交流戦シーズンを迎え、両リーグのプライドがぶつかり合う熱い戦いが繰り広げられているプロ野球。海の向こうでは、打者として大谷 翔平花巻東)・鈴木 誠也二松学舎大付)が、投手では山本 由伸都城)・千賀 滉大蒲郡)がリーグ屈指の成績を残しているメジャーリーグ。国内外で、大いに盛り上がりを見せている野球界で、球界のエースに躍り出るべく圧倒的な投球を見せているのが西武ライオンズの今井 達也投手(作新学院)である。

今シーズンは、ここまで11試合に先発し5勝2敗、防御率:1.30、奪三振:87(83イニング)、WHIP:0.81、QS:10試合という成績を残している。

 リーグの中で比較すると、勝利数(5勝)・防御率(1.30)がリーグ3位。奪三振数(87)・WHIP(0.81)・QS(10試合)がリーグ1位とリーグ屈指の成績を残しているのが一目でわかる。

 そんな今シーズンの今井投手の特筆すべきところは、“支配力”であろう。

注目したい指標は➀WHIP➁QS数➂奪三振数の3つである。
➀「1イニングあたりに許したランナーの数」を表す指標であるWHIPがリーグトップの0.81。この指標により、パリーグで1番出塁を許していない投手だとわかる。
➁「試合を作る力」を「① 6回以上投げる➁自責点3点以内に抑えること」を条件として測るQSがリーグトップの10試合。この指標により、試合を作る安定感の高さがトップクラスだとわかる。
➂「三振を奪った数」である奪三振数が、リーグトップの87個(83イニング)。この指標から相手打者を打席でねじ伏せる支配力がトップクラスであることがわかる。

 この3つの指標から、「出塁を許さず・試合を作り・相手をねじ伏せる」そんな“支配力抜群”な投球が今井投手の真骨頂であると言える。

【昨シーズンからの進化】

 昨シーズンにパリーグ奪三振王のタイトルに輝いた今井投手。圧倒的な昨シーズンから、今シーズンは現時点ながら更なる進化が見られる。特に変化がみられる指標は➀被BABIP(被打率)➁WHIPの2つである。

➀「三振・本塁打・四球を除いた、守備のある中での被打率」である被BABIPが、昨年.281→今年.168。より打球が安打になりにくくなっている。
➁WHIPが昨年1.17→今年0.81。昨シーズンよりも出塁許容度がさらに低下。より、ランナーを出さない投手へと変化。

 持ち前の奪三振数・率は維持したままで、「打球が安打になりにくい・ランナーが出ない」そんな安定感・支配力が磨かれたことで、別格な存在へと近づきつつある。

 そんなパフォーマンス向上の要因となっているのが、変化球の質の向上のなのではないかと考えられる。今井投手といえば脱力したフォームから繰り出されるMAX160キロのストレートと切れ味抜群のスライダーが代名詞であり、投球の軸である。昨シーズンはこの2球種が全体の投球割合の約85%を占めており、それは今シーズンも同様の数字である。変化しているのは、フォーク・チェンジアップ・カーブの3球種の被打率・空振り率である。昨シーズンはチェンジアップ・フォークの被打率が.210、カーブの被打率が.700であったが、今シーズンは現時点ですべて.000となっている。そしてチェンジアップ・フォークの空振り率も約2%向上している。

 軸となるストレート・スライダーに加えて、他の変化球の制度が向上したことが、被打率の低下や出塁許容度の低下など、安定感・支配力に繋がっているのだろう。これは配球・奪三振のバリエーションが増えるため、後半シーズンにも響いてくる武器になるだろう。

【メジャーへ飛び立った球界のエース“山本由伸”との比較】

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