今年の九州地区のドラフト候補で大きく注目を浴びているのが、延岡学園の153キロ右腕・藤川 敦也投手(3年)だ。昨夏の前哨戦である県選手権大会1回戦で153キロを計測し、一躍注目を浴びた。しかし昨夏の宮崎大会を見ると、150キロ連発の速球は影を潜め、常時140キロ中盤の速球にとどまった。勢いで投げる力任せなフォームで安定感がないのが気になった。その後はヒジを痛め、打力の高さを活かして、野手として出場していたが、今春の宮崎県大会で復活を果たし、完投勝利するなど、復調の兆しが見えた。5月10日、明徳義塾との招待試合の投球から藤川の成長ぶりや、今後の課題を考えていきたい。
まず投球フォームについては力任せではなくなった。2年生の時は勢いよく足を上げて、その力を使って投げていた。そのため投げ終わりの際に、一塁側に体が流れ、エネルギーロスも大きく、体への負担も大きかった。
現在は左足を高く上げてから、軸足である右足に体重を乗せて体重移動に入る。その後、左足をまっすぐ踏み出して、体の近くで腕を振る。力感なく指先にしっかりと力を伝えたリリースができており、常時140キロ中盤でも打者を差し込むほどのストレートを投げている。ストレートのコントロールも良くなり、内外角へ厳しいゾーンに投げることで、つまらせて内野ゴロに打ち取っていた。
変化球の精度も高く、カーブ、スライダー、フォークの3球種を投げ込む。特にスライダーは落差があり、三振を奪う場面もあった。打者を見ながら、丁寧に投球をしている様子が伝わり、実戦力の高さが伝わった。
課題としてはカウント不利な場面になった場面や、ピンチを迎えると、置きに行くボールが増えていること。明徳義塾打線はそこを逃さず、痛打されていた。今後は走者を背負っても、強いボールを投げて抑えることが求められる。ピンチに強い投球ができれば、プロのスカウトからの評価も高まるだろう。
また、現在の投球フォームも進化の途中で、182センチ90キロという恵まれた体格を最大限に活かしきれていない。夏までに少しずつ出力を高める調整を行うと思うが、コントロール重視のまま、常時140キロ後半の速球でねじ伏せる投球ができれば、もっと被打率が下がるだろう。
プロ志望を掲げた高校生右腕の中では上位に入る投手。故障なく、平均球速を高め、投手成績も良好ならば、上位指名に入る可能性を持った逸材だ。