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攻守ともにハイレベルの山梨学院はいかにして築かれていったのか【前編】

2022.02.07

 3月18日に開幕する第94回選抜高等学校大会。その中でも優勝候補の1つとして取り上げられるのが山梨学院(山梨)だ。絶対的なエース・榎谷 礼央投手(2年)を擁し、昨年秋の関東大会では4試合チーム打率.416、守備も失策はわずか2。いかにしてこのチームを築かれていったのか。

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山梨学院・相澤 秀光主将

 下級生の時から期待が大きかった。昨夏の時点で、投手の榎谷、佐仲 大輝捕手(1年)、高橋 海翔内野手(1年)、鈴木 斗偉内野手(2年)、進藤 天内野手(1年)、岩田 悠聖外野手(2年)と多くの選手がレギュラーだった。そして初戦(2回戦)から準々決勝まで3試合連続で7得点以上をマークするなど、自慢の攻撃力を発揮し、夏に強い山梨学院を見せていた。

 しかし準決勝の富士学苑戦で、2対2で迎えた9回表、ミスから2点の勝ち越しを許してしまい、夏を逃す結果となってしまった。この負けは選手も、首脳陣も大きく悔やんだ試合だった。

 新チームの主将となった相澤 秀光内野手(2年)はキャッチボールの見直しを行った。
富士学苑戦の負けは1、2年生主体でやって、下級生のミスであの試合を落としたので、申し訳ない気持ちがあり、あの悔しさを忘れずにやっていこうと話し合いました」

 次の日から選手たちは普段の捕球練習、ボール回し、キャッチボールをより丁寧に行った。2度と同じミスを起こさないために。

 技術的にも改良を行った。高校通算20本塁打のスラッガーである相澤は
「中学時代から、かなり違うスイングになっていると思います。自分の悪い癖が、左足(軸足)に体重が乗りすぎたり、球との間が取れないというのもあり、そういうのを吉田部長からアドバイスをもらい、直しています」

 世田谷西シニア時代からスラッガーとして活躍していた高橋もスタイルが変わった。
「中学時代は後ろを寝かして後ろを大きくして打つバッティングだったのですが、それだと130キロ後半を超える速球にはファウルになってしまうので、上から上からという意識を教えてもらいました」

 高橋は結果として高打率を残せることができた。

 さらに、鈴木は横浜南ボーイズ時代までは好打者スタイルだったが、山梨学院に進学してから大きく伸びて長打も打てるようになった。

「元々はそんなに力があるバッターではなかったのですが、部長さんから右投げ左打ちの選手はリストが弱いということで、1年生の頃からハンマーやベンチプレスなどリストを鍛えることをやっていたら、最近体がついてきて、打球が飛ぶようになりました」

 その成果もあり、秋の公式戦では打率.629をマークし、大きく勢いに乗った。

[page_break:山梨学院の強さを発揮した拓大紅陵戦]

山梨学院の強さを発揮した拓大紅陵戦

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関東大会・閉会式の模様より

 チームは昨年秋の県大会で圧倒的な力を誇り優勝。関東大会初戦(対拓大紅陵)に臨んだが、「上手さ」が光る試合でもあった。

 昨秋の関東大会では千葉2位の拓大紅陵のエース・小堺 心温投手(2年)の前に中盤まで苦しんだ。130キロ前後ながら、内外角を厳しくつく投球に苦しんだ。5回までわずか1点しか奪えていなかったが、96球を投げさせていたことが奏功し、6回に集中打を浴びせ、逆転に成功した。

 結果的に試合は12対3のコールド勝ち。吉田監督にとっても、チームにとってもキーポイントとなったこの試合は、試合運びの巧さが光った試合だった。ファウルで粘り、また5回まで1点しか取れなかったとはいえ、塁上に出れば、牽制球を投げさせるなど、プレッシャーをかけ続けた。選手の能力の高さ、試合運びの巧さ、選手たちの実戦力の高さが光った。

 本気で明治神宮出場を狙った秋だったが、残念ながら決勝戦で明秀学園日立(茨城)に敗れ、準優勝に終わった。相澤主将は「関東大会優勝という目標を立てて、関東大会優勝はできなかったのですが、その悔しい気持ちは忘れられないです」と振り返った。

 取材日では、捕球練習、実戦練習、ランメニューを徹底的に行っていた。さらに強いチームになるために。後編では山梨学院の選手たちが目指す選手像について迫っていく。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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