中学硬式野球の最高峰の大会とも位置付けられるジャイアンツカップに出場するなど、過去に全国大会への出場実績が豊富な神戸甲南ボーイズ。過去には甲子園優勝経験を持つ強豪校へ進んだり、プロ野球選手になる選手もいるなど、将来性のある逸材を送り出している。
10年以上チームを率いている清水勝仁監督は、その当時について「選手たちに厳しく指導をしてしまった」ということで、現在は選手たちの将来のためにも、厳しく指導することを抑えているという。
「新型コロナウイルスもきっかけの1つになっていますが、やっぱりうちに来てくれる選手は野球が好きです。ただどうしても能力に差があるので、出来ない選手に出来ないことを求めるのは大人たちのエゴだと思いますし、選手にとってはプレッシャーになると思います。
ですので、いま出来なくても、今後出来るようにならないといけない、ということで伝え続けるようにして、最終的に高校野球でレギュラーになってくれるような選手に育ってくれたらと思って指導しています」
あくまで中学野球で結果を出すことに執着するのではなく、高校野球最後の大会でグラウンドに立って活躍できるように。そして最後には「いい野球人生だった」で現役生活を終えてもらえるように、今ではなくその先を考えて清水監督は選手たちを育てる方針で、現在は指揮を執っている。
では、清水監督は具体的にどんな指導を普段しているのか。
「成長期の中学生は体型、筋力で大きな差が生まれる年代だと思います。しかし高校野球へ進めば、その差は縮まってくると思っていますので、体が仕上がって勝負する時に、しっかりと動かせてほしいというのは意識して指導をしています」
体づくりというよりも体を操ること。ここにフォーカスして神戸甲南ボーイズはトレーニングを積んでいる。特に股関節や肩甲骨といったインナーマッスルに焦点を置いて練習をすることで、「しっかりコントロールできるようになればいいと思っています」と清水監督は考えている。
一方で技術面に関しては、「のびのびさせてあげたいというのが、チーム方針ではあります」と清水監督は語る。
「私をはじめ、コーチたちも野球経験者なので思うことはありますが、あまりこだわっていません。今は情報社会ですので、選手たち自ら勉強できる時代です。なので、選手が考えて挑戦する環境を作ってあげる代わりに、間違った方向に進みそうになった時に指導するのが一番かなと思っております。
そうした習慣がプレーの中での予測に繋がるはずですし、高校野球に進んだ時に考える力が役立つはずなので、いろんなことに挑戦してほしいと思っています」
そんな今年の神戸甲南ボーイズだが、「打ち取った打球をしっかりとアウトにする守備力がまず大事です」ということで守備がポイント。主将である植村元翔捕手も、「守備から攻撃にリズムを作れるように、ノックや連携の確認を大切にしてきた」とオフシーズン中は守備に力を入れてきたという。
おかげで成長には手ごたえを感じているようで、「試合の中でも守備からのリズムで打線が繋がってきた」と試合の中でも神戸甲南ボーイズのペースで進められることが増えているようだ。
この成長について、清水監督は「内野であれば浅川(虎鉄)、外野であれば野藤(篤貴)の2人が引っ張っているので、この2人が要になると思います」と期待している。
春の大会が終わってから後輩への声掛けが増えるなど、「だいぶ変わってきた」と目に見えて行動が変わってきたからだということだが、最終学年としての自覚を試合の中でも見せることが出来るか。
バッティングに関しては「キャプテン(植村)には期待していますけど、細かいことは好きではないので、チャンスは勢いで振ってこい、と思っています」と選手たちの思い切りの良さを武器に戦うつもりだ。
集大成の夏までチームを作っていく神戸甲南ボーイズ。その過程であらゆる取り組みをする中の1つとして、4月中旬から開催されていたのじぎく大会以降、アシックスの新作スパイク・NEOCONNECT(ネオコネクト)を試すつもりだという。
阪神・近本光司外野手(社出身)が開発に携わったという一足。前足部分に金具歯4本、かかと部分に樹脂スタッド4本をそれぞれ配置したハイブリッドソールが特徴的なスパイク。
通常の金具歯スパイク以上に軽量感を追求しながらも、ダッシュやストップがしっかりできるように金具歯と樹脂スタッドの形を作成、配置。加えて樹脂スタッドのおかげで、地面からの衝撃を緩衝されているというこれまであまりなかったような魅力が詰まっている。
使っている選手たちは「履いていることを忘れてしまうほど軽い」といった声などが聞こえたが、清水監督も手に取った際は「私の現役時代に比べて軽いので、選手たちが羨ましいです」という率直な感想を話すも、続けて金具歯と樹脂スタッドが使われているハイブリッドソールに対して、こんな感想を語った。
「野球というスポーツの特性上、母指球当たりは力を入れられるようにしたいので、そこで金具歯とサブスタッドで地面を踏めるようになっている。自然とそういう形を作れそうな感じがしますので、ありがたいですし、魅力を感じました」
またかかと部分が樹脂スタッドになったことで、衝撃が緩衝されて足に優しいことについても「体が資本なので、ありがたいです」と清水監督は選手たちのコンディションに対して貢献してくれることも期待しているようだった。
こうした取り組みもチャレンジしながら、集大成の夏に向かっていく神戸甲南ボーイズ。ただあくまで清水監督たち指導者の思いは、高校野球最後の夏に活躍してもらうこと。そのなかで迎える夏だというのは、清水監督の今後の意気込みからも窺える。
「まずは臆せずやってほしいと思います。勝つために自分は何が出来るか考えてながらプレーしてほしいです。
そのうえで守備、1年生から言い続けていますが、とにかくキャッチボールがしっかり出来れば全然変わりますし、高校でも出来ないといくらホームランが打てる強打者でもレギュラーにはなれません。ですので、高校に行って『何を教わった』と聞かれたときに、自信を持ってキャッチボールを教わったと言えるくらい大事に練習してほしいです」
植村主将も「守備が課題なので、そこをしっかりと固めることが大切だと思います」と語っており、守備が課題だと共通認識を持っていた。そのために、まずは基本的なキャッチボールから徹底する。高校野球まで見据えた清水監督の指導のもと、神戸甲南ボーイズは引き続き土台を着々と作っていく。
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