試合レポート

【練習試合】今年を締めくくる練習試合、都立総合工科と都立足立新田は1勝1敗

2023.11.26


<交流試合:都立総合工科8-4都立足立新田、都立足立新田4-3都立総合工科>◇25日◇都立総合工科グラウンド

高校野球の規定では、11月をもって翌年の3月1週目までは、対外試合は禁止ということになっている。ということで、実質はこの週末が年内最後の対外試合というところがほとんどであろう。この時期の練習試合は、各校それぞれのテーマもあることだろうし、結果だけで一概にモノを言うことはできないということも確かである。ただ、今年の場合で言うと、来春からは低反発バット使用ということになっていくことで、野球そのものが少し変わっていくのではないかという意見もある。
当然のことながら、現場としてもその対応はしているはずである。学校によっては、秋季大会で敗退した時点で、低反発バットを使用しての練習に切り替えたというところもあったようだ。ただ、多くの公立校の場合は、そう簡単に切り替えることにはならない、というのが現実のようだ。各都道府県連盟から、各校へ2本ずつは提供されるということではあるが、もちろんそれだけで充足されるということにはならない。そんなこともあって、この秋は新バットに対する対応を含めての試行錯誤で、来春を目指していくということになっていたようだ。
そんな中で、都心にしては比較的グラウンドに恵まれている都立総合工科としては、このところは恒例となっている都立足立新田を迎えての試合となっている。都立足立新田を率いる有馬信夫監督は、1999年夏には都立城東を率いて、東東京大会を制して甲子園初出場を果たしている。その後、都立保谷から都立総合工科へと異動している。つまり、現在の都立総合工科の弘松恒夫監督の前任として指揮していたということでもある。そんな縁もあって、有馬監督が都立足立新田へ異動後は、定番のようにこの時期に年内最後の練習試合として組み込まれている。そして、お互いに、気が付いたことをそれぞれに話し合うなどしながら、相互の向上を目指している。
来季からはバットが替わるということで、ほとんどのチームで低反発バットを使用しての試合となっている。連盟からテスト的に各校へ2本が支給されているということだが、旧来のものに比べて価格は1.5~2倍近くする。またまた、それぞれに経済的な負担も増えるということになっていく。

都立足立新田の場合は、有馬監督が「ウチは、秋に早く負けているから、その後からは低反発を使っているし、何本か購入しましたよ。確かに、力のない選手は飛ばないね。ただ、理論上はバントは決まりやすいということになっているんだけれども、ウチは下手だからねえ…。変わんねえよ。ただ、外野も従来よりは前で守ることになるし、より守りが重視されていくことは間違いない。それでも、上位の方の選手が芯で捉えたら、やはり飛ぶとは思いますよ。まあ、ウチにはそんなヤツいないから、打てねえよ。だから、試合は早くなるよ」と語っていたが、その通りに1試合目1時間45分、2試合目は1時間31分というスピーディーなものになった。「打てねえんだからしょうがねえよ」と、有馬監督も言っていたが、投手が何人も代わっているにもかかわらず、この試合時間というのは、やはり今までならば、安打になっていたであろう打球が、単なる飛球になっていたり、野手の間を抜けていた打球が、抜けないで捕られたりということはあったように思う。
要は、芯が小さくなっているので、それだけしっかりと捉えるミート力が求められるということになるのだろうけれども、芯で捉えられた打球は、やはりよく飛んでいく。外野が浅く守っていくケースが多くなる分だけ、ランニング本塁打は増えていくということも考えられる。実際、この日も都立総合工科で最もセンスのあるシュアな打撃をするという佐藤 鵬仁が、1試合目の3回に2死満塁で放った芯で捉えた打球が、中堅手の頭上を越えていくと、そのまま一番深いところへ転がっていって、俊足でもある佐藤はダイヤモンドを1周し、ランニング満塁本塁打とした。そして、試合展開としても、これで都立総合工科が大いに有利に試合を進めていくことになった。
2試合目でも、8回に都立足立新田の途中出場で身体能力の高いプレムが、低い打球で中堅手頭上を襲うと、中堅手が浅く守っていたということもあって、打球は転々と転がり、打ったプレムは本塁までかえってきた。この試合では、この一打で都立足立新田が勢いづいて以降、四死球と4番の石山の二塁打などで、一挙に4点を奪って逆転した。
都立総合工科の弘松恒夫監督は、「この前、各メーカーの方が来てくれて、新バットの試し打ちをさせてもらいました。選手個々にも、それぞれの好みがありますから、難しいんですけれども、一応、何本か発注しました。確かに野球そのものは変わっていくと思います。あまり力のないウチのような公立の場合は、高校野球の原点に返ったような形の試合をしていかないといけないのではないかなという気もしています」と、新バットに対しての考えと対策を語っていた。そして、「都立校の場合、ウチなんかよりも、もっと力のない学校も多くあるわけですから…。特に来年最初のブロック予選なんかでは、貧打戦と言っては何ですけれども、打てない試合が多くなってくるのではないですか。ということは、それだけ、しっかりと守れるということが求められていくと思います」と、1次予選の会場校としての見解も語ってくれた。

有馬監督は、2試合目は何とか勝ったにもかかわらず、「勝てねえなあ…。ここんとこ、全然勝ってねえんじゃないかなあ」と、やはり現状のベストメンバーで戦っていった1試合目で勝てないことには、不満のようだった。そして、この時期は、結果が出ないことで、一時的には選手たちを突き離してもいるということで、そこから一冬越えての、選手たちの精神的な成長に期待している様子だった。

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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