Interview

ドラ1候補に挙がる152キロ左腕・東松快征投手(享栄)はいかにして自己最速を更新したのか?目指すはドラ1と甲子園出場 vol.3

2023.01.07

 2023年の高校生左腕を代表する左腕、享栄(愛知)の東松 快征投手(2年)。最速152キロの速球と、多彩な変化球で勝負するパワーピッチャーだ。その成長の歩みを紹介する第2回は、秋の大会の敗戦からどう成長したのかを振り返ってもらった。

自信がなかったスローイング

 ドラ1候補に挙がる152キロ左腕・東松快征投手(享栄)はいかにして自己最速を更新したのか?目指すはドラ1と甲子園出場 vol.3 | 高校野球ドットコム
東松 快征投手(享栄)

 夏の屈辱を晴らすためにスタートした秋だったが、愛知大会準決勝で肩を痛めた影響で、出遅れた。8月に行われた地区予選では2イニングのみの登板。県大会に標準をあわせて調整を行い、県大会期間では「万全になりました」と振り返る。

 東松、享栄ナイン、スタッフともにセンバツを狙った秋季大会だったが、県大会3回戦で東邦と対決し、2対4で敗れた。東松にとっても痛恨の敗戦となった。東松は敗戦した試合をこう振り返る。

「ストレート自体の質は良くなってきましたが、変化球の精度が悪くて、ピンチになるにつれて冷静さがなくなって、コースが甘めになって打たれるケースが多かったので、そこが課題というか、まだまだです」

 大会後、東松は1球1球を丁寧に全力で投げることを意識したという。

 そして152キロに達したのは練習試合。智辯和歌山(和歌山)戦で記録したものだった。当時をこう振り返る。

「ウエートトレーニングでギックリ腰になって、復帰戦で土日に試合だったのですが、土曜日が智辯学園(奈良)とやらせていただいて、日曜は智辯和歌山ということで、ショートイニングを投げることになりました。

 その日はキャッチボールから調子が良くて、最後の8、9回の2イニングを投げましたが、そこで152キロが出ました。

 夏の悔しさで大会が終わってから頑張っていたので、そこで結果が出てよかったです。

 三振は2イニングでつ奪うことができました」

 スピードだけではなく、内容面でも手応えを感じていた。スピードアップの背景には肉体改造が背景にある。もともと行っていたウエートトレーニングに加え、食トレにも変化を加えた。

[page_break:甲子園に出場して前田(大阪桐蔭)と投げ合いたい]

甲子園に出場して前田(大阪桐蔭)と投げ合いたい

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東松 快征投手(享栄)

「元々食べるのが好きで、増やそうというよりは、ピッチングが良くなるのであればなんでもやるので、体重が増えて球速が上がるという話を聞いていたので、本気で食事に取り組みました。食事で工夫したこととしては、朝昼晩でバランスのいい食事と、夜はお米、お肉、野菜もいっぱい食べてます」

 結果として夏から8キロ増量に成功し、91キロに。まるでプロレスラーのような体型となっていた。睡眠もなるべく8時間睡眠を考えているが、東松は自宅通い。野球部は練習が終わったあと、45分かけてバスで移動し、そこから東松は1時間かけて自宅に戻るので、結局2時間かかるため、毎日の8時間睡眠はできないようだ。

 それでも通うのは、「ピッチャーは回復が大事だと思うので、寮もいいと思いましたが、通いだと自分の好きな時間に練習できたり、帰る間の時間で反省もできるので、このような時間を大事にしています。

 動画などを撮ってもらえるので、動画をみて振り返りをしています」

 東松が尊敬する同校OBの竹山 日向投手(ヤクルト)、中日の若きエース・髙橋 宏斗投手(中京大中京出身)と、愛知出身の好投手は自宅通いが多い。自分の好きな時間に、やるべきことができるところが成長のきっかけになるのだろう。この日も記者のスマホで撮影した動画をインタビュー中に見てもらい、フォームを振り返っていた。

 トレーニング内容にも変化を加え、股割りや四股踏みを行い、投手のトレーニングとして水泳も取り入れた。

「下半身の筋肉がついて、内転筋の使い方の感覚が良くなったので、それも一つの成長した練習かなと思います」と手応えを感じている。

 こうした積み重ねが152キロにつながったのだろう。取材日の投球練習でも受ける小笠原 陸斗捕手(2年)は東松の投球をこう表現する。

「球自体は悪くなかったです。毎日受けていると、球の抜け方、指のかかり方が毎日違うのが分かります。今日は100点中、80点ぐらいですね。

 どう見えるのかというと、石が飛んでくる。あれは車ですね。最初は怖かったですけど、だいぶ慣れてきました」

 短期間ながらピッチング面で大きく進化を見せているが、人間的にも大きく成長を見せている。秋の大会が終わってから味方がエラーしても、しっかりと声をかけたり、かける言葉を考えるようになった。今年は東松中心のチーム。ストイックに取り組んでいるからこそ、チームメートの思いも「東松を甲子園に行かせたい」となっている。

 主砲である高田 洸希外野手は「キャプテンとしても、ピッチャーとしてもチームを引っ張ってくれているので、自分たちも頑張らないといけない。頑張って打って勝たせたいですし、甲子園に連れていきたいです」と意気込む。リードする小笠原も「東松中心のチームです。東松は日本一の投手だと思っていますし、甲子園に連れていきたいです」と語る。

 東松は23年の意気込みとしてこう語った。

「主将としての大変さもありますが、自分で引っ張っていって、この仲間たちと日本一になりたいです」

 また、ドラ1でプロに入りたい思いもだんだん強くなっていると語った東松は、ライバルである大阪桐蔭(大阪)の前田 悠伍投手(2年)と甲子園で投げたい思いを口にする。

「この世代は良い投手が本当に多いと思います。その中でも1番を目指してやっているので、誰にも負けないということを意識して、最終的に大阪桐蔭の前田投手と甲子園で投げ合って勝ちたいです」

 世代No.1左腕に名前が挙がる前田に対して、対抗心を燃やした東松。それを口にできるほどの実力は持っているだろう。果たして最後の夏で甲子園に導く投球を見せることができるか注目だ。

あとがき 
東松の成長ストーリーはここまでだが、第3回はストレート、変化球、投球フォームを解説してもらったインタビューを紹介。やはりドラフト上位候補に挙がるのはただ素質だけではなく、かなり考えて練習しているのが分かり、感心をさせられた。

(取材:河嶋 宗一

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