<第107回全国高校野球選手権鹿児島大会:武岡台2-0加治木工>◇5日◇1回戦◇平和リース球場

 武岡台にとっては4年ぶりとなる夏初戦突破だった。昨秋の県大会に続いての開幕戦の勝利。吉田 公一監督は「チームの主力は1、2年生だけれども、要所では3年生が試合を決めてくれた」と3年生の頑張りに賛辞を送っていた。

 武岡台・柿本 陽大(2年)、加治木工・宮島 幸心(2年)、先発の2年生両右腕の活躍などで、互いに両者0行進の引き締まった好ゲームが、7回表まで続いた。

 決勝点となる2点が武岡台に入ったのは7回裏だったが、その流れを引き寄せる好守が7回表にあった。二死二塁。バックホームに備えて外野も前目に守っていた中、レフトオーバーの飛球が飛んできた。

 途中出場の左翼手・義岡 壯仁主将(3年)が執念の背走を試みる。芯でとらえた打球ではなかったが、風があった分、打球は伸びた。「入ってくれ!」と念じて差し出したグラブにボールが収まり、事なきを得た。

 主将の好守がその裏の武岡台の攻撃に流れを呼び込む。一死から5番・久保 順(3年)が意表を突くセーフティーバントで出塁。7番・久保田 雄太郎(2年)の三塁強襲二塁打で二死二三塁と絶好機を作った。

 8番・森山 太翔(1年)に代わって吉田監督が代打を託したのが、背番号16の3年生の秋好 勇慎。本来なら6番をつけてもおかしくなかったが、2年生にレギュラーは譲ったものの、打撃の調子が上がっており、「ここぞ!」という場面で重要な役割が回ってきた。

 「使ってもらった以上、打って返すのが監督さんへの恩返し」と秋好。1ボール2ストライクと追い込まれ、相手の2年生エースの4球目の直球も勢いがあったが「僕の気持ちが勝った」と右越え2点適時三塁打となった。

 待望の先制点を挙げた後の給水タイム。「まだ、終わっていないぞ!」「俺たちは守りに自信を持っているぞ!」…ベンチの選手たちが得点に慢心せず、良いベンチワークの声掛けができており「私が何も指示する必要はなかった」(吉田監督)。6回からリリーフした3年生左腕エース・山小田 圭佑は緩急を使った投球で、加治木工打線に本塁を踏ませなかった。

 19人いる3年生のうちベンチ入りできたのは12人。7人がベンチを外れてスタンドからの応援だった。「ベンチに入った3年生が頑張らなかったら、7人の3年生に申し訳ない」(義岡主将)意気込みを、夏の開幕戦で示すことができた。