リエントリー、1チームから複数チームを編成して大会出場するなど、野球界ではあまり見られない制度を積極的に採用するポニーリーグ。令和に合った選手ファーストの姿勢のもとで、年々人気が高まっている。

そんなポニーリーグのなかで強豪として数えられるのが江東ライオンズ。全国制覇を達成した実績はもちろん、NPB選手も輩出している育成力もある。2025年で創設50年を迎えた伝統は、たしかなものである。

思い描く真の選手主体性

取材当日、大会が迫っていたこともあり、実践的な練習が多く行われていた。ボールを追いかける選手たちの表情は真剣そのもの。グラウンド内は活気に満ちていた。

だがメニューが終わると、主力組はサブグラウンドへ移動。すると控えメンバーがグラウンドで主力組と同じ練習を始めた。しかも主力組以上に時間を使いながら、丁寧に練習を進めていた。大会前であれば、主力組が中心にグラウンドを使うものだが、「こうやって時間をかけても丁寧にやるから、毎年それなりにチームが作れていると思います」と指揮官・田本剛監督は語る。

たしかに体力、技術的に課題が多い下級生がグラウンドを長く使って上手くなれば、上級生の時にグラウンドがあまり使えなくても困ることはない。むしろ短いからこそ、集中して必要な練習をこなすことが出来る。ある意味では合理的なチーム運営だ。

そんな練習方法以上に、江東ライオンズを見て驚かされたのは選手たちの集中力。田本監督をはじめとしたスタッフが指示せずとも全員が集中して、最後まで練習を一生懸命やり切る。選手主体の練習形式だ。

選手主体というのは中学だけではなく、高校野球などあらゆるところで耳にする。近年のトレンドである。江東ライオンズも実践しているわけだが、田本監督は一言添える。

「うちは勝つこと、優勝することが目標なので、そのためにどうやって勝つか。こうすれば勝てるよ、ということをはっきり伝える。手段方法、そして知識までは指導者が伝えて、その先は選手たちの自主性に委ねることを選手主体だと思っています。なので、そこを伝えずに、すべて選手任せにすることは選手主体ではないと思いますし、育成ではないと思っています」

だから田本監督は「エンジョイベースボールとは反対、勝利至上主義ですよ」と改めてチームカラーを説明する。

「勝負で勝つために、知恵を絞って方法を考えて行動する。それが試合であれ、スタメンであれ、ベンチ入りであれ、理由は様々でも自分の可能性を考えて行動する。それは社会に出ても生きるところであり、野球の良いところなのに、勝利に執着せずにエンジョイベースボールを掲げるのは、もったいないと個人的には思っています」

勝利至上主義を持ったうえで、考えて練習に取り組む。この流れこそが田本監督の考える選手主体の形なのだ。

なので、ときには必要な厳しい指導を行う。その姿だけを見ると、「軍隊式のチームですね」と言われることがあるというが、「それくらい規律があると思われているので、誉め言葉だと受け止めるようにしている」とのことだ。

それほどまずは指導者が本気になって勝利のためアドバイスを送ってあげること。それが出来ているから、中学生でも選手主体となって練習が成立するのだろう。

野球へ真摯に向き合い、勝利と育成を成立させる

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