函館大vs環太平洋大
環太平洋大が投手戦を制し、準々決勝へ
西山雅貴(環太平洋大)
函館大と昨年のベスト4・環太平洋大学との一戦。地方大学の対決の見どころは高校時代に知る人ぞ知る実力者やドラフト候補とまではいかなくても、各学校のレギュラーとして活躍していた選手が数年たって、成長していることである。
序盤は緊迫した一戦。環太平洋大の先発は全国経験豊富な西山雅貴(3年・岡山理大附)。高校時代からだいぶ実戦力が増し、セットポジションから左足をゆったりと上げて、小さなテークバックから130キロ前半のストレート、120キロ前後のスライダー、110キロ前後のカーブを両サイドに投げ分ける。低めにしっかりと投げ分けができており、ピッチングに穴がなく、突出した球速がなくても勝負ができることを彼が証明してくれている。
中日の吉見 一起をイメージしているという西山。確かに130キロ台のストレートを野村監督も「西山はどんな球場でも、どんな場面でも最少失点のピッチングができる」と全幅の信頼を置く。
一方、函館大の先発は福岡 美輝 (4年・厚木北)。高校時代は神奈川県内では注目の速球派だったが、全国的には無名。ようやく踏んだ全国の舞台である。福岡は右オーバーから投げ込む直球は常時135キロ~141キロと球速表示は平均的だが、手元でぐっと伸びる球質が素晴らしい投手だ。テークバックがコンパクトで、指先でしっかりと力が伝わったリリースができるのが強み。スライダーの切れも悪くないが、ここぞという直球が光る。福岡は「ストレートの勢い、変化球の切れについては。今までの試合の中ではベスト3というぐらいの勢いでした」と語るようにそれぐらい強みがあった。厚木北から函館大に入学したとき、周りは強豪校の出身ばかり。そして同じ神奈川県出身の球児にはプロ志望届けを提出した横浜創学館出身の海老塚耕作がいた。自分が生き残るために、大事にしてきたのはストレートだった。福岡は言う。
「やはり自信があるのはストレートでした。そのストレートで勝負できるにはどうすればいいか考えてきた4年間でした。そして海老塚の存在が僕にとって大きかったです。海老塚に負けないよう取り組んできたし、ストレートも145キロまで伸びました。本当に大きい4年間だったといえます」
福岡 美輝(函館大)
だが、悔やむべきは失点がエラーがらみということ。2回裏、四球とボークで進塁を許して、1番岡田拓己(4年・岡山東商)の適時打で1点を失い、6回裏には環太平洋大は少ないチャンスを着実にものにしていき、5番仲村 来唯成(1年・筑紫台)の犠飛で2点目を取られた。福岡は「リーグ戦からテーマにしていた粘り強いピッチングができませんでした。点の取られ方が悪く、自分の取り組みに甘さがあったと思いますし、本当にくやしったです」と肩を落とした。
だが7回表、函館大も二死二塁から8番釜谷 泰葵(4年・駒大苫小牧)の適時打で1点を返したが、反撃はここまで。左腕・仲尾元貴(1年・生光学園)、右腕・大石将斗(1年・創成館)の投手リレーで環太平洋大が辛勝した。仲尾は135キロ前後の切れのある速球を投げる左腕、大石は130キロ後半の威力ある速球を投げ込む右腕で、ここ数年で、だいぶ投手の力量は底上げされたと実感できる。
敗れた函館大だが、阪内俊喜監督は「福岡はこの4年間で本当に成長してくれました。1年生の時と考えると、本当に良くなりました」と力投の福岡をたたえていた。
(文=河嶋 宗一)