小山vs熊谷商
巧に打たせて取っていた小山・杉本君
栃木県と埼玉県の公立伝統校対決は、仲良く星を分ける
<交流試合:小山8-4熊谷商、熊谷商11-3小山>◇24日◇栃木・小山高校グラウンド
6月も最終週の週末となって、夏の大会本番へ向けて、いよいよ各校最後の調整へ余念のないところであろう。この夏は、2年連続のシード校として迎えることとなった小山。2003年の第85回大会以来の甲子園出場を目指したいところである。ただ、今年のチームは昨秋の大会をコロナ禍で途中辞退という悔しさを味わっている。そんな中で、春季大会に結果を出してきたことは評価されていいであろう。
熊谷商は1970~80年代にかけて、埼玉県の高校野球を引っ張る存在でもあった伝統校である。近年、商業校では、伝統校であっても男子生徒の入学者の減少などもあって、なかなか部員確保そのものも厳しいというのが現実である。それでも、熊谷商は所沢商とともに、埼玉県内の公立商としては、頑張って伝統を維持していく努力をしている学校と言っていいであろう。
そんな両校の対決である。古くからの高校野球ファンにとってはちょっと、興味深い対戦といってもいいのかもしれない。
この時期の練習試合は、夏本番へ向けての最終調整となるのだけれども、ことに投手に関しては、どういう形で誰をどこのタイミングで起用していくのかということも大事になってくる。そういう意味では、指揮官としても継投のタイミングや可能性を試してみるということに対しての最終チェック段階でもあるのだ。
小山は、斎藤崇監督がもっとも気にしているのは、杉本投手をどう使うのかというところである。決して球が速いわけでもないのだが、何故か相手打線に案外打たれないので、上手に使っていきたいということだった。上体も少し立ったような形のフォームで、決っしていいフォームとは言い難いのだけれども、飄々として投げ込んで打たせて取っていく。「ほとんどの打者をひっかけさせるような感じで飛球で打ち取っていきます」ということだったが、この日も4イニング投げて12のアウトのうち飛球が9本だった。
小山としては、強豪に対して、この杉本をどのタイミングでどのように起用していくのかということが一つのカギにもなりそうだ。また、そこまでに佐々木 遼投手がどのように試合を作っていけるのかということも当然必要になってくるだろう。「本当は、山田 陽斗をエースとして使っていきたかったのだけれども、肩の故障があって、長いイニングを投げられない状態」ということで、山田投手はこの日も、2試合目で2イニングを投げて2失点という形だった。
熊谷商は、2年生の中村 謙吾投手が軸となっていきそうだが、この日は3回から5イニングを投げて、1イニングだけつかまったが、ダイナミックに投げ込んでいって力強さは感じられた。
また、熊谷商では白木澤 星凪外野手(3年)が1試合目では1番を打って本塁打も含めて3安打。2試合目では4番として起用されたが、4四死球でほとんど勝負してもらえなかった。新井茂監督は、「4番に置くと、意識してしまうのかなあ。なかなか結果が出せないのですけれども、ウチでは一番安定した打者だと思います。最終的には1番で起用していくことになるのかなあ」と語っていたが、小山のトリッキーな杉本投手に対しても、唯一きっちり捉えて右前打していた。
小山としては、組み合わせでは3回戦で当たる可能性の高い國學院栃木が最初のヤマになってくるであろう。そこを退けられたら、一気に上まで行けそうな雰囲気もありそうだ。斎藤監督も、「ここ何年かの中では、一番力はあるとは思っているのですけれどもね」と手ごたえは感じている。
熊谷商はクジで2回戦からとなったが、初戦の相手は川越工と越谷南の勝者となる。川越工が来るようだと、昭和の時代に埼玉県をリードしていた商業と工業の実業校同士の対決となり、古くからのファンにとっては、とても興味深い対戦となりそうだ。そして、ここをクリアすれば、ベスト8以上までは上っていけそうな力もあるのではないかと思わせるチームとなっている。
いずれにしても、夏への期待は大いに高まる両チームだった。
記事:手束 仁