明大中野vs錦城学園
明大中野が中盤に細かく追加点を挙げて、錦城学園を突き放す
中村 海斗(明大中野)
<春季東京都高校野球大会:明大中野6-4錦城学園>◇2日◇1回戦◇駒沢
東京都の中堅私学校同士の対決と言っていい顔合わせ。好試合が期待されたが、その予想にたがわぬテンポのいい投手戦で始まった。
明大中野は188センチ、91キロという大型右腕の中村 海斗投手に注目が集まる。本人も、「明治大に進学して、神宮で活躍して、将来的にはプロに進みたい」という思いを持っている。また、それだけの素材であるということで、メディアでも多く取り上げられるようにもなってきた。
その中村投手に対して、錦城学園がどのように攻略していくのかというところも見どころだった。
初回、錦城学園は3番吉見が安打したものの無得点。そして、その裏、明大中野は先頭の高岡が中前打で出るとバントと内野ゴロで三塁へ進み4番髙橋の一塁線を破る二塁打で先制する。
錦城学園は2回も先頭から連打したが盗塁失敗などで好機を作り切れなかった。それでも3回、1番原が四球で出ると、バントと二邪飛ながらタッチアップで三塁へ進む好走塁を見せると、打っても4番の前山投手が中前へはじき返して同点。さらに、続く瀬谷も左翼線二塁打で二、三塁。ここで前の打席に安打している松崎。錦城学園としては逆転の好機となったが、ここは中村投手が投げ勝った。「あの場面で畳みかけられなかったのは痛かった」と、試合後に玉木信雄監督は語っていた。
そして4回、明大中野は下位打線でチャンスを作って1死満塁。1番髙岡は四球で押し出し。コーナーを突いていった前山投手としてはやや悔いの残る四球となった。さらに次打者・牧田は中犠飛を放って明大中野はリードを広げる。5回にも片桐、岩原、中村の3連打で追加点を挙げた。前の回まで、いくらか打ち上げ気味の明大中野打線だったが、岡本良雄監督が、「人工芝なんだし、もっとコンパクトにたたきつけるようにして打っていくようにしよう」という指示を与えたというが、それを忠実に守った3連打だった。
7回には、そんなスイングの延長線上で、昨夏は4番を打ったこともあるという6番岩原が右翼へソロホーマーを放って大きな追加点が入った。8回にも2死三塁から3番吉田が中前へたたきつけて6点目。
このリードで余裕ができた明大中野は9回、中村投手を下げて右サイドの佐伯投手を投入した。その佐伯投手に対して、錦城学園は9番成田と1番原の連打でチャンスを作り、3番吉見の左中間を破る三塁打などで3点を返したものの、明大中野の細かい追加点がモノを言って、そのまま逃げ切る形となった。
岡本監督は、「今日の中村は、決して調子がいいという内容ではなかったけれども、エースというのは調子が良くなければ、よくないなりにきちんと投げなくてはいけないということはよく話していました。それが、今日はできたというところでは成長したといっていいでしょう」と評価していた。
中村投手自身は、調子がいい時は最速145キロを表示したこともあるというが、「メジャーの前田 健太投手に憧れています。一度会うことができて、マエケン体操の肩回しなども教えていただいて、実践しています。この大会では、何とか夏のシード権を取りたい」と、ベスト16以上の上位進出を目指している。岡本監督も、「一生懸命やっていて、人の気持ちもよくわかる子で、仲間の信頼も得られています。投手としては、優しすぎかもしれませんが(苦笑い)」と、その人間性も評価している。
錦城学園は安打数としては12本で明大中野を1本上回っていた。玉木監督は、「もともと打力のあるチームではないので、2ストライクからあっさり三振はやめようということで、ストライクを取りに来るところを早いカウントで打っていったのですが、それはよかったと思います。ただ、打線としては繋げきれませんでした。それでも、負けた試合でしたが、ウチとしては勉強になった試合だったと思います」と次を見据えた。そして、夏へ向けては、「何につけても積極的に動いていくことを心がけることで、チャンスに打てるようになっていくのだ、という積極的な姿勢が大切なことをミーティングでも伝えました」という。今後の成長に期待したい。
(取材=手束 仁)