【愛知】準決勝 誠信 vs 愛知黎明
武政楓生(誠信)
誠信の1年生左腕が好投、1失点で愛知黎明を抑え決勝進出
<第136回愛知県全尾張大会:誠信6ー1愛知黎明>◇29日◇準決勝◇阿久比スポーツ村
尾張地区の強豪私学同士の対決となった、全尾張大会準決勝。尾張地区の中では、近年の実績としては、誉が頭1つリードしているという感じで、それを愛知啓成が追っているという構図になっている。この両校は、その2校を追いかけているという存在といっていいであろう。
誠信は前日の1回戦では、知多地区の進学校・半田と乱戦を戦い、何とか振り切ったという形で勝ち上がってきた。その前日は体育祭でもあり、選手たちもいくらか疲労が残っていたことも確かであろう。そんなこともあって、エースとして期待されている吉浦 楓馬投手(2年)も不調だったようだ。ということで、澤田英二監督は、この日は背番号10の1年生左腕・武政 楓生投手に託した。
その武政投手は、初回、立ち上がりにいきなり左前安打とバント安打で無死一、二塁というピンチとなった。それでも、そこをバント失敗と併殺などで凌ぐと、2回以降はすっかり自分の投球をして、終わってみたら9回で9安打こそ浴びたものの、1失点で逃げ切って完投した。「5回まで、持ってくれたらいいかなと思っていた」という澤田監督の期待を、いい意味で裏切ったとも言えようか。
誠信の攻撃は初回、先頭の竹中 海輝内野手(2年)が四球で出ると、バントで進め3番・鈴木 陸臣捕手(2年)が中前安打でつないで一、三塁とすると、4番・佐藤 光駿外野手(2年)の中犠飛で先制。さらに、2回には土屋 未来斗外野手(2年)が左越えソロを放って突き放す。これはマウンドの武政投手にとっても勇気を貰えるものとなった。
愛知黎明は5回に2死三塁から2番・丹下 侑也内野手(2年)の中前打で1点を返して食い下がる。しかし、誠信は6回にも死球の走者を置いて3番・鈴木の右中間三塁打で追加点。さらに代わった玉寄 斗和投手(1年)から佐藤がスクイズも決めて3点差とする。そして、8回にも誠信は中軸の連打などでさらに2点。愛知黎明の金城孝夫監督は、3人目として馬場 悠投手(1年)を送り出して何とか凌いだが、下位から始まる9回で5点差は苦しかった。
結局、9回も武政投手は自分の投球を崩すことなく、3人で抑えて完投した。必ずしも球威があるとか、スピードがあるというものではないけれども、1四球のみというこの日の記録からもわかるように、コントロールがあり、制球で崩れていくことがなかったというのも、大きな要因であろう。澤田監督は、「これは、本人にとっても自信になっていくのではないでしょうか。来春へ向けても、大いに希望の持てる好投だったと思っています」と評価していた。
誠信は現在、1年生19人、2年生16人という陣容だが、この大会で好結果を出すということも、地元の中学生球児たちへ向けては、いいアピールになっていったのではないだろうか。このまま武政投手が成長していけば、来春以降には、吉浦投手との2本柱ということにもなっていくであろう。そうなると、誠信も一目置かれる存在になっていくのではないだろうか。
取材・文=手束仁