足立新田vs日大一
前半に得点を重ねた都立足立新田が、古豪日大一を振り切る
<第105回全国高校野球選手権東東京大会:都立足立新田8ー5日大一>◇9日◇1回戦◇江戸川区
東東京大会、序盤の注目カードの1つと言っていいであろう。古豪の日大一に対して、有馬信夫監督率いる都立足立新田がどんな戦いを挑むのか、興味深いところだった。
今春は、日大一は都大会の初戦で狛江にサヨナラ勝ちしたが、2回戦では國學院久我山にコールド負けしている。都立足立新田は、都大会初戦で早大学院に競り負けた。都立足立新田は、他の部活動も盛んで、男子バレーボール部は関東大会の常連となっている。また、相撲部は全国的にも強豪校で、今年のインターハイでは埼玉栄(埼玉)、鳥取城北(鳥取)といった大相撲へ力士を何人も輩出している学校を制して、全国優勝も狙える位置にいるという。もちろん、野球部もそんな強豪の部に刺激を受けている。だから、この夏は久々に暴れん坊ぶりを示していきたいところでもあろう。
都立足立新田は、初回いきなり相手失策で出た走者を送ると、これがバント内野安打となる。さらに丁寧に送って1死二、三塁から、4番のエースでもある黒崎 楓投手(3年)が先制の中犠飛。なおも、矢嶋 友翔内野手(3年)も右前適時打で続いてこの回2点。2回も2死走者なしから9番・岩本 大夢捕手(2年)が左越え二塁打を放つと、千野 裕真外野手(3年)が左前適時打でかえす。
3回にも黒崎の中前安打からチャンスを作って、7番・並里 妃敏内野手(3年)の左前適時打で2人をかえして5対0とリードを広げた。こうして、前半は都立足立新田が主導権を握っていく形で試合は進んでいった。
日大一は3回に犠飛で1点を返すものの、都立足立新田は直後の4回に3番・林の二塁打などで、さらに2点を追加していく。取られても、しっかり取り返していく形は勝負強さを感じさせてくれた。
日大一も4回に武田 翔捕手(2年)の二塁打と4回からリリーフのマウンドに立っていた背番号1小林 燎平投手(2年)が右前適時打を放って1点を返していくが、失点しても都立足立新田の黒崎は落ち着いていた。そして、そのままこのリードをキープしていく形で都立足立新田が8回に千野の適時打で貴重な1点を追加して逃げ切った。この1点は、ブルペンで次の回の準備をしていた黒崎も大いに喜んでいた。
日大一としては、8回と9回、追い上げていったけれども、最後は黒崎の気持ちの入った投球を崩しきれずに敗れた。
もっとも試合後、有馬監督は、「ウチは黒崎のチームだけれども、今日はよくなかった。もっとスピードも出るし、切れもいいはず。下位打線に対して、ストレートで押していけばいいのに小手先で交わしていこうとして、結局打たれてしまっているというところもよくなかった。下位に対しては力勝負で行って、それで打たれたんだったらしょうがねぇじゃないか。そういう気持ちになれねぇんだよな」と、打者に対しての攻め方に対しては不満があったようだ。
そのことに関しては、黒崎自身も十分に分かっていたようだ。「自分としても、今日の調子は良くなかったです。出来としては40点くらいかなと思います」と、厳しく自己評価をしていた。その要因としては、制球がよくなかったことと、指のかかりがもう一つよくなかったということである。それを次に向けて修正していきたいという思いは強い。そして、次は10割の投球をしたいと、思いを込めていた。
将来の志望に関しては、「どこかの大学でもやってみないかと声をかけて戴けたら、ボクは野球が好きなんでやっていきたいと思っています。だけど、その声がかからなかったら、高校ですっぱりと野球をやめるつもりでいます」という思いも、ハキハキと歯切れよく語ってくれた。球速も、今のところは135キロくらいまでは出せているという。そういう意味でも、今日はちょっと自分の中でもベストの調子とは言えなかったということであろうか。それでも、4番打者としては、初回の好機に犠飛で先制点をたたき出せたことも、能力の高さと言っていいであろう。