高校時代はコールド負け、二度の指名漏れを味わいながらもヤクルトのローテション投手へ成長した吉村 貢司郎

 3人目はヤクルトの吉村 貢司郎投手(日大豊山)です。彼こそまさに遅咲きの投手だと思います。初めて見たのは高校3年春の東京都一次予選です。明星グラウンドで見た吉村投手は130キロ後半の速球を投げ込み、フォームのバランスもよく、楽しみな素材でした。しかし都大会に出場した吉村投手はいきなり強打の日野と対戦し、0対9とコールド負けを喫し、夏はノーシードとなりました。140キロは出ていても真ん中近辺に集まる事が多く、痛打を許してしまいました。この悔しさをバネに夏の初戦・立正大立正戦では、常時140キロ前半・最速144キロをマークし、大きくレベルアップしていました。

 延長10回の完投勝利を収め、この試合で勢いに乗った日大豊山は東東京大会の決勝戦に進出。決勝戦ではオコエ瑠偉外野手(巨人)擁する関東第一と対戦しましたが、打ち込まれて準優勝に終わります。


高校時代の吉村
 吉村投手は卒業後、国学院大に進学。大学4年春には3勝を記録しますが、右肩の故障で指名漏れ。ドラフト候補として大きく注目されるのは、東芝に進んでからです。2年目の21年には150キロ台の速球、カーブ、フォーク、スライダーを操る投手へ成長し、多くのスカウトから注目を浴びる存在へ成長しますが、二度目の指名漏れを味わいます。

 そして勝負の3年目では1年間通して、先発で活躍。実際に吉村投手の投球を見たのは、大学日本代表との練習試合でしたが、最速153キロをマークし、140キロを超えるスライダー、フォークの精度の高さも素晴らしいものがありました。3年目は公式戦6試合で防御率0.92の好投を見せ、ドラフト前にヤクルトが1位指名を公表し、無事にプロ入りが決定しました。

 1年目は4勝を挙げ、2年目は先発ローテーション入りを果たし、9勝を記録。3年目は25日の中日戦で5回2失点の好投で今シーズン初勝利を挙げました。

 高校時代から吉村投手は完成度の高いフォームから140キロ台の速球を投げる投手でしたが、打ち込まれることも多く、また故障で苦しむ時期もあり、プロのローテーションで活躍する姿は想像できませんでした。

 その間、大学、社会人、プロでライバルとの競争を勝ち抜くために投球フォーム、投球術と試行錯誤して、プロで活躍できるスキルを身につけました。

 現在の高校野球ではプロ顔負けの速球を投げるパワーピッチャーや、高校生とは思えないほど完成度の高い投手も出るようになりました。

 一方で、光るものがありながらも、故障や、フィジカル不足、制球面、コンビネーション不足で思うような結果を残せない投手も多くいます。今年、追いかけているドラフト候補の中にも惜しいと思う投手が何人かいます。

 それでも上記の3投手のように大学、社会人、プロの世界で結果を残して遅咲きできる可能性は大いにあると願って、見守っていきたいと思います。