ドラ1候補に挙がる152キロ左腕・東松快征(享栄)を成長させたヤクルト・ドラ5位右腕とライバル・前田悠伍の存在 vol.1

東松 快征投手(享栄)
2023年の高校生左腕を代表する左腕、享栄(愛知)の東松 快征投手(2年)。最速152キロの速球と、多彩な変化球で勝負するパワーピッチャーだ。
東松は同じくドラフト1位候補に挙がっている大阪桐蔭(大阪)の前田 悠伍投手(2年)に強烈な対抗意識を持っている。それでいながらストイックな姿勢で伸びていく姿勢の良さもある。そんな東松の成長の歩みを紹介していきたい。
とてつもない剛速球だった。
享栄高校の室内練習場で投げ込む東松の速球は、まさに剛速球だった。コーチの方から「ネットをはずしましょうか。そのほうが勢いが伝わる球筋が撮影できますよね」と提案を受けて、ネットがなく、捕手のやや後ろから動画撮影したが、恐怖感しかなかった。投球練習を見て、実感した。
「これはドラ1」だと。
剛速球だけではない。取材した22年7月と比べると変化球の精度も高まっていた。しっかりとレベルアップしている様子が伝わってきた。東松はいかにして成長してきたのか。
東海中央ボーイズ時代から評判だった。
「大藤先生(監督)と日本一になりたい思い一つで来ました。」
享栄に入学。2学年上には多くの好投手がいた。最も憧れたのが、2021年ドラフト5位の速球派右腕・竹山 日向投手(ヤクルト)の姿だった。竹山の投球だけではなく、取り組む姿勢にも大きな影響を受けることになる。
「竹山さんの連投の取り組み方とか、自分と比べてみると、全然、自分は未熟だなと感じました。竹山さんを目標にして、練習の取り組み方が変わって、球の勢いやコントロールが良くなりました。」
確かに21年のドラフト前に竹山を取材した時、基礎トレーニングをしっかりとこなしている姿があり、大藤監督からも取り組む姿勢が他の投手とは違うと絶賛していた。東松は竹山の姿勢を学び、レベルアップに努めていた。
また、同時にライバル視する投手も現れた。それが大阪桐蔭の前田だ。明治神宮大会で快投を見せる前田についてこう語る。

東松 快征投手(享栄)
「明治神宮大会から前田選手を見ていて、絶対に負けないぞという思いで、ライバルとして見るようになりました」
ライバルと認めつつ、前田の凄さをこう語る。
「マウンドでの冷静さや試合作りやフィールドやコントロールなど、投げること以外でも冷静にできているので、学ぶところがたくさんあります。尊敬もしています。」
1年冬は体幹トレーニングを中心に行い、筋力アップのためにウエートトレーニングを欠かさずに行い、2年夏までには最速148キロをマークするまでになる。
夏の大会前のブルペン投球を見たが、勢いのある剛速球を投げ込んでいた。投球を受けた関 颯太捕手(3年)は「レベルが高い球です。球速も力強く、秋に比べてコントロールが良くなってきました。また変化球で三振を取れる球もあるので良くなってきました。」と高評価した。
東松自身も手応えをつかんでいた。
「体が軽くて良い感じで投げられていました。ダイナミックに投げているので、威圧感や迫力が出せるように意識しています」
享栄のエースとして夏の甲子園出場に導くつもりで予選に臨んだが、準決勝で東邦に敗れた。
「夏の大会でスタミナが厳しいと感じました。準々決勝で完投してその疲労があって、思うようなコンディションで臨めなかったのですが、夏の大会は先輩の最後の大会だったので、申し訳ないというか、夏の大会の恐ろしさや厳しさを学びました」
初めて主力投手で臨んだ夏の反省を生かして、新チームに入ったが、秋でも悔しい敗戦を味わうことになる。それが成長の起点となった。
(取材:河嶋 宗一)