元号が令和に変わり、甲子園でまだ未勝利の都道府県が1つだけある。それが宮崎県だ。県内の実力校が毎年自信を持って聖地に臨むが、いずれも跳ね返され、2018年夏の日南学園以来、勝利から遠ざかっている。
そろそろ宮崎県に勝利を。関係者の悲鳴が今にも聞こえてきそうだが、そんな宮崎県に全国に名を轟かせる剛腕が現れた。
肘痛からの復活を果たした春
延岡学園・藤川 敦也の名前が、全国的に知られるようになったのは昨年の5月。夏の前哨戦である県選手権大会1回戦で153キロを計測し、続く夏の選手権宮崎大会でも150キロをマーク。躍動感溢れるフォームから唸りを上げるボールを投げ込み、2025年のドラフト候補として一躍注目を集めた。
だがその後、藤川の活躍ぶりはなかなか伝わってこない。秋は肘痛によるコンディション不良で満足に投球できず、チームも3回戦敗退。今春もチームは宮崎大会で準優勝を果たしたが、藤川の登板は2試合のみで、大会と重なったため日本代表候補合宿も辞退。その現在地がなかなか掴めずにいた。
現在の状態をどう感じているのか。春季大会を終え、夏に向けてラストスパートに入ろうとしている藤川に直撃した。
「正直、秋は球速も出てなかったですし、コントロールもできてなかったです。(出来は)50%くらいでした。今やっと状態も上がってきて、85~90%くらいで、全開に近づいてきています」
大きな怪我ではなかったが、将来のある選手。首脳陣と密にコミュニケーションを取りながら、この春までは慎重に慎重を重ねて調整を進めてきた。春季宮崎大会は2試合のみの登板だったが、完投もマークするなど球数、出力を徐々に上げており、夏に向けて良い状態を維持しているという。
「肘の状態も良いですし、秋よりも真っ直ぐの質が上がってきています。春季大会では、低めのストレートでも空振りが取れたことが大きな収穫だったと思います」