近年、右肩上がりで加盟チーム数を増やしていることで、注目度を高めているポニーリーグ。リエントリー制度など先進的な取り組みを実践する特長を持ちつつ、未来の高校野球のスターも輩出している。

実際、名門・智弁和歌山で主将を務める山田 希翔内野手もポニーリーグ出身。他にも数多くの選手がセンバツの舞台で活躍を見せた。

そんなポニーリーグにおいて老舗の伝統チームとして中心にいるのが江東ライオンズである。2025年で創設50周年を迎えた伝統に加えて、OBではプロ野球選手も誕生している。全国大会でも優勝した経験があるなど、確かな実績を持つ強豪である。

勝利という目標があるから育成が出来る

とはいえ、選手たちはまだ中学生。野球人生で考えれば、これから楽しみな将来性豊かな年代。次のステージに向けた育成も大事であることを忘れてはいけない。その点について、2021年から6代目として監督に就任した田本剛さんは「難しいですね」と勝利と育成のバランスを成立させることに、監督就任当初は悩んだという。

「就任1年目は無我夢中で選手たちと戦っていました。ただ2年目に関メディ(ベースボール学院)に負けたことで、初めて勝つことの責任を強く感じて、3年目はバランスを保つ難しさがありました。それは今も変わりませんが、4年目の今年は1つ仮説が浮かび上がってきました」

がむしゃらに前へ進み続けたなかで田本監督が見つけた仮説、それは「優勝する、勝つという目標です」と勝利を目指すことだった。

「この目標がブレなければ、そこに対する育成は明確になると思っております。
江東ライオンズの場合は、大目標は全国制覇。そこに向けた小目標が目の前の試合に勝つこと。その先に中目標が関東大会優勝というように、目標がはっきりしていればやることはおのずと決まってきます。そうやって勝つからこそ見えてくる世界があって、やるべき育成がわかってくる。仮に負けたときに『負けから学んだ』という経験もできると思っています」

ゆえに、時折練習では「勝たないと意味がないぞ」と選手たちに声をかけ、「気合と根性でやるしかないぞ」という。もちろん田本監督の中では「現代に逆らっているのは正直わかっています」と理解はしている。それでも選手たちを育てるために、勝利という目標をブラすことはしない。

また江東ライオンズへの入団希望の選手には、必ず「うちは勝つためにやるから、練習も長くてきつい。返事や挨拶にも厳しいけど大丈夫か」と意思確認をする。それでも覚悟をもって入団をしてくれた仲間を、田本監督は勝利を目指す中で愛情をもって育てている。

今年のチームをまとめる主将・上野結正内野手も、そんな選手の1人。体験会に参加した際は「これまでとは全然違う。凄い環境だ」と江東ライオンズの野球に対する取り組み方に感銘を受けた。同時に田本監督の野球に対する熱い思い、そして選手のことを第一に考えた愛情ある指導に心惹かれて、入団を決意したそうだ。

上野のように覚悟もった選手、そして田本監督たち熱い指導者。この2つのバランスが成立するから、勝利と育成のバランスも保てているのだろう。

最弱世代から教えてもらった、本気で勝利を目指す意義

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