Interview

オリックス・バファローズ 西 勇輝投手 「『ミスターコントロール』の細やかな気配り」

2015.02.12

 2015年、チームの絶対的エースである金子千尋が戦線離脱のオリックスにあって投手陣を引っ張っているのが西 勇輝だ。
昨シーズンは3・4月の月間MVPを受賞、ファン投票でのオールスター選出、キャリアハイの12勝をマークし、最後は日米野球初となるノーヒットノーラン継投の一員ともなった。

 今シーズンも4回登板して3回がクオリティスタートをクリア。安定の投球を披露している。
そのハイパフォーマンスの秘密が完成されたフォームから繰り出す抜群の制球力だ。今回はそのフォームの秘訣と、意外に知られていない「細やかな気配り」も含め、探ってみた。

安定した制球のポイントは「頭がぶれない」こと

西 勇輝 投手(オリックス・バファローズ)

――完成度の高いフォームで定評のある西投手ですが、このフォームはいつごろ、どのようにして完成されたのですか?

西 勇輝選手(以下、「西」) 高校くらいに、勝手にできあがった感じです。

――自分の中で、理想的な投球の軌道などはありますか?

西 自分の思い描いたところに、ボールが投げられることが理想だと思いますね。

――コース的にはどこに?

西 両サイドの低めです。自分のよさはコントロールだと思っているので、両サイドにしっかり投げられれば大丈夫だと思っています。

――制球力に悩んでいる高校球児も多いと思いますが、それはどこに原因があると思いますか?

西 頭がぶれたらボールがぶれてきます。言えるとしたら「頭のブレないフォームを作る」ことが大事だと思います。各自のフォームがあるので難しい部分はありますが、僕自身は頭のブレないフォームなので。

――では、試合によって風や環境が異なる中、対応する方法はありますか?たとえばスパイクはどうでしょう?

西 簡単に言えば金具に土を付けないことなど。1つ1つ考えながらやっていますね。

――マウンドの硬い、柔らかいによってスパイクを変えたりすることは?

西 それはないです。両方に対応できる刃の付け方をしています。

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[page_break:気を遣ったグラブの「使い方」]

気を遣ったグラブの「使い方」

――グラブについてはどうでしょうか?投手のグラブは投げる時の「力を出す道具」、投げた後の「守るための道具」。そしてもう1つ球種を見せない「隠すための道具」の要素もあると思います。西投手のグラブはその要素も含め、どこに気を遣われていますか?

西 勇輝 投手(オリックス・バファローズ)

西 そうですね。僕はどちらかというと硬いグローブが好きです。投げるときにグローブは重たいとバランスが変わってくるので、僕はなるべく軽めのグローブを作ってもらって。かつ芯が崩れないようにしてもらえれば長く使えるので、そこの大事さは感じています。

――投球時に「グラブを使う」意識はどうですか?遠心力とか…

西 僕は遠心力ではないんですが。キャッチャーに示しに行く感じです。その時にグローブが重いと疲れてくるので、軽くしてもらっているんです。

――軽くしたのはいつくらいですか?

西 プロ2年目からです。1年目はもっとグローブが小さくて芯があったんですけど、ワインドアップの時に手首が見えて球種が判ることに気付いたので、大きめに変えました。

――なるほど。その効果は間違いなくあった?

西 相手打者から球種が判らなくなったので、ありましたね。いいと思います。

――守備の部分での投手のグラブの使い方はどうですか?

西 僕自身、ピッチャーゴロやライナーの処理には自信を持っていますし、とっさに開く、常に開けるようなグローブが好きなので、形もそのようにしています。

――でも、実際はピッチャーライナーのさばき方は非常に難しいと思うんですよ。

西 そうなんです。「ボールが来たら出す」くらいのタイミングなので、そこは自分の感覚を信じて捕っていますね。守備のために投球フォームを作ったわけではないですが、僕は頭のブレないフォームにできたことで、ピッチャーライナーも捕りやすくなったと思っています。

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[page_break:昨年の悔しさを忘れず「熱いシーズン」に]

昨年の悔しさを忘れず「熱いシーズン」に

西 勇輝 投手(オリックス・バファローズ)

――悔しい思いをした昨シーズンを経て迎えた2015シーズン。個人としてどのように形を残してチームをどの位置に到達させたいですか?

西 「到達させたい」という想いはないですが……。とにかく「熱いシーズン」にしたいです。(昨シーズン)誰もが、オリックス全員が悔しい思いをしたのは絶対にありますし、「反骨」じゃないですが、その気持ちを忘れずに闘いぬけば、自ずと「優勝」という二文字が確実に近づくと思うので。そのためにも自分が一年間、けがをせず頑張って、なおかつ去年(12勝10敗)くらいの数字を残して、優勝してビールかけしたいですね。とにかく優勝したい気持ちが強いので。

――練習を見ても投内連係・バント処理から緊張感が伝わってきます。

西 それは今年、「1個1個のプレーから集中していく」ことを決めたから。軽率にならないように、確認しながらやっています。

――その先にあるものが「優勝」

西 そうですね。長い時間優勝していないし、ファンのみなさんも待っていると思うので……。

――その願いが達成できるよう、今シーズンの活躍を期待しています。ありがとうございました。

西 ありがとうございました!

 球種を判らせないための大きさへの気遣い、示し方による捕手への気遣い、疲労を少しでも軽減するための重さへの気遣い。グラブだけでも投手はこれだけ気を遣っていることに驚かれたかもしれない。でも、これがNPBの世界。これらの気遣いをこなせないと、西投手のように安定した成績は残せない。ボールだけでなく「心・技・体」のコントロールあっての「西 勇輝」。7年目・24歳の今シーズンも右腕は、チームの悲願達成へ向かって走り続ける。

(インタビュー・寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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