今年の高校生左腕で、着実に評価を高めているのが仙台育英のエース・吉川 陽大投手だ。最速145キロの速球、130キロ前半のカットボール、120キロ前半の曲がりが大きいスライダーで三振を量産する。春の宮城県大会では8.2回を投げ、12奪三振、無四球。愛知招待試合の中京大中京戦では二桁奪三振、東北大会では逆転勝利に導く好リリーフを披露した。東北大会では2試合に登板して、11.1回で、13奪三振、わずか1四球と三振を奪える上に、四球も少ないという理想的な投球を見せている。須江航監督と相談の上、3月に高卒プロ入り志望を決めた。そんな吉川の投球に迫りたい。

 まずストレートは常時130キロ後半〜140キロ前半と決して速くはない。ただ、力みのない投球フォームからリリース時にしっかりと力を伝えられる投球フォームをしているため、球質の良いストレートを投げる。まだ細身で次のステージで急激に球速が伸びるタイプだ。

 一番の武器はカットボール、スライダーを使い分ける投球術だ。ネット裏から見るとストレートと同じ軌道から急激に曲がってくるので、高確率で空振りを奪うことができる。吉川をリードする川尻結大捕手(3年)は「変化球をストレートに近づけるような軌道で投げるピッチトンネルを意識させています」と語るように、ストレートに近い軌道で曲げることを意識している。この使い分けは昨年の3月から始め、今年の3月にマスター。打者の芯をずらすことを目的としている。

 吉川はこの2球種を使い分けるポイントをこう語る。

「感覚的な話になりますが、スライダーはキューンと曲げるイメージ、カットボールはピュッと投げるイメージです。カットボールはストレートに近いイメージで投げています」

 独自の感覚で使い分けができるのだ。

 スライダーの精度の高さは、今年の高校生左腕でも1、2を争うのではないか。スライダーの良い高校生左腕といえば、佐藤 龍月投手(健大高崎)の名前が挙がるが、怪我する前の佐藤と比較しても負けていない。ストレートのキレ、制球力も高く、投球成績は文句無し。春季大会の内容を見れば、高卒プロ入りは近くなったといえる。

 とにかく夏まで怪我なくリフレッシュした状態で臨み、春以上にパワーアップした投球を見せることができるか。