目黒日大vs都立田無
目黒日大 初のベンチ入りを掴んだ背番号11・井上が完投!
目黒日大先発・井上雄太
<秋季東京都高校野球大会1次予選:目黒日大9-4都立田無>◇4日◇1回戦◇片倉高校グラウンド
2019年に日本大の付属校となり、東東京で戦っている目黒日大は、年々結果を出して、存在感を増してきている。その新鋭が4回に一挙5得点を奪って主導権をつかみ、都立田無を下して都大会へ一歩前進した。その立役者は、公式戦初登板を果たした背番号11・井上 雄太投手(2年)だった。
指揮官・木川監督は「4点を目安に完投させるつもりだった」と限定的ながら、初戦を任せる気持ちでいた。井上は1週間ほど前から登板の可能性を示唆されて準備を重ね、試合前に先発を告げられた。
「楽にいこう」と気負うことなく、あくまで平常心でマウンドに上がると、直球と少し沈むカットボールでカウントを整え、最後はカーブやスライダーといった大きく変化する球種で都立田無打線を抑えた。
中盤以降、ランナーを背負う苦しい投球が続いても「点差があったので、楽に投げていました」と最後まで焦ることなく、淡々とアウトを積み重ね、初の公式戦を完投勝利で飾った。
この夏の東東京大会まで1度もベンチ入りしていない。1年以上、スタンドから仲間たちに声援を送ってきた。同じ投手たちが公式戦のマウンドで活躍する姿を見て「自分もあのマウンドに上がって投げたい」と静かに闘志を燃やしていた。
ベンチ入りをつかむために、課題の制球力克服に取り組んだ。自主練習ではネットスローや投げ込みを行い、フォームを固めてきた。最適な歩幅、リリースポイントをつかみつつ、時には球速と回転数を計測できる最新機器を活用。球速や回転数を測ることで、自分のなかでつかんだ感覚を確かなものにしてきた。
夏の練習試合で結果を残してベンチ入り。そして都大会に向けた大事な予選の初戦で先発のマウンドへ。高校野球界にきて初となる公式戦先発という緊迫の中で、4点を失いながらも9回完投を成し遂げた。次は西東京の実力校・都立片倉と対戦する。「次も先発で投げられるように調整したい」と2戦連続先発への気持ちは十分。次戦の登板が楽しみだ。
西東京で都立校として奮闘している都立田無は、2学年で15人しかいない。時間にも制限がある練習環境で、追い打ちをかけるように新型コロナウイルスの影響で全員は揃わなかったなか、秋への準備を進めて迎えた初戦だった。
主将・赤星 心路内野手(2年)は「勝って代表決定戦につなげよう」と勝利に向けて気持ちを高めていたが、「チャンスであと一本が出ませんでした」と中盤以降の攻撃を反省点に挙げた。
一時6点差を付けられる苦しい試合だったが、「全力疾走、全力プレー、気迫はずっと大事にしてきた」という普段の練習の成果もあり、中盤以降はあきらめずにチャンスを作り続けた。春の予選も15人で戦うことに変わりはない。それでも気持ちを前面に出し、都大会の切符を全員でつかむことを期待したい。
(記事=田中 裕毅)