高卒2年目ながら今季は1軍キャンプでスタートを切った楽天・坂井陽翔投手(滝川二出身)。シーズン開幕1軍とはならなかったが、期待値の大きさを感じさせる若鷲は、中学時代は播磨ボーイズで過ごした。
加古川市、高砂市、播磨町、稲美町を中心に活動するチームで、指揮官・山口 哲治監督が「目的をもってやる」ことを大事に指導しながらチームを率いている。
「目的意識がなければ、トレーニングをしても力はつかないと思っています。ですので、最初はのびのびやらせる部分もありますが、打って、投げて、走ってという基本的な部分は最初の段階で話をします。
ただいろんな小学校から来ていますので、出来ない選手もいますので、その時は伝え方を変えながら教えて。それでわからなければ質問が出来るようにしています」
入団した段階でおさえておきたい基本を伝えて、目的意識を芽生えさせる山口監督だが、そのときに一緒に伝えているのは、何もプレーだけではないそうだ。
「どうしてもその瞬間の結果で一喜一憂をしてしまいますが、その実力を安定して発揮できるか。その時だけ良かったらいいわけではないので、ある程度理解をした結果、いいプレーがしっかりできるようにしたいと思っています。
またどのチームに行っても個人スポーツではないので挨拶はもちろん、連携プレーが出来る。指示の声を出せるなど、野球を知っている。わかっている選手でいてほしいと思っています」
そうやって選手たちがわからない、知らないことを怒るのではなくて、しっかりと基本・本質を理解させる。そのうえで普段の練習に対して、しっかりと目的を持って取り組んで経験を積んでいく。こうして山口監督は、出来る限り選手それぞれの持つセンスを磨きあげて、高校野球に送り出しているのだ。
ゆえにしっかりと練習を積むのはもちろんだが、ケガなどで離脱してしまうことが無いように、山口監督たちスタッフは、細心の注意を払っている。
「まずチーム内の風通しが悪いと、選手たちも痛いと言い出せずに我慢をしてしまうと思いますので気を付けています。そのうえで、相談が遅ければ逆に指導します。早めに教えてくれたら、その違和感が筋肉痛なのか病院に行かせたり、休ませたりなど話しながら対応出来るので、先に言ってもらうようにしています」
成長期の中学生は「体と心の変化が大きい」と山口監督は認識しているからこそ、会話をしながら選手たちのコンディションに気を遣っている。だからこそ、播磨ボーイズは4月中旬に開催されたのじぎく大会から、アシックスの新作スパイク・NEOCONNECT(ネオコネクト)を使用するつもりだという。
ネオコネクトはアシックスから新たに発売されることになった一足。前足部分に金具歯4本、かかと部分は樹脂スタッドを4本使うハイブリッドソールが採用されたスパイクとして注目されている。
特に樹脂スタッドを使っていることで地面からの突き上げが抑えられ、負担軽減が期待できる。と同時に、前足部分には金具歯が使われているのでダッシュはもちろん、ブレーキも十分サポートしてくれる。これまでにあまりなかったスパイクとなっている。
これには選手たちも「靴裏に樹脂スタッドがあるので、負担が軽減されている感覚がします」と地面からの衝撃が軽減されていることを実感しているようだった。
また「つま先部分が地面を押してくれるような感覚がして走りやすい」と金具歯による走りやすさを体感している選手もいた。
選手が使っている様子に「喜んでいる感じです」と山口監督は話すが、「この時期は下半身など土台をしっかり作らないといけないタイミングです」ということで、気を遣っているようだった。
そうした点で考えても、ネオコネクトは大事なアイテムになりそうだが、今年の播磨ボーイズは下級生たちも起用しながら戦っている。主将である甲斐康輝は「負けが続いていて、本当に勝てるのか分からないくらいだった」と最初は不安があったようだが、徐々に力をつけており、自信を深めている。
特に守備に関しては「練習を積んできたので力はついてきた」と語る。だからこそ、「打線が繋がってくれば、これからの大会でも結果を出せると思います」と今後の課題を明確に挙げた。
「最終的に全国大会に出場したい」と甲斐主将は意気込みを語る。山口監督も「我々はチャレンジャーなので、勝負になれば勝利にこだわりたい」と語りながらも、視線はもっと先を見据えている。
「夏の選手権といった1つの目標に向かって頑張りますが、まだそこがゴールではないです。ですので、失敗をしたから人生が終わるわけではないので、その失敗を含めて成長の場にしてもらえたらと思います。なので、どこまで食らいつけるのか、試せる場になると思っています」
プロ野球選手になった先輩・坂井投手のように、チームを巣立ってから成長して活躍出来るように。山口監督を中心に、播磨ボーイズはこれからも選手たちの今後を考えた育成をしながら、大会を戦うだろう。そんな播磨ボーイズからどんな選手が現れるか、楽しみにしたい。
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