都立拝島vs都立戸山
ケガから復帰したエース・宮川匠の初完投で都立拝島が接戦を制する!
都立拝島・宮川匠
12日から開幕した秋季東京都大会の1次予選。初日からあいにくの雨でいくつかの会場は中止となったが、お昼から[stadium]佼成学園グラウンド[/stadium]予定させていた都立拝島と都立戸山は何とか開催された。
初回、先攻の都立拝島は4番・小野太己のヒットなどで一死満塁としたところから、5番・清水海のライトへの犠牲フライで先制のホームを踏む。
4番・小野は守備ではキャッチャーを務め、攻守の要という存在だが、バッティングから見ていくと、フォーム全体的に目立った癖はない基本に忠実な構えをしている。オープンスタンスから小さく足を上げてタイミングを測り下半身から動き出すが、スイングに入る際に少しバットが遅れて出てくるため、なかなか速球を引っ張り切れないところは修正していくところだろう。
そして守備ではセカンド送球2.1秒前後を記録しており、捕ってからが速い。肩を強くしていければ2秒を切ることは可能なはず。何より低めの変化球をきっちりと止められており、投手も安心して投げられる。
先制点に繋がる犠牲フライを放った5番・清水はあまり大きく右足を踏み込まずに上体は高いが、突っ込むことなく軸で鋭く回転することができている。上半身から始動する上半身主導ではあるが、顔をしっかりと残しているため変化球もしっかりと見極め出ている。
2回にも1点を加えて2対0とした都立拝島の先発はエース・宮川匠。ノーワインドアップからゆっくりと捻りながら左足を上げて始動し、ショート方向に蹴りだして左半身で壁を作りながら重心移動。右腕のテイクバックは回しながらトップまで持っていく。
スリークォーター気味の高さから脱力した状態で見られた右腕からはキレのあるストレートに緩急を利かせた大きく曲がるカーブ。さらに鋭く沈むスライダーと、秋の段階では完成度の高い投手。手足も長く投手らしい体格だがまだ線が細く、ピッチングでもインコースがまだ使えないなど改善できるところはまだたくさんある。そうした点を踏まえると今後の成長を期待してしまう右腕だ。
その宮川は3回にエラーで2点を失うと、4回にはバッテリーエラーで失点を重ねて4対3。さらに5回には一死から都立戸山の3番・正村悠一郎への四球からピンチを招くと、5番・大倉颯太のタイムリーで4対4の同点で試合を折り返した。
都立戸山・松﨑祐晃
後半に入ると両チーム互いにミスが絡みながら点数を奪い合う目まぐるしい展開。その中でも都立戸山は2番手でマウンドに上がった背番号14・松﨑祐晃のテンポの良い投球をきっかけに流れを掴む。ノーワインドから身体を少しひねりながら足を上げて、小さな体を目一杯使ったフォームからキレのあるボールでアウトの山を築く。すると8回に、二死一、三塁から5番・大倉のライト前で7対8と都立戸山がリードを奪った。
それでも9回、都立拝島は8番・大野晃の二塁打とバッテリーミスで同点のチャンスを作ると、9番・江森力輝斗の打席で振り逃げ。この間に同点のホームを踏むと、一死仁、三塁から相手バッテリーのミスやボークで勝ち越し。これが決勝点となって、都立拝島が何とか都立戸山を破って、代表決定戦の切符を掴んだ。
勝利した都立拝島は2年生4名、1年生7名の計11名でチームは再始動。加えてチームの主力となるエース・宮川は怪我の影響で離脱。7、8試合ほど実践を積んだが、「チーム作りが遅れていましたし、宮川も離脱しておりいい試合はできていなかった」と野々垣正史監督は振り返っており、苦い経験を積んできた。それだけに公式戦で勝ちきれたのは良い経験となり、次も公式戦を戦えることが大きいことを野々垣監督は感じている。
また、「守備に不安あるのは想定していた中で最後まで宮川と小野のバッテリーをはじめ、チーム全体的に勝ち越されても粘り強く戦って勝ち越してくれました」と語ったように不安を抱えながらも諦めることなく食らいついて勝利を手繰り寄せることができたことも勝因に挙げた。
その立役者となった宮川は、「9回まで投げたことなかったですが、投げきれて良かったです」と試合後にコメントした。
一方、敗れた都立戸山は今日が新チーム初めての試合。ぶっつけ本番だったが、一時はリードするなど多くの経験を積めたはずだ。小泉重雄監督は「準備不足だったこともあって今日が初陣でチームカラーもわからずに戦いました。ただ試合の中で選手たちが吸収して上達できたのは良かったですし、良い経験を積むことができました。ただ中盤のチャンスをつぶすなど多くの課題を見つけたので、今後に活かしていきたいです」とコメントした。
2年生も旧チームでは途中出場が多く、1年生も実戦経験がほとんどない。経験値が少ない中で公式戦を終えた都立戸山のこれからの成長も楽しみだ。
(記事=田中 裕毅)