音楽プロデューサーとしてCHEMISTRYやいきものがかりの結成、デビューなどで手腕を発揮する一方で、半世紀を超えるアマチュア野球観戦により野球の目利きでもある一志順夫。連載コラム「白球交差点」は、彼独自のエンタメ視点で過去と現在の野球シーンとその時代を縦横無尽に活写していきます。
昨秋に続いて中西(青学大)、伊藤(早大)らドラ1候補が続々登場
東京六大学野球リーグの早稲田大が優勝決定戦で明治大を粉砕し、各地区のリーグ戦優勝チームがようやく出揃った。今年もいよいよ全日本大学野球選手権が6月9日から始まる。スカウトはもちろん、ドラフト・ウォッチャーの方々にとっては忙しくもまた楽しみな季節の到来である。
昨年の大会は青山学院大が早稲田大を下し連覇を達成した。今大会もドラフト1位候補の絶対的エース・中西 聖輝(智弁和歌山)と来年のドラフト候補クローザー・鈴木 泰成(東海大菅生)の2枚看板を擁した戦力は盤石で、3連覇の可能性はかなり高いといえよう。対抗馬は順当にいけば、昨年のリベンジに燃える早稲田大という流れになりそうだが、リーグ戦同様、こちらもドラ1候補の“ノーヒッター”伊藤 樹(仙台育英)におんぶにだっこ状態だと、思わぬ伏兵に足元をすくわれかねない。
プロ野球に目を転じると、開幕から大学出身ルーキーの活躍が目立つ。渡部 聖弥(西武)、宗山 塁(楽天)、佐々木 泰(広島)、麦谷 祐介(オリックス)、西川 史礁(ロッテ)、金丸 夢斗(中日)らは既に1軍に出場、想定以上の活躍を見せている。
大学生の有力選手は、体力問題を除けば、プロ入り後も在学中の成績やプレーが大ブレせずある程度の確度で反映される印象が強い。昨今は高校野球の指導者も、よほどのことがない限り高卒でのプロ入りリスクを避け、進学を勧めるという。これはプロ野球選手として成功できなかった場合のセカンドキャリアを担保するため、学歴や社会経験を重視することに加え、高卒で下位指名や育成枠でのプロ入りは待遇や活躍の機会が限られがちで、大学で実績を積んでから上位指名を狙う方が有利と考える傾向があるからだろう。
上述の中西、伊藤も甲子園の申し子的な存在で、早くから将来を嘱望されてきたいわばサラブレッド。高卒即プロ入りの力量はあったし、実際プロ志望届けを提出していたら下位指名はあったかもしれない。結果的に進学し、それぞれ優秀な指導者のもと4年間名門で揉まれたことがさらなるプレーヤーとしての成長を促し現在の立ち位置を確立したとなれば、こうした現場の大学進学至上主義のトレンドも一定の合理性はあり、理解はできる。また、2000年代以降の地方大学台頭による地域格差解消も、有望選手獲得のうえで好循環を生んでおり、高校側と大学側にWin-Winの関係が形成されてきた実態もその背景にありそうだ。