シアトル・マリナーズ傘下の藤浪 晋太郎投手(大阪桐蔭)が、マイナー契約を解除され自由契約となってから約2週間。未だ去就に進展がない状態だ。
今年で渡米3年目の藤浪は、1月にマリナーズとマイナー契約を結んで昇格を狙っていた。しかし、春季キャンプではオープン戦8試合に登板し、防御率5.87と奮わずマイナーで開幕を迎えることとなった。所属先の3A・タコマでは21登板で2勝1敗、防御率5.79と苦しんだが、直近8試合連続無失点を記録するなど、状態を上げていただけに、驚きの自由契約だった。
移籍先の候補には元所属球団の阪神や同じく関西にあり、4投手がトミー・ジョン手術を受け離脱しているオリックスなど、報道では日本の球団の名前もメディア挙がっていた。しかし阪神の竹内 孝行球団副本部長が「この件に関しては、お話しすることはございません」とコメントしたことが報じられるなど、NPB各球団から獲得の手は挙がっていない。
もし仮にこのまま日本、またアメリカでの契約がまとまらない場合は、他国のリーグで契約はあるのだろうか。
アジアで野球熱の高い韓国プロ野球(KBO)はどうだろうか。KBOリーグ公認選手代理人の資格を持つ金 弘智氏 (キム・ホンジ)によれば、契約の可能性は極めて低いという。
「KBOでは外国人枠が最大で3。ほとんどの球団は投手2人、野手1人で登録しています。また各選手1度までしか交代ができないルールもあります。実際に今季はロッテ・ジャイアンツやサムスン・ライオンズなどは既に交代を使っていますし、外国人選手に満足せず、交代が必要になる球団は少ないと思います」
さらには追加で登録した選手は年俸の上限が1ヵ月10万ドルという規定もあるため、年俸の面でも厳しいと補足する。
「今から仮に契約すると、約5カ月で50万ドルですから7000万~8000万程度です。今までのキャリアを考えた時に、この金額でのオファーは出せないと思います」
実際に移籍が実現したとすれば、「韓国はABS(自動ボールストライク判定システム)が導入されているので、投手が審判と戦う必要はありません。あくまで一般論ですがゾーンが安定していますし、先入観を持たれることもないので、投げやすいかもしれません」と金氏は考察するが、現実な契約は懐疑的だ。
プレミア12で世界一を達成し、近年盛り上がりを見せている台湾リーグ(CPBL)はどうだろう。元阪神投手で現在、台鋼ホークスの育成コーチを務める福永 春吾氏は言う。
「台湾の外国人投手はローテーションを任されることが多いです。基本的には140キロ台の球をインコースにつけて変化球でカウントが取れれば、試合は作れます。球の速さというよりは、投球の上手さが重宝されています」
金額の面で見てもエースクラスで5000万前後、ここ数年は6000万~8000万と市場はあがっているものの、藤浪投手に対しての提示額としては見合っていないだろう。加えて外国人枠も4人の登録で出場選手が3人までと枠も限られてくる。福永氏も「シーズン後半に向け、補強に動く時期でもあるが、急に高額年俸の投手にいくのは厳しいのではないか」と現実的な台湾移籍は厳しい模様だ。
ただ持っているものは一級品。福永氏も藤浪投手のポテンシャルは、ずば抜けていると話す。
「メジャー初年度で60試合以上投げているタフさもありますし、160キロ近くの真っすぐにフォークやスライダーで空振りを取れることも大きいです。台湾は平均球速が140台前半なので、160キロに近い直球は見たことない球だと思います。外国人投手も140キロ台でコースを狙っていく投手が多いので、制球面抜きにして球の威力でいったら抜群だと思います」
そんな福永氏は、2022年にメキシカンリーグも経験している。田澤 純一投手(現・ENEOS)が所属していたことでも知られるドゥランゴ・ジェネラルズのキャンプに参加し、見事契約を勝ち取っている。
藤浪のメキシコ球団との契約はありうるのか。福永氏に聞くとすかさずこう答えた。
「自分がいた当時は外国人枠が7人とかなり空いていましたが、厳しくもあります。実際に自分も昨日キャッチボールしていた相手が、次の日にフリーになってしまったこともありました。他国より契約はしやすいですが、安定はしないと思います」
2024年からは外国人枠が7人から20人に拡大されるなど、契約の幅は広がっている。ただし早くに見切りを付けられる事例も少なくないようだ。
元横浜でメキシカンリーグの下部リーグでプレー経験を持つ冨田 康祐氏にも話を聞いた。すると今度は技術面での指摘が返ってきた。
「現在の藤浪投手を見る限り、日本時代よりゆったりとした投げ方に変わりました。こうしてアメリカのマウンドに合わせてアジャストしているのであれば、例えば日本に帰ってきた場合、しっくりこない可能性もあると思います」
打高投低と言われることも多いメキシカンリーグではあるが、藤浪投手の移籍が実現すれば、十分に活躍できると冨田氏も期待をよせている。
「海外でやりたい意識があってここ数年アメリカで挑戦を続けていますし、メキシコは合わなくないと感じています。オフもプエルトリコのウィンターリーグに参加していて、強いバイタリティは持っていると思います。1つきっかけがあって上手くはまれば、NPBのような活躍が見られると思います」
高校時代は大阪桐蔭で春夏連覇を達成したスター。世代を牽引する活躍を見せてきた右腕の次なるマウンドはどこになるのか。続報を待ちたい。
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