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【WBC代表】恩師が語る、中日の若きエースで活躍する髙橋宏斗の探究心の高さ、活躍は必然だった

2023.03.14

 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次ラウンド、日本は4連勝を収め、プールBを1位で通過した。

 そのなか、剛速球右腕として評価を高めているのが、中日・髙橋宏斗投手(中京大中京出身)だ。

 中京大中京(愛知)時代は19年の明治神宮大会で優勝投手になり、20年の高校生No.1投手として注目された。同年のドラフトでは、中日から1位指名。高卒2年目の昨年シーズンに本格デビューを果たし、6勝7敗ながら、116.2回を投げ、134奪三振、防御率2.47の好成績を収めた。今年はWBC代表に選出。韓国戦の9回から登板し最速156キロの直球をマークするなど1回無安打無失点の代表デビューを飾ると、オーストラリア戦でも9回から登板し、本塁打1本を浴びたが自分の持ち味をしっかり出した。

 髙橋の素顔を知るべく、中京大中京時代の恩師である高橋監督を直撃した。

類まれな素質の高さを成長させた髙橋宏斗の探究心の高さと人間性

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髙橋宏斗投手

 豊田シニア時代は2番手投手だった髙橋。当時のエースは藤井 翔投手(東海大菅生ーテイ・エステック)だった。高橋監督は当時から野球選手として能力の高さがあったと振り返る。

 「同級生にいいピッチャーがいたり、器用にいろんなことができるので、内野も守ったりしたので、ピッチャーに専念というよりも野手と投手という形でやっていたこともあります。2番手というよりはピッチャーと兼用の内野手という位置付けでした」

 高校入学までに180センチに伸びたこともあり、それからは投手一本となった。高橋監督が髙橋を投手に専念させたのは球筋から見える素質の高さを見抜いたからだった。

 「私はピッチャーだけで考えていましたので、やってもショートだとか、それくらい器用にこなすこともありますが、彼の球筋と言いますか、投球の力強さには目を見張るものがありました。高校入学から投手一本で取り組んで、チームの核になる投手になるだろうと見ていました」

 高橋監督の眼力通り、髙橋は1年秋にして、140キロ後半の速球を投げるまでに成長する。そして2年秋には明治神宮大会優勝投手となる。こうした成長の裏には探究心の深さがあった。

 「向上心が非常に強いので、探究心も強くありました。そういったところに学生コーチと研究を重ねながら、自分に見合ったトレーニングについても意見を交わしながらやっていけたことが、彼の高校での成長に繋がったと思います。今もその良さがあると思うので、まだまだ本人のコメントを聞いても、WBCの錚々たるメンバーの中で勉強していると思うので、すごく本人にとってはいい機会になっていると思います。」

 当時も、練習が落ち着いたタイミングで、髙橋は当時の学生コーチと意見を交わしていた。

 1時間以上をかけて通学をしていた髙橋は移動中に、撮ってもらった好調時と打たれるときの投球フォーム動画を見て、反省を繰り返したり、野球についての読書をした。当時から直球の回転数にこだわったり、フォームに持論を持っていたり、こだわりが強く、投手としての知識レベルが他の高校生と比べてもずば抜けていたのを覚えている。高橋監督はその髙橋の個性を尊重し、育てていたのがうかがえる。

[page_break:自ら進んで追求できる選手こそプロにいくべきであり、活躍できる]

自ら進んで追求できる選手こそプロにいくべきであり、活躍できる

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高橋源一郎監督

 髙橋は最終学年へ向けて、「圧倒的な投球をしたい」と語っていたのを思い出す。

 しかし、それはかなわなかった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、春夏の甲子園ともに中止になった。それでも、髙橋はモチベーションを落とすことなく、愛知独自大会では150キロ台の速球と140キロ前後のツーシームで圧倒し優勝。また、甲子園での交流試合(智辯学園戦)でも、延長10回完投勝利と、自分の代になってからは無敗で終えた。高橋監督は目標を見失わず、取り組んでいたことを明かす。

 「最後の夏は2ヶ月学校がなかったり、全体練習ができなかったりしましたが、それが返ってそれが宏斗の向上心を高めたり、自分と向き合う時間になったのかなと思います。その期間の中でも自分で探りながらお兄さんとキャッチボールをしたり、学ぶことがあったと本人から聞きました」

 世代No.1投手として注目されるも進学を決断。しかし進学先が不合格となり、プロ志望届締切直前で、プロ志望に切り替えた。そこから一気にNPB球団が調査書を届けに学校に訪れた。

 「短い時間の中で、高橋家としても決断をしたと思います。プロの球団の方からもそういう評価をされていたのも大きかったと思います。プロ志望になったらどこの球団も調査というのはありました」

 結果として地元球団・中日から1位指名を受け、2年目から1軍ローテーション入り。期待の若きエースとして育てられている。高橋監督は球団の方針に対して感謝の思いを語った。

 「ありがたいことですよね。錚々たるドラゴンズの投手陣で先輩方に可愛がってもらっていますし、その中で本人が勉強してというところもありますが、本当にいい環境の中でやらさせてもらっていると思います」

 改めて語ったのは意志の強さがプロで活躍できる土台に繋がったと語る。

 「これは同期でプロ入りした中山礼都(巨人)もそうでしたけど、誰よりも考えて練習することを『努力している!練習をやっている』と主張するわけではなく、自分にとって必要なことだと、当たり前にやっているんですよね。自ら進んで練習を続けられる選手は、自然とできるようになっていくというか、上達が見込める。やはり、やらされているという形になってしまうと、どうしても受け身になると、なかなか自分のものにはなっていかないと思います。宏斗に関しては、志が高いものがあるので、そこの部分の心配はないです。そこに心配がある選手は、野球でお金を稼ぐわけですから、プロに行ったらいけないと思います」

 髙橋は「志」「能力」ともに高卒プロでいける選手であり、今もきっちりと球団が期待するレールに乗っているのも頷ける。最後にエールを送った。

 「本人がドラゴンズのエースになってくれる以上に嬉しいことはないですけど、ケガなく一つずつ成長していきながら、長い野球人生であってくれれば、応援しがいもありますし、嬉しいことだと思います」

 順調過ぎる成長を見せる髙橋宏斗。今回のWBCの経験も成長の糧にして、昨季以上の大飛躍につなげる。

(取材=河嶋 宗一

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