試合レポート

都立拝島vs都立戸山

2020.09.12

ケガから復帰したエース・宮川匠の初完投で都立拝島が接戦を制する!

都立拝島vs都立戸山 | 高校野球ドットコム
都立拝島・宮川匠

 12日から開幕した秋季東京都大会の1次予選。初日からあいにくの雨でいくつかの会場は中止となったが、お昼から[stadium]佼成学園グラウンド[/stadium]予定させていた都立拝島都立戸山は何とか開催された。

 初回、先攻の都立拝島は4番・小野太己のヒットなどで一死満塁としたところから、5番・清水海のライトへの犠牲フライで先制のホームを踏む。

 4番・小野は守備ではキャッチャーを務め、攻守の要という存在だが、バッティングから見ていくと、フォーム全体的に目立った癖はない基本に忠実な構えをしている。オープンスタンスから小さく足を上げてタイミングを測り下半身から動き出すが、スイングに入る際に少しバットが遅れて出てくるため、なかなか速球を引っ張り切れないところは修正していくところだろう。

 そして守備ではセカンド送球2.1秒前後を記録しており、捕ってからが速い。肩を強くしていければ2秒を切ることは可能なはず。何より低めの変化球をきっちりと止められており、投手も安心して投げられる。

 先制点に繋がる犠牲フライを放った5番・清水はあまり大きく右足を踏み込まずに上体は高いが、突っ込むことなく軸で鋭く回転することができている。上半身から始動する上半身主導ではあるが、顔をしっかりと残しているため変化球もしっかりと見極め出ている。

 2回にも1点を加えて2対0とした都立拝島の先発はエース・宮川匠。ノーワインドアップからゆっくりと捻りながら左足を上げて始動し、ショート方向に蹴りだして左半身で壁を作りながら重心移動。右腕のテイクバックは回しながらトップまで持っていく。

 スリークォーター気味の高さから脱力した状態で見られた右腕からはキレのあるストレートに緩急を利かせた大きく曲がるカーブ。さらに鋭く沈むスライダーと、秋の段階では完成度の高い投手。手足も長く投手らしい体格だがまだ線が細く、ピッチングでもインコースがまだ使えないなど改善できるところはまだたくさんある。そうした点を踏まえると今後の成長を期待してしまう右腕だ。

 その宮川は3回にエラーで2点を失うと、4回にはバッテリーエラーで失点を重ねて4対3。さらに5回には一死から都立戸山の3番・正村悠一郎への四球からピンチを招くと、5番・大倉颯太のタイムリーで4対4の同点で試合を折り返した。



都立拝島vs都立戸山 | 高校野球ドットコム
都立戸山・松﨑祐晃

 後半に入ると両チーム互いにミスが絡みながら点数を奪い合う目まぐるしい展開。その中でも都立戸山は2番手でマウンドに上がった背番号14・松﨑祐晃のテンポの良い投球をきっかけに流れを掴む。ノーワインドから身体を少しひねりながら足を上げて、小さな体を目一杯使ったフォームからキレのあるボールでアウトの山を築く。すると8回に、二死一、三塁から5番・大倉のライト前で7対8と都立戸山がリードを奪った。

 それでも9回、都立拝島は8番・大野晃の二塁打とバッテリーミスで同点のチャンスを作ると、9番・江森力輝斗の打席で振り逃げ。この間に同点のホームを踏むと、一死仁、三塁から相手バッテリーのミスやボークで勝ち越し。これが決勝点となって、都立拝島が何とか都立戸山を破って、代表決定戦の切符を掴んだ。

 勝利した都立拝島は2年生4名、1年生7名の計11名でチームは再始動。加えてチームの主力となるエース・宮川は怪我の影響で離脱。7、8試合ほど実践を積んだが、「チーム作りが遅れていましたし、宮川も離脱しておりいい試合はできていなかった」と野々垣正史監督は振り返っており、苦い経験を積んできた。それだけに公式戦で勝ちきれたのは良い経験となり、次も公式戦を戦えることが大きいことを野々垣監督は感じている。

 また、「守備に不安あるのは想定していた中で最後まで宮川と小野のバッテリーをはじめ、チーム全体的に勝ち越されても粘り強く戦って勝ち越してくれました」と語ったように不安を抱えながらも諦めることなく食らいついて勝利を手繰り寄せることができたことも勝因に挙げた。

 その立役者となった宮川は、「9回まで投げたことなかったですが、投げきれて良かったです」と試合後にコメントした。

 一方、敗れた都立戸山は今日が新チーム初めての試合。ぶっつけ本番だったが、一時はリードするなど多くの経験を積めたはずだ。小泉重雄監督は「準備不足だったこともあって今日が初陣でチームカラーもわからずに戦いました。ただ試合の中で選手たちが吸収して上達できたのは良かったですし、良い経験を積むことができました。ただ中盤のチャンスをつぶすなど多くの課題を見つけたので、今後に活かしていきたいです」とコメントした。

 2年生も旧チームでは途中出場が多く、1年生も実戦経験がほとんどない。経験値が少ない中で公式戦を終えた都立戸山のこれからの成長も楽しみだ。

(記事=田中 裕毅)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!