巨人のエース・戸郷 翔征が苦しんでいる。今季は6試合に先発して未勝利。防御率は7.52、被打率.351と奪三振王に輝いた昨年とは程遠い投球が続いている。

 ストレートは常時140キロ後半と大きく球速が落ちた様子はない。それでもなぜ打たれる試合が続くのか。元阪神投手の福永春吾氏(台鋼ホークスコーチ)は言う。

「良い時だった昨年と今年と比べると、今年は体重が一塁側に流れているのが気になります。要は少し開きが早いんです。ホーム方向に体の力を伝えたいのに、伝えきれていない。横の回旋が増えて、球速帯が同じに見えてもいつもよりボールが弱いので、打ちやすい。若干の開きでもプロの打者は見逃さないですし、甘い球が増えているのかなと思います」

 思い通りのフォームに投げられない原因はどこにあるのか。

「もちろんこれまでの疲労も関係していると思います。投手は打たれにくく精度の高いボールを投げるために投球フォームを極めていきますが、打たれにくい投球フォームを長く続けるのは非常に難しく、エネルギーを使うことです。体の状態によってフォームが変化してしまうこともあります」(福永氏)

 投球フォームの修正は実際どう行われるのか。福永氏によると、現在のプロ野球界はさまざまなアプローチがあるという。

「ネットスローなどもありますが、トレーニングで改善することもありますね。今の若い投手は、『指導者に言われたからやる』のではなく、自ら能動的にアプローチができます。

 たとえばフィジカル班を担当するトレーナーと相談をして、『悪い動きが出ているので、それを修正できるようなトレーニングを教えてください』と相談する投手もいますし、コーチの私にも『こういう動きをしたいので、その動きをするためのドリルはありますか』と聞きに来る若手投手もいます。コーチの私はそのやり方を提供します。

 おそらく戸郷投手は自分の映像を見てどこが悪いのかは理解しているはずです。もう一度良い時の動きをするために、トレーニング、バイオメカニクス担当のトレーナー、投手コーチなどに相談して、トレーニング内容の調整、フォーム改善を進めていると思います」

 戸郷は20日の阪神戦では4回を投げて、3失点だった。それでも改善の様子が見られたという。

「開幕3試合はかなり打たれたと思いますが、ファームで調整してからは、10失点した試合と比べると、よくなってきています。ただ巨人のエースである戸郷投手は、ちょっとずつ良くなっているから合格ではなく、しっかりと勝利に導く内容が求められているので、大変だと思います。それでもシーズンは残り4ヶ月もあります。これから取り返せる時間は十分にあるのではないでしょうか」

 戸郷は中4日で25日のヤクルト戦に先発する。チームは4連勝中で、打線は上り調子だ。巨人のエースとして、初勝利につながる快投を見せることができるか注目だ。