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2013年の第3回WBCは国内組のみで3大会連続ベスト4

2023.03.02

2013年の第3回WBCは国内組のみで3大会連続ベスト4 | 高校野球ドットコム
前田 健太

 第3回を迎えたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の開催前に侍ジャパン常設化が決定した。しかし、日本プロ野球選手会が2013年WBCの不参加を全会一致で決め、日本野球機構と対立してしまう。その後、紆余曲折があり、「MLB、WBCIとの関係において、選手会が要望してきたことが概ね実現していると判断できる状況が整ったこと」「NPBとの関係において、NPBが確立した権利を最大限に生かすための体制作りを確約した事」、以上を理由にWBC不出場決議の撤回をNPBに通知、WBCに参加することが正式に決定し、前年の10月に監督が発表された。

 しかし、この大会はメジャーリーガーが0人。前年日本一に輝いた巨人の選手を中心にチーム作りが行われた。そのため、これまでのWBCの代表で谷間のメンバーだった大会と言ってもいいだろう。

 準決勝ではモリーナのリードや試合を動かす支配力に、完全にしてやられた。さらにプエルトリコの投手陣は、お世辞にも強力とはいえなかった。日本戦の先発のサンティアゴはマイナーリーグ通算で36勝51敗の成績だ。しかし、メジャーで最高峰の頭脳と呼ばれるモリーナのリードによって抑えられた。味方投手の実力を自らのリードで最大化させたモリーナの統率力や視野の広さ、野球IQの高さなどの凄さが実感できる試合だった。

 また、この大会で先発陣で唯一安定していた前田 健太投手(PL学園出身)が先発し、打者も井端 弘和内野手(堀越出身)や内川 聖一外野手(大分工出身)を中心に攻めた結果、力負けをしたため、ある意味仕方ない敗戦だっただろう。

 この大会を優勝したのは全勝という結果でドミニカ共和国が頂点に立った。前回大会はまさかの1次ラウンド敗退を喫したが、この大会で意地を見せた。

 MVPには、打率.469で2本塁打を放ったロビンソン・カノが選ばれた。ドミニカ共和国はベストナインに輝いたフェルナンド・ロドニーを中心に、サンティアゴ・カシーヤやケルビン・ヘレーラ、オクタビオ・ドーテル、ペドロ・ストロープなどリリーフ投手で固めた。このブルペン5枚看板は何と合計28イニングで失点ゼロという驚異的な仕事を果たしてみせた。球数制球がありながら短期決戦のWBCで、小刻みな投手リレーで相手チームを抑えた。チーム防御率は参加国で唯一の1点台となる1.75を記録。チーム単位で7セーブ、11ホールドを記録しており、短期決戦で勝つためのお手本のような投手起用をしていた。

 打撃陣も強力で、MVPのカノはもちろんのこと、エドウィン・エンカルナシオン、ホセ・レイエス、ネルソン・クルーズがベストナインに選ばれた。

 この大会を振り返ると、前年のドタバタしていたことやメジャーリーガーなし、候補選手の世代が谷間だった点を含めると、ベスト4にまで進んだことは及第点だろう。

 代表合宿で右肩の不安を訴えていた前田が、大会を通して好調を維持し、防御率0.60でベストナインに輝いた。しかし投手陣全体を見るとチーム防御率が3.84とお世辞にもいい成績ではなかった。そのため、前田頼りの先発陣なのは否めない状況で、リリーフ陣も牧田 和久投手(静清工出身)以外は投げてみなければわからなかった。

 また、野手陣で見ると活躍をした井端は開幕当初はベンチスタートだったが、チームトップの打率.556を記録してベストナインを獲得。内川も打率.348を記録し、前回大会の優勝を知る中心メンバーとして活躍した。打線に関しても、オランダ戦のようにタイミングが合う投手には得点を積み重ねられたが、一線級の投手や見慣れない軌道に対しては、ほとんど対応ができない状況だった。そのため、2006年や2009年大会のように、攻撃のバリエーションが感じられなかった。

 ただ、このような状況でもベスト4に入るのが、日本の強さを感じられる部分でもあった。

(記事=ゴジキ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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