【鹿児島】1回戦 徳之島 vs 鹿児島工

やれることに集中する・徳之島

　両投手陣を中心に1点を争う引き締まった好ゲームとなった。

　先制したのは鹿児島工。3回裏に一死から1番・﨑山柊生（2年）が右越え二塁打を放ち、2番・石王心路（2年）の強襲打がエラーを誘い、1点を先取した。

　徳之島は5回表に二死一塁から8番・幸田帆高（1年）、9番・里山聡汰（2年）が連打でつなぎ、同点に追いついた。

　6回には一死二塁から4番・上原龍樹（2年）が2ランを放ち、勝ち越した。

　8回表の徳之島の攻撃前に雷雨のため3時間余りの中断。再開後は鹿児島工が盛り返す。

　9回には一死二三塁から7番・稲荷田祥平（2年）の中前適時打で1点差に詰め寄った。なおも一死一三塁と一打同点、逆転の場面だったが、徳之島のエース嶺本倫太郎（2年）が踏ん張り、1点差で逃げ切った。

　終盤「負けゲーム」（地頭所眞人監督）の展開だったが、徳之島は「今やれることに集中する」姿勢で接戦をものにした。

　7回までは理想的な展開だった。3回にエラーで先制されたが、最少失点で切り抜けた。エース嶺本は4―7回を3人ずつで片付け、守備のリズムを作った。

　5回には8番・幸田、9番・里山、試合経験の少ない下位打線2人の連打で同点に追いつく。6回は2番・幸大翔（2年）が意表を突く二盗を決め、4番・上原が初球を豪快に振り抜いて勝ち越し弾を放った。攻守ともに良いリズムで試合を進めていたが、8回表の攻撃前に雷雨のため中断。再開まで3時間余りを擁した。

　「練習試合を１試合して、間をあけてもう１試合するつもり」（勝亮翔主将・2年）で臨んだが、再開後は明らかにパワーダウンしていた。8回二死満塁のピンチは無失点でしのいだが、9回は１点差に詰め寄られた。

　「取れるアウトを取れず、自分たちでピンチを広げてしまった」（勝主将）が「自分の力でどうにもならない過去にはこだわらない」（地頭所監督）気持ちの切り替えは新チームスタート時から言い続けてきたことだった。

　「同点、タイブレークまでＯＫだぞ！」

　苦しいマウンドが続くエース嶺本に遊撃手・勝主将が声を掛けた。崩れかけていた嶺本はここから踏ん張り、2者連続飛球で打ち取り、1点差で逃げ切った。

　「良い所も悪い所も両方出た。負け試合を勝てて良い経験ができた」と勝主将。地頭所監督も「野球は流れが大事と良い勉強になった」と言う。国体の関係で例年より約1カ月前倒しになった秋の県大会。どこも手探りでチーム作りをしている段階で「勝って次の試合を経験できる」のが何よりの収穫だった。