<2025年全国高校野球選手権東東京都大会:八王子北23-0五商(5回コールド)>◇5日◇1回戦◇明治神宮球場

 西東京大会の開幕戦で八王子北と対戦した五商は、今大会の登録メンバーは11人。しかも全員が3年生だ。「1、2年生は声をかけても、軟式ならという子はいますが、硬式には入ってくれませんでした」と吉松優監督は言う。そのうえ、実際の野球部員は6人だけ。あとはバドミントン部から2人、元バドミントン部が1人、軽音楽部が1人、簿記部が1人といったように、部外からも人材を集めて単独チームで臨んだ。体育教師である吉松監督は、体育の時間で行ったソフトボールをみて声をかけたり、6人の部員たちが誘ったりして集まったメンバーだ。もちろん、他校との連合チームで参加することもできる。それでも単独チームで戦う意味について吉松監督は、「学校の代表としての責任があります」と語る。

 小学校、中学校としっかり野球をしてきたのは、エースで主将の青木 唯人(3年)だけだ。1回裏の八王子北の攻撃では、あっさり二死になったものの、そこから連打を浴び、四死球も続いたうえに、失策も重なり、いきなり11点が入った。

 この試合、五商の失策は9。打ち取ってアウトと思った打球が、失策によりセーフになる場面が何度もあった。それでもエースの青木は、辛抱強く投げた。そこに吉松監督は、青木の成長を感じた。青木も「前はキレたり、怒鳴ったりしてチームを嫌な雰囲気にしてしまったことがあります」と語る。

 結局23-0の5回コールドで八王子北が圧勝した。それでも五商の青木は、野球部あろうとなかろうと、一緒に戦った仲間に、「最後まで付き合ってくれてありがとう。感謝しかありません」と、語った。その表情には最後までやり切ったさわやかさがあった。

 ただし、五商の野球部は3年生がいなくなると、部員は0になる。吉松監督も青木をはじめとする部員も、野球部を存続させたい思いは強い。けれども生徒の希望が最優先である以上、1、2年生が、軟式なら野球をやりたいというのであれば、軟式に転換するのも選択肢の一つという。

 とはいえ、たとえ大敗であっても、神宮球場で開幕戦を戦ったというのは、野球部にとって大きな財産である。一旦は休止状態になるのかもしれないが、神宮球場で戦った歴史を、後輩たちが語りつぐ日が来てほしいものだ。