Column

名門松商学園が支えた歴史に、佐久長聖を中心とした新勢力が絡み合う(長野県)

2016.01.24

北信越地区では戦前からコンスタントに甲子園に出場校を送り出していた長野県だが、その大半が松商学園の前身である松本商だ。

松商学園が引っ張り発展してきた長野野球

松商学園高等学校

 初めて甲子園球場に舞台が移った1924(大正13)年夏には準優勝を果たしている。
その2年後の春にも決勝で広島広陵(当時は広陵中)に敗れて準優勝となる。この時から広島広陵との因縁は強く、27年といずれも準決勝で対戦、敗れている。さらに続いて、広島広陵を1回戦で下した28年夏には、それで勢いづいたのか快進撃を果たして全国の頂点に立った。そして63年後の1991年、センバツ決勝に進出した際にも、またしても広島広陵と当るのだった。

 宿敵となった広島広陵とは甲子園で都合6回顔を合わせている。
1勝5敗と分が悪いが、決勝で二度当たっている他、勝った方がいずれも決勝進出しているというのも興味深い。

 いずれにしても、長野の高校野球といえば松商学園といわれるくらいにイメージが強い。その松商学園の最大のエポックとなったと言えるのが1991(平成3)年のことである。

 この年のセンバツに5年ぶりに出場を果たした松商学園は、長野県勢としては久々に前評判の高いチームだった。エースの上田 佳範(日本ハムファイターズ→中日ドラゴンズ)が安定しているというのが最大の要素だったが、1回戦で愛工大名電と対戦。
当時、愛工大名電はイチロー(オリックス→MLB)がエースで3番だったが、彼を5打席を無安打に抑え、 チームも3対2と1点差で退けた。

 これで勢いづいた松商学園、2回戦では前年夏の優勝校で夏春連覇に挑んだ天理を完封。さらに準々決勝では優勝候補筆頭だった大阪桐蔭も完封。準決勝では国士舘も完封して決勝進出を果たす。65年ぶりの決勝進出の相手が、まさかの因縁の相手、広島広陵だった。5対2のリードから7回に追いつかれ、結局サヨナラ負けで優勝を逃すのだが、長野県は久々に高校野球に燃えた。

 この大会で上田投手の評価はさらにあがり、も甲子園に出場。県勢としては久し振りに前評判が高かった。松商学園は3回戦で井手元 健一朗(中日→西武→JR東海)のいる四日市工に延長16回の末に満塁。このチャンスに上田が肩に死球を受けサヨナラ押し出しで下している。結局準々決勝で、松井 秀喜が2年生で4番に据わっていた星稜を相手に敗退してしまったが、しかし多くの長野県人は、この年の高校野球だけは強烈に記憶しているという。

このページのトップへ

[page_break:佐久長聖、上田西、松商学園と三つ巴の時代に]

佐久長聖、上田西、松商学園と三つ巴の時代に

佐久長聖高等学校

 松商学園で盛り上がってから3年後の夏、初出場の佐久が、スイスイとベスト4に進出する。現在の校名の佐久長聖は校名変更した翌年も甲子園に姿を現すが、以来長野県の高校野球をリードしていく存在となる。

 長野新幹線や交通網の発達で、首都圏への遠征や見学も容易になり、チームの意識アップしていったことも背景にあるだろう。
こうして、勢力構図の中心は松商学園時代から佐久長聖へと移行していっているようだ。同校は駅伝の強豪校としても知られている。

 同じ東信地区で近年、勢いがいいのが部員も多い上田西だ。13年に甲子園初出場を果たすと、15年夏にも再び甲子園に姿を現している。

 このように、現在は長野県の勢力図は佐久長聖を軸に、新鋭の上田西と伝統の松商学園が絡むという三つ巴の様相と言っていいであろうか。

歴史を振り返ると、戦前では、当初は長野師範の時代もあったが、以降は松本商のほかは長野商岡谷工の前身である諏訪蚕糸が目立つくらいである。

 戦後になると。さらに長野県の高校野球は低迷していくのだが、わずかに54年春飯田長姫(旧飯田商)が、彗星のように現れて初出場初優勝を果たしている。エースの光沢 毅明治大→三協精機)は「小さな大投手」と絶賛された。

 ところが、その活躍を最後に長野県勢は甲子園では初戦負けという時代が続いていた。勝って一つかせいぜい二つという時代だ。
丸子実(現丸子修学館)が大型チームとして評判になったこともあったが、ベスト4まで残ることはなかった。丸子実松商学園が県内2強という時代もあった。
男子バレーボールで3連覇を果たした岡谷工も諏訪蚕糸の時代から野球も強い。男子バレーボールといえば、現在は創造学園が強いが、野球でも健闘している。

 他にも、東海大三や校名にインパクトのある地球環境にかつての信州工から母体の武蔵工大が校名変更したことに伴って新校名となった都市大塩尻など私学勢が上位をうかがう。
そんな中で、小諸商をはじめとして上田上田千曲の東部地区の公立勢や松本深志長野諏訪清陵といった文武両道を目指す地域一番校も人気で、教育県長野の面目躍如といったところだろうか。

(文:手束 仁


注目記事
【1月特集】2016年、自律型のチームになる!

このページのトップへ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!