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若燕勢とベテランを上手くマネジメント 高津監督が実践するチーム運営

2023.05.01

若燕勢とベテランを上手くマネジメント 高津監督が実践するチーム運営 | 高校野球ドットコム
村上宗隆

 高津監督率いるヤクルトは、2021、2022年とリーグ2連覇。2021年は日本一にも輝いている。

 この高津監督のマネジメントは、勝つために休ませる部分が大きかった。キャンプ序盤から3勤1休を設定。さらに当日のメニューと、厳しい練習のふたつを一緒に追うことも不可にした。さらにシーズン中の2ヶ月本拠地を離れる際も、練習しすぎないマネジメントを徹底して、離脱を防いだ。

 野手陣では、2021年はチームリーダーである山田 哲人内野手(履正社出身)が、自身5度目のシーズン30本塁打を達成。個人の打撃成績を見ると村上 宗隆内野手(九州学院出身)と山田が揃っているヤクルト打線の得点力は非常に強みだった。さらに、塩見 泰隆外野手(武相出身)がトップバッターに定着した。加えて、新外国人のオスーナとサンタナの両外国人も相手チームからすれば厄介な選手だったのではないだろうか。この両外国人の間に挟まれていた中村 悠平捕手(福井商出身)が勝負強い打撃をした。この年は代打の切り札の川端 慎吾内野手(市立和歌山商出身)が代打打率.366を記録しており、試合終盤で相手チームにプレッシャーを与える存在にもなった。

 2022年は三冠王の村上が目立っていた中で、中村悠に依存しすぎない捕手運用を行い、古賀 優大捕手(明徳義塾出身)や内山 壮真捕手(星稜出身)も起用し始めて戦力の底上げを図った。さらに長岡 秀樹内野手(八千代松陰出身)を下位打線で起用し、伸び伸びと打たせる意図も見受けられた。その結果、長岡は高卒3年目ながらもゴールデングラブ賞を獲得。打撃面でも9本塁打を記録した。

 投手陣では、2021年は高橋 奎二投手(龍谷大平安出身)、奥川 恭伸投手(星稜出身)といった勢いのある若手に、石川 雅規投手(秋田商出身)や小川 泰弘投手(成章出身)、サイズニードを中心に回したが、奥川は登板間隔を中10日にするなど、この点でもケガをしない起用法が見受けられた。

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國學院大時代の清水 昇

 また、オリックスと同様にブルペン陣を分厚くした。クローザーのマクガフを中心に清水 昇投手(帝京出身)、田口 麗斗投手(広島新庄出身)、今野 龍太投手(岩出山出身)、石山 泰稚投手(金足農出身)、坂本 光士郎投手(如水館出身)、大西 広樹投手(大商大高出身)などのブルペン陣を上手く運用した。

 2021年ではマクガフと清水の4連投は10月8日の阪神戦で初めてのことだった。シーズン中は原則的に3日連続登板までとするなど、巧みなマネジメントを見せた。2022年も奥川を欠いたなかで、小川とサイスニード、石川、高橋、高梨 裕稔投手(土気高出身)、原 樹理投手(東洋大姫路出身)を先発として回していき、規定投球回数は小川のみ。前年以上に中6日に縛られることなく運用をしたことから、先発陣はイニングを稼げなかったが、前年と同様にブルペン陣の層が厚かった。フル回転の木澤 尚文投手(慶應義塾出身)やマクガフ、清水や今野、田口、大西、梅野 雄吾投手(九州産出身)、石山、コール、久保 拓眞投手(自由ケ丘出身)を勝ちパターンに固定せずに上手く運用した。

 さらにシーズンで3連投したのは、6月3~5日のマクガフと、7月29~31日の久保の2人のみで、クライマックスシリーズ(CS)を含めるとプラスで清水を含めて3人だった。これはリリーフ投手を高い次元で整備し、誰を使っても抑えられる状態にした上で適切なタイミングでの継投が光った。

 今シーズンは開幕前から塩見が離脱。山田も離脱し、村上が不調のため打線が低調のスタートを切った。ただ、前年台頭を見せた内山は捕手から外野まで守り、赤羽 由紘内野手(日本ウェルネス信州筑北高出身)や、濱田 太貴外野手(明豊出身)などの若手も起用している。また、オスナとサンタナの両外国人は、これまでのシーズンを見るとケガの離脱こそ心配だが、チーム内で当たっているため、村上が復調するまでは、打線を牽引することが期待されるだろう。

 投手陣は、マクガフがメジャーリーグに挑戦のため移籍し、奥川が開幕前から出遅れている。ただ、田口や清水、木澤、石山、小澤 怜史投手(日大三島出身)を中心としたリリーフ陣の防御率は12球団トップクラスだ。今シーズンは星 知弥投手(宇都宮工出身)がいい働きを見せている。高津氏の運用力に、貧打ながらも試合巧者のように勝てる体制を整えるのも不可能ではないだろう。苦しいスタートとなったシーズンだが、高津監督のマネジメントには2023年シーズン以降にも注目だ。

(記事=ゴジキ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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