<第67回鹿児島県選抜高校野球大会:鹿屋中央3-2鹿児島城西>◇28日◇準々決勝◇平和リース球場

  春の鹿児島大会準々決勝の再戦。この時は鹿屋中央が6-1で勝利したが、今回も左腕エース溝淵爽(3年)の投打に渡る活躍などで接戦を制した。

 初回、溝淵の右前2点適時打など集中打を浴びせて鹿屋中央が3点を幸先良く先取。その後も安打を重ね、毎回のように得点圏に走者を進めるも、4点目が遠い。

 一方の鹿児島城西も、春と同様に右打者の膝元に食い込む溝淵のスライダーを軸とする投球を攻略できず、序盤3回はパーフェクトに抑えられた。それでも4回裏に初安打が出て、3番・坂口虎太郎(3年)の中前適時打で1点を返す。再三、ピンチを招くも、中間悠莉(3年)、笹田雅孝(3年)、右腕2人を中心に粘り強く守り、追加点を与えない。

 守りで粘るチームには必ず終盤流れが来る。そのセオリー通り、8回裏、鹿児島城西は二死から代打・門松哲平(2年)が中越え二塁打でチャンスメイク。リリーフでマウンドに上がった9番・笹田が左越え二塁打を放ち、自らのバットで1点差に詰め寄った。

 9回裏は一死から3番・坂口、4番・川畑孝太郎主将(3年)、5番・富山晶詞(3年)、3連打で一死満塁とし、一打同点、逆転サヨナラの絶好機を作った。

 「味方が先制してくれたから、最後まで投げ抜くつもりで、腕を振ることだけを考えた」。

 絶体絶命のピンチを迎えて、マウンド上の溝淵は覚悟を決めていた。気を付けるべきは「落ち着いて、投げ急がないこと」(山本信也監督)。投げ急いで高めに浮いたボールをことごとく鹿児島城西打線に連打された。

 やるべきことは得意のスライダーを低めに丁寧に、加えて「ぶつけても良いから強気で投げる」。6番・大内田拓志(3年)を空振り三振。7番の1年生・織田悠楽にはボールを見極められ、フルカウントまで粘られたが、最後は注文通りのスライダーで三ゴロ。「あのカウントで、あのコースに投げられる度胸はさすが」と指揮官に言わしめた最高のボールでピンチを脱した。

 「どうしてもこの試合を勝って神村学園さんとしたかった」と山本監督。今季はまだ一度も対戦していないが一昨年夏の決勝、昨夏の準々決勝で対戦し、いずれも涙をのんだ相手である。昨夏のマウンドを経験している溝淵は「どこまで通用するか、分からないがやるべきことをやるだけ」と意欲を燃やしていた。