<令和7年度春季近畿地区高等学校野球大会県予選 準々決勝:星林6-5市和歌山(延長10回)>◇27日◇準々決勝◇紀三井寺公園野球場

 ソフトバンク・小久保 裕紀監督の母校である星林がセンバツ出場校の市和歌山にサヨナラ勝ち。18年ぶりに春4強入りを果たした。

 試合前から注目選手に挙げられていたのがエースの則藤 瑞起投手(3年)。140キロ超えの力強いストレートを投げる右腕だ。

 だが、近畿大会や甲子園で数々の好投手と対戦してきた市和歌山打線が初回から襲い掛かる。1回表の初球、1番の藪内 嘉栄外野手(3年)に自己最速タイとなる142キロのストレートを捉えられ、レフトオーバーの二塁打となる。

 これをきっかけに市和歌山は2得点。初回から強さを見せつけたかに見えた。

 しかし、「力強いバッターが揃っていたので、力で押し切れないと思いました」(則藤)と変化球の割合を増やしたのが功を奏し、2回、3回は無失点に抑える。

 さらに則藤は3回には球場のスピードガンで自己最速を更新する144キロを計測。強豪校相手に堂々と渡り合った。

 守りから流れを掴んだ星林は2回裏に則藤の適時打で1点を返すと、3回には3番・濱口 真悠斗捕手(3年)、4番・西山 稜賀内野手(3年)の連続適時二塁打で逆転に成功。4回終了時点で3対3の同点と強豪校と互角の戦いを繰り広げる。

 市和歌山は5回裏からセンバツで147キロを計測した丹羽 涼介投手(2年)が登板。この日も148キロを計測するなど好調だったが、星林は二死二、三塁のチャンスを作ると、7番・酒井 暖生内野手(3年)の右前2点適時打で勝ち越しに成功した。

 市和歌山も意地を見せ、7回表に二死二、三塁から岸上 優一朗内野手(3年)の左越え2点適時二塁打で同点に追いつく。両チーム譲らないまま試合は無死一、二塁のタイブレークから始まる延長戦に突入した。

 9回を終えた時点で則藤の球数は154球。それでも「筋トレをいっぱいやってきたので。後は気合いですね」と球威は最後まで落ちなかった。

 10回表、二死満塁からこの試合で174球目となる139キロのストレートで空振り三振を奪って無失点。10回裏、星林の攻撃は相手のバッテリーミスで二、三塁となり、市和歌山は満塁策に打って出た。

 無死満塁から酒井の放った打球は遊撃手正面のゴロ。しかし、これが本塁への悪送球を誘い、星林のサヨナラ勝ちとなった。

「ベスト4に入って、シードを取ることを目標に頑張ってきました。勝ち切れたのは後半のピンチを耐えてくれたから。秋は耐えきれませんでしたが、練習試合で県外の強いチームとそれなりの勝負ができたので、心の余裕ができたのだと思います」と語った辻 知幸監督。春に新入生9人が入部するまでは選手13人の少人数だったが、その分、一人一人の練習量は十分に確保することはできた。

 星林の選手は攻守に鍛えられており、この日は無失策。打線も濱口、西山の3、4番を中心にバットがよく振れており、ここまで勝ち上がってきたのも決してフロックとは感じさせないチームだった。

 一方、敗れた市和歌山はエースの土井 源二郎投手(3年)ら主力を複数欠く中での戦いだった。「こういうゲームを勝たないといけない。まだまだ力不足です」と話した半田 真一監督。夏はノーシードでの戦いとなるが、強い姿を見せることはできるだろうか。