横浜vs神奈川工
横浜打線を苦しめた神奈川工・山城陽の緩急自在のピッチング
力投を見せる山城陽(神奈川工)
9月15日、神奈川秋季大会4回戦。横浜は神奈川工と対戦し、1対0で勝利し、ベスト8進出を決めた。
横浜は神奈川工の先発・山城陽(2年)の前に大きく苦しんだ。8回までわずか1得点と、山城はいったいどんな投手なのか?技巧派右腕という形容がぴったりだろう。
三塁側のプレートを踏んで、左足を巻き込むように挙げて、インステップ気味に踏み込だし、小さいテークバックから振り下ろす。ストレートのスピードは120キロ前後と遅い。ただ変化球の精度が非常に高い。山城の武器は110キロ前後のカットボール。一見、遅いボールに見えるが、打者の手元で小さく曲がる。山城のボールのほとんどは向かっていくボールが少なく、フルスイングができない。横浜の打者はそれを理解して、ボールに逆らわず、逆方向に打ち返す打撃を見せ、単打を重ねるも、長打が出ない。
山城の素晴らしいところはピンチになっても自分のペースを崩さず投げること。ピンチでも自分の間合いで投げることができるため、最後まで勝負できていた。横浜打線は最後まで攻略の糸口をつかむことができなかった。内野陣はピンチ時で球際の強さを発揮し、山城を盛り立て、また外野陣もポジショニングの良さ、女房役の熊谷も強肩で盗塁阻止を見せるなど、堅い守備が光り、2回以降、無失点を重ねた。
また1番を打つ山城は打撃センスが高いのも見逃せない。第1打席にポテンヒットを放ち、第2打席は三遊間へ内野安打。第3打席は松本の速球を振りぬき、レフト最深部へのフライを放った打撃は見事だった。第4打席は凡退したが、山城への配球はまさに強豪私学のクリーンナップと対戦しているような配球だった。敗れはしたが、投打で野球センスの高さは発揮したといえるだろう。
この試合に関しては松本隆之介のピッチングがなければ危なかった。最速140キロのストレート、スライダー、カーブ、チェンジアップを織り交ぜ、5安打完封。また、内野陣も堅い守備を見せ、危なげない試合運びを見せた。
この試合、8安打1得点に終わったものの、3安打を放った度会 隆輝は山城が投じる変化球に対しても体と頭が突っ込まず、ボールを手元まで呼び込んで、確実にミートする打撃技術の高さは秀逸。3安打1盗塁としっかりと存在感を示した。甘く入ればスタンドインできる長打もあり、技巧派投手にも苦労しない対応力の高さといい、高校2年秋の内野手として群を抜く完成度の高さがある。また主将に就任した津田啓史も好守備とバットコントロールの良い打撃が目を引いた。1得点しか奪えなかったが津田、度会の二遊間は今後も注目したい。
(文=河嶋宗一)