柊真投手(3年)が先発して4イニング。さらにはここへきて期待値も上がっているという大前 琢斗投手(2年)を3イニング、「スピードは十分にあるので、最終的には5回くらいは投げられるようになって欲しい」という中川 漣心遊撃手(3年)を2イニングマウンドに立たせた。

 森投手は4失点したものの、強風もあっていずれも失策絡みでの失点で自責点は0。戸田監督も内容的には合格点を出していた。大前投手はバント処理の巧みさなども見せたが、投球の入りには課題を残した。中川投手は1失点を喫したものの、戸田監督としても、十分に投手としても戦力として考えられているようだ。

 ただ、昨年からのチームとしての成長度に関して言えば、「まだまだ練習していかないといけないことがいっぱいある」そうだ。そこには、昨年は春季大会以降、戸田監督が一時期外れていた時期があったことも影響している。今年になって復帰したのだが、その間に詰めておきたいことをやり切れていなかったという背景があるのかもしれない。夏へ向けて、「チームとしての課題が明らかになった」と、この大会の収穫は挙げていた。

 昨秋の優勝校の海星は、主将で4番の水谷 宗太捕手(3年)を中心にまとまりがあり、結束力・団結力をチームの特徴としても挙げている。この大会では森下 晃理監督は、「この大会では投手の層を厚くしていくこと」を一つのテーマとして掲げていた。そういう意味では、右下手投げの森部 晃晟投手(3年)が台頭してきたことは大きな成果と言っていいであろう。決してスピードがあるわけではないが、巧みに打者のタイミングを外して打ち気をそらせていく投球は味がある。さらには、秋には1番をつけていた大西 琢斗投手(3年)や、ここへきて伸びてきたという左腕・倉谷 煌投手(3年)も無難な投球を見せていた。これに、故障の癒えて来た加藤 楓太投手(2年)が復帰すれば、投手陣としては森下監督の望む形になっていきそうだ。

 攻撃陣は、この日1番を打った宮本 紘成遊撃手(2年)が核となる。健大高崎が“機動破壊”という攻撃テーマで一世を風靡したが、その礎を作った葛原 美峰コーチが、外部コーチとして海星で指導しており、そのエッセンスは十分に注ぎ込まれているようだ。「そんなに打てるチームではないので、次の塁を狙う姿勢など、盗塁だけではなく、細かいところまで、しっかりと見て攻めていく姿勢は大事」と、森下監督も語っている。相手失策に付け込んだり、暴投を誘ったり、この日もそんな野球の片鱗も十分に示していた。