「伝統校」の誇りと歴史を胸に戦う──100年以上の歴史を築きあげている高校野球。その中には幾度も甲子園の土を踏んだが、ここ数年は遠ざかり”古豪”と呼ばれる学校も多く存在する。
昨年から導入された低反発バットや夏の甲子園二部制など、高校野球にも変革の時期が訪れようとしている。時代の変遷とともに変わりゆく中で、かつて聖地を沸かせた強豪校はどんな道を歩んでいるのか。『高校野球ドットコム』では名門復活を期す学校を取材し、チームの取り組みや夏に向けた意気込みに迫った。
東東京が誇る「下町の強豪」
東京・葛飾区に校舎を置き、学校の最寄り駅は青砥や亀有といった情緒あふれる街にある。部活動の応援歌には人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」のオープニング・テーマとなった葛飾ラプソディーが使用されている。そんな「下町の強豪」として東東京で安定した成績を誇るのが修徳である。野球部の練習場所は学校から自転車を走らせ、30分ほどかかる八潮市のグラウンド。のどかな場所ではあるが、住宅街で大きな声を張ることはできない。土だったグラウンドは2年前には全面人工芝に張り替えたそうだ。
OBには巨人で活躍した高橋 尚成氏を筆頭に多くの好投手を輩出している。近年でも21年夏に都ベスト4の原動力となった床枝 魁斗投手(現・国学院大)、190センチを超える長身を武器に、23年夏に都ベスト8入りを果たした篠崎 国忠投手(現・徳島インディゴソックス)ら、各世代で都内屈指の投手を擁し、常に東京のベスト8以上に食い込んできた。
しかし、甲子園に出場したのは2013年夏が最後。長く聖地から遠ざかっている。
今年のチームは、苦戦が続いている。秋季都大会の2回戦で早稲田実、今春も同じく都大会の2回戦で帝京の前に屈した。今夏はノーシードからのスタートとなる。それでも山崎 剛史監督は「秋は早稲田実さん、春も帝京さんといった東京の中心チームとやらせていただき、一つの基準を目の当たりにしました。そこからどうやって取り組もうかと考えて練習していますし、3年生のためにも良かったと思える状況にしたいです」と公式戦の経験を糧に指導にあたっている。
修徳中の指揮官が新監督に
チームを指揮する山崎監督は昨秋に就任したばかり。常盤大、杏林大での指導を経た後、昨年8月まで8年半の間、出身チームでもある修徳中の野球部を率いていた。OBにはWBC代表で世界一を経験した近藤 健介外野手(横浜)らがおり、昨夏も全国中学校軟式野球大会でベスト4に入るなど、中学軟式の強豪として知られている。
山崎監督にとって初となる高校野球の指導。中学時代と比べ「スピード感に違いはあります」と前置きしながらも、第一印象をこう語った。
「野球の本質、求めていくことや考える事は変わらないですね。私も大学で10年間指導させていただいた経験もありますし、ボールも飛ばなくなっているので、相手の心理をくみ取った対応力を考えると、そこまで大きく変化はしていないです」
本質的な部分と変わらないと話す中で、指揮官が危惧するのは野手陣のレベルアップだ。一昔前までは140キロを越えれば速球派と呼ばれていた時代だが、当たり前の数字となった。野手陣を指導する山崎監督にとっては、打撃力向上が喫緊の課題となっている。
「いわゆる『叩きつけるスイング』の改善をしながら練習に励んでいます。硬式野球では、ボールに負けないで潰して低い打球を飛ばす動作になりやすいですが、将来的な可能性や対応力の幅が低くなってしまうと考えています。全て否定するわけではありませんが、そこは中学、高校、大学、中学に関わらず思うことです」
まず着手したのが腕を伸ばしきった状態のスイング(ドアスイング)の改善だ。この動作により、バットのヘッドが遠回りして大振りになる癖をなくし、芯でとらえるよう選手にはアドバイスしているという。山崎監督も「癖の強さもありますが、一冬越えて良くなっている選手もいます。選手たちの可能性も広げていければと思います」と、各世代の指導をしてきた視点から、将来を見据えた指導を行っている。
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