来春導入の新基準バットが高校野球を変える!? 現場からは「飛びにくい」「音にだまされる」「筋力=飛距離の時代ではなくなった」など様々な声
2024年から高校野球界に新基準のバットが導入される。いち早く慣れておくために、公式戦でも使用されるケースが増えてきたが、このルール変更は来年の高校野球を変えるかもしれない。
新基準バットそのものの重さは900グラム前後で、現在と変わらない。ただ従来のバットと比較して最大で3ミリほど細くなる一方、打球面は1ミリほど肉厚になる。こうした工夫を施すことで、トランポリン効果という反発力を抑えて、飛びにくいバットにしているのだ。木製バットにより近くなったと言えるだろう。
目的は打高投低の現状を変えることで、投手の消耗を避けることなどが挙げられている。
先日開催された明治神宮大会では北海がこの新基準バットを使用していたが、対戦した作新学院の主将・小森一誠外野手(2年)は打球の違いを実感していた。
「守っていても、ボールが飛びにくい感じがしました。以前のバットの感覚だと、『ここまで飛ぶかな』という予測よりも、さらに前で失速する感じです」
11月4・5日に埼玉県で開催された4地区選抜交流試合でも新基準バットが使われた。参加した指導者からはこんな声が挙がった。
「外野が音に騙されるので、慣れるまで時間がかかるかもしれません」(春日部共栄・本多監督)
「低反発の影響は多分にあると思う」(中野監督)
「今後、対応に苦労しそうです。外野の頭を越える打球がほとんどなかった。外野の守備位置も前になっている中でのこの結果です」(鈴木監督)
また、選手たちは早くも練習時から木製バットを使用するなどの工夫を始めているという。
「いろいろ試している段階です。もしかしたら木製バットのほうが合っているんじゃないかって、今は練習試合は全部、木でやっています」(月山)
「今日も『ホームランか』と思っても伸びずに捕られた打球があった。今は練習で木を使っています」(河井大悟・川越東)
「飛ばないし打球速度も出ない。チームではみんな木で打っている」(中村)
この大会で北部選抜を率いた本庄東・田中監督が今後の対策について語ってくれた。
「以前の金属とは打球の角度や飛距離が違う。外野手の打球判断を誤る場面も見受けられます。より確実に当てないといけません。ほとんどの選手がミスショットになっていました。ただ、うちの選手でも1 人だけ華奢なのに前のバットより飛距離が出る子がいます。その子は元々練習の時から木を使っていた。芯に当たれば前より飛ぶ子もいるので技術次第ではないでしょうか。今後は芯に当たる確率を上げる練習をしていきます。例えばライナー性の打球を求めるとか。飛ばなくなったから、より筋トレをするというのは違う。今までは誤魔化せていたが、筋力=飛距離ではなくなったということ。あとは投手を育てて内野を守れるようにしたい。バットの変更は指導者に色々なテーマを与えてくれる」(田中監督)
バットの変化=打者の問題にとどまらない。打球が変化すれば守備、走塁にも大きな影響を及ぼす。各校がこの冬の間にどのような対策をとるのか?そして高校野球はどう変わるのか? 来春のセンバツで注目したい。