試合レポート

目黒日大vs駿台学園

2023.07.11


緊迫の投手戦、目黒日大がラッキーエイトに貴重な1点をもぎ取り駿台学園に完封勝ち

<第105回全国高校野球選手権東東京大会:目黒日大1ー0駿台学園>◇11日◇2回戦◇駒澤

 東東京の勢力構図でいえば、ここ10年ほどは二松学舎大附関東一が抜けた存在で、このどちらかが交互に甲子園出場を果たしており、それを今春に都大会で優勝を果たした帝京修徳が続くという構図だ。しかし、その次のグループとしては、いわゆる中堅私学と言われるところが競り合っている。この試合の両校も、そんなグループに入るチーム同士と言っていいであろうか。

 駿台学園は男子バレーボール部は全国制覇も果たした実績がある全国的な強豪として知られている。野球部も、それに続けという意識だろう。また、系列中学も全国的な強豪で関係者の間では、注目度は高い存在だ。ただ、中学からそのまま高校に入ってくるかと言うと、必ずしもそうではないというが正直なところだ。実は、今春のセンバツ優勝の山梨学院の投手も駿台中学出身である。三角裕監督は、「とりあえずは、ウチへ来てくれた選手たちでチームを作っていく」という方針にならざるを得ないところだという。

 目黒日大は、明治時代に裁縫女学校として創設されたのが前身でその後、日出高等女学校から学制改革後は日出女子学園となった。日出女子学園時代には山口百恵や原田知世らの芸能人も多く輩出していたことでも知られている。やがて、共学化となり日大の準付属校として提携し2019年に系列中学も含めて現校名となっている。近年は、野球部も強化されてきている。今春は都大会では日大桜丘都立城東を下して東海大菅生には敗れたものの3回戦に進出している。今年は創立120周年を迎え、飛躍を目指している。

 駿台学園はダイナミックに足を上げて「ウォッ!」と気合の叫び声を上げながら力強く投げ込んでくる大日方 幸平投手(3年)、目黒日大は一見打てそうだが、巧みに引っ掛けさせていく投球の上手い背番号10の井上 雄太投手(3年)が先発。ややタイプの異なる両投手の投げ合いは、早いテンポで進んでいった。

 5回を終わって、駿台学園は3安打。目黒日大も2安打。お互いに、なかなか突破口が開けないという状況だった。こういうロースコアの展開になれば、どちらが均衡を破れるのかというところがポイントとなっていくだろうと思われた。

 こうして、お互いに得点の糸口のないまま試合は8回を迎えて、延長タイブレークも脳裏をかすめ始める。

 そんな矢先、駿台学園は先頭の8番・渡部 素直捕手(2年)が中前打で出る。初回と5回に続いての無死の走者となった。バントで二塁へ進んだが、上位に回ったところで連続飛球となってしまい得点には至らなかった。

 そしてその裏、目黒日大は1死から8番の井上が中前打。「甘いところへ来たので思い切って打った」という一打だった。バントで進み2死二塁となったところで、1番・粂田 紘輝内野手(3年)。「ここまでいいところなかったので、初球から思い切っていこうと思っていた」という気持ちで打席に入って、初球をたたくと打球は右中間を破っていく三塁打となった。二塁走者がかえって、貴重な1点が入った。

 そして、9回も井上はこれまでと変わらないように巧みな投球で三者凡退に抑えた。井上は、「打たせて取るというのが自分の持ち味だと思っているので、今日は、それが十分発揮することができた。完封できるんじゃないかと思っていた」と、強気なところも見せていた。

 木川卓見監督は、そんな選手たちを頼もしそうに見つめていた。「相手の投手がとてもいい投手だったので、ロースコアの終盤勝負の試合になるなとは思っていました。当初は、継投のつもりだったんですが、こういう展開でもありましたし、先に取られたら危ないなと思っていましたから、そのまま行かせました。手元で微妙に曲がっていくところが特徴でしょうか」と、4安打完封の井上を評価していた。そして、「これまでは(ベスト)32が最高なので、何とかそれ以上の成績を残したい」という思いを語っていた。

 目黒日大は、実は春季都大会でも2回戦で都立城東に2点リードされながら、8回裏に長打で3点を奪って逆転している。ラッキーエイトが定着していきそうな勢いだ。

 駿台学園としては、大日方の好投に打線が報いきれなかった。27アウトのうち、19が飛球アウトだったのは、打線にやや工夫がなかったか。まさに、井上の術中にハマってしまったのは、三角監督としても悔いは残ったところであろうか。

この記事の執筆者: 田中 裕毅

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.22

【九州】神村学園、明豊のセンバツ組が勝利、佐賀北は春日に競り勝つ<春季地区大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!