【春季東京都大会】好左腕同士のテンポのいい投手戦の末、京華商が都立東大和に投げ勝つ
齋藤雄海(京華商)
<春季東京都高校野球大会:京華商3-1都立東大和>◇3日◇1回戦◇府中市民
都立東大和は、かつては西東京大会で準優勝2回、春季東京都大会でも準優勝を果たして関東大会進出という実績がある。‟都立の星”とも呼ばれて、都立校を牽引する存在だった。その伝統を引き継ぎ、春秋の1次ブロック予選では会場校としての役割も担っている。しかし、近年は多くの公立校同様、部員不足に苦しんできた。一時は10人ギリギリということもあった。今春も13人という少人数ながら、1次予選では2試合ともコールド勝ちして本大会進出を果たし、会場校としての責任も果たした。
一方の京華商は、昨秋のブロック予選を勝ち上がって秋季都大会進出を果たしている。本大会では初戦で専修大附に4対5とサヨナラ負けしたものの、接戦を戦ったことは自信になっているのではないだろうか。昨年1月に4年ぶりに就任した尾崎孝典監督も、「投手がいいので期待はしている」と感触を得ている。
天気予報はあまり芳しくなく、試合途中から雨が降ってくることも予想された。案の定、4回頃から雨がぽつぽつと落ちてきた。それでも、この試合は、中断することもなく消化することができた。都立東大和の忌部 柊哉投手(2年)、京華商の齋藤 雄海投手(3年)の両左腕が、お互いに自分のリズムで好投していたこともあって、テンポのいい投手戦となったことも、要素としては大きかった。
初回はともに先頭打者が出て、失策絡みで1点ずつを奪い合った。それでも、その後はお互いの守りもしっかりと落ち着いてきて、両投手の投げ合いで、スイスイと3回まで進んでいった。忌部投手は低めに球を集めて3イニングで5三振を奪っていた。齋藤投手は初回こそ先頭打者に四球を与えてしまったものの、制球がよく早いカウントでストライクを集め、打者を追い詰めていく投球を見せていた。
次の1点がどちらにどう入っていくのかなというところが焦点となったが、4回に、京華商は四球の走者を置いて6番・齋藤とのエンドランで1死一、三塁となる。ここで、宮澤 伸内野手(3年)の一打は遊ゴロでスタートを切っていた三塁走者の黒沢 翔唯捕手(3年)がホームインした。新基準バットには有効と言われている「ゴロGO戦術」が見事にハマった。
その後も投手戦は続いていったが、都立東大和は4回、5回と無死で死球や桑原の安打などで走者を出すものの、齋藤投手の巧みな投球に打たされるような形になってしまい、いずれも併殺で好機を生かし切れなかった。
また、都立東大和も、守りでは桑原外野手が中継プレーで本塁や三塁で走者を刺すなどの好プレーもあって、お互いにしっかりと守り切っていく野球ということをしっかり示していた。
そのまま1点差で9回を迎えて、京華商は4番・黒沢が左前打で出塁すると、しっかりとバントで送り1死二塁。続く齋藤が左前へはじき返して、二塁走者を迎え入れて3対1となった。試合展開からしても、非常に大きな1点となった。齋藤投手は打者としては6番に入っていたが、この日は3安打で2得点に絡むなど、打者としても活躍した。
尾崎監督は、「雨が降っていたのですが、条件は相手も同じですから、やってきたことをしっかり出していこうということを言いましたけれども、よくやってくれました。相手は人数は少ないけれども、いいチームでしっかりとした野球をやってくるなという印象でした。そんな中で、きっちりと守っていくという自分たちの野球ができたと思います」とロースコアゲームで、しっかりと守りの野球で勝てたことを評価していた。
都立東大和の三國力監督は、「最悪の時は部員が全員で9人なんていう時もありました。そこから、少しずつでも、階段は上れているのではないかと思っています。夏へつなげていくという点でも、課題ははっきりしたのではないかと思っています」と、惜敗にも得るものはあったという感触だったようだ。新学期になって、新入部員も10人ほどは入ってくれそうかなという。少しずつながらも‟元祖都立の星”として、復活へ向けての始動もしているといっていいであろう。