片倉vs八王子北
6回に2ランを放ち笑顔で本塁へ向かう片倉・上野君
序盤の乱戦から抜け出た都立片倉が、中盤本塁打攻勢で都立八王子北を突き放す
<第105回全国高校野球選手権西東京大会:都立片倉10-4都立八王子北>◇12日◇2回戦◇府中市民
西東京では都立校として有力校の1つに挙げられている都立片倉。もっとも、この春は東京都大会では初戦は快勝したものの、2回戦では早大学院に大敗した。そこから、再度立て直して挑む夏だが、この日が初戦となる。対する、都立八王子北は1回戦では東京学芸大附に7回コールドゲーム、11対1で下してきており、勢いに乗っている。
都立八王子北が、都立片倉に対してどういう戦いを挑んで来るのかも興味深いところだった。
序盤では、お互いに4点ずつを奪い合うという激しい動きの試合で始まった。どうなることかと思われたが、3回以降は試合としても落ち着いていった。
初回、都立片倉は先頭の生江 健太郎捕手(3年)が中前打して、バント後、死球もあって一、二塁となったが、併殺で得点機を逃した。そして、その裏、都立八王子北は相手失策から都立片倉の先発小野田 礼人投手(3年)を攻め、安打と死球で無死満塁を作る。4番・松尾 咲之介内野手(3年)が左前打して2人をかえして、なおも一、二塁。内野ゴロで二、三塁とした、雨宮の中前打と7番・山内 大晟外野手(3年)のセーフティースクイズで4点をもぎ取った。これは、都立八王子北の山上 大輝投手(3年)にとっては大きな得点かと思われた。
ところが、都立片倉も2回に、すぐに反撃した。都立片倉も5番の石川 空汰内野手(3年)と藤井 亜郎内野手(3年)の連打と死球で無死満塁とすると、8番・関田 海陽外野手(3年)も三遊間をゴロで破る安打で2点を返しなおも無死一、二塁。バントでそれぞれ進めると1番・生江の三ゴロの間に三塁走者がかえり1点差。なおも連続四球で満塁となった後に、4番・上野 晴斗外野手(2年)が中前打してついに同点とした。これで試合は振り出しに戻った。
2回から、都立片倉の先発・小野田は別人のように投球が変わっていく。スイスイとストライクを取り2回から5回までは無安打に抑える。そして、その間に3回、都立片倉は死球の走者が2つの暴投で三塁まで進むと、関田の左犠飛で生還して逆転となった。少し浅い飛球なのでどうかな、という場面だったけれども、思い切ったタッチアップだった。
さらに都立片倉は、5回には5番・石川が左翼へソロホーマーを放つ。これで試合の流れは完全に都立片倉に傾いていった。6回にも4番・上野が2ラン。「初球からストレートを狙っていった」という思い切りの良さが好結果を残した。上野は、今年の3月になって素質が開花したのか、本塁打が出るようになって、今年だけで8本目だという。また、守りでも、8回に1死一、二塁という場面で中堅手の頭を越えるのではないかという打球に対して、好判断でまるでアメリカンフットボールのRBがロングパスをキャッチするかのような形で好捕。抜けていたら、展開としてはまだわからないという場面だっただけに貴重なプレーだった。
都立片倉の宮本秀樹監督は、先発・小野田を7回途中まで引っ張り、その後に1番をつけた高橋 利季投手(3年)につないだ。さらに、9回には田口 諒登投手(3年)で抑えて逃げ切った。「初回、まさかの形で4点取られちゃったけれども、ここで小野田を代えないで我慢したのが結果的にはよかったのかなあ。これは、監督としてのオレの成長かな(苦笑い)」と、冗談を交えて話していたが、初回の小野田は思いのほか変化球の切れが良くなかったという。イニング中に修正することはできなかったけれども、すぐに味方打線が同点に追いついてくれたということもあって、2回からはすっかり切り替えて、自分の本来の投球ができていた。「何人か投手はいるんだけれども、やっぱり、一番信頼できるかなと送り出したからね。初回で代えちゃうと、チームとしても落ち着かなくなっちゃうんじゃないかなとも思ったしね」と、その心情を明かしていた。
初回に4点と、リードを奪った都立八王子北だったが、そのリードを守り切れなかった。2回以降からは都立片倉投手陣に抑えられて、本塁が遠くなり、追加点が奪えず、2回以降は8回の無死からの連打以外は、好機らしい好機も作り切ることができなかった。