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優勝候補筆頭の東邦を至学館、愛工大名電、享栄などが追うが、ノーシード校の躍進もある

2023.06.25

 今年の全国高校野球選手権愛知大会は、各校に好投手が多くいるということで、全国的にも注目度が高い。春季県大会で昨秋に続いて優勝した東邦と、準優勝の至学館を軸に、愛工大名電享栄、昨夏もベスト4に進出した愛知啓成など、ベスト8に残った学校がシードされている。伝統の中京大中京や近年に甲子園出場実績のある愛知産大三河に好投手のいる愛知産大工といったところがノーシードとなっている。それらの学校が、どこへ入ってくるかも注目された愛知大会の組み合わせだった。結果的には、全体的に有力校が、上手く分散されたかな、という印象はある。

 8強が出そろったところで、愛知大会は再抽選となる。ここからが、セカンドステージ、新たな戦いが始まるということになる。

 中部大春日丘のゾーンは西春あたりが4回戦までには進出してきそうだ。中部大春日丘は昨夏もシード校でベスト8に進出しているが、近年は安定して上位に残っている。春はリードオフマンとして活躍した比嘉門 大翔捕手(3年)は勝負強い好打者だ。今春は、県大会で中京大中京にコールド勝ちして自信を深めている。このゾーンの初戦では「名古屋人環大岡崎」が好カードだ。ベスト8決めの5回戦で中部大春日丘に挑むのは刈谷が最有力か。春季県大会後の全三河大会を制しているが、エースの重野 颯吾投手(3年)は安定している。打線もしっかりと振ってきて強力だ。

 昨秋、今春と準優勝の至学館は、主将でもある伊藤 幹太投手(3年)が心身ともに安定している。今大会で勇退を表明している麻王義之監督も、全幅の信頼を置いている。その初戦には西尾小牧工科の勝者が挑む形になる。西尾は神谷 峻希投手(3年)が全三河大会で豊川を完封するなど力を示しているだけに面白い存在となりそうだ。ここには、岡崎工科杜若など西三河の力のあるチームがいる。

 春季県大会ベスト4の愛工大名電は、初戦で大府大成の勝者と当たることになる。どちらが来ても少し厄介な相手となるであろう。ことに、大府はエースの林 祐作投手(3年)と主砲の竹内 聖人外野手(3年)は注目度も高い。愛工大名電笹尾 日々喜投手(3年)を軸とした投手陣は安定しているが、初戦だけに、何があるかわからない。このゾーンでは「愛知商渥美農」が初戦の好カードだ。愛知商は県高野連の理事長も務めたベテラン森淳二監督が復帰し、試合運びも巧みだ。さらには、実力校の愛知もおり、この中からベスト8をかけて愛工大名電に挑むチームが出てくるであろう。「吉良名城大附」も好試合が期待できそうだ。

 東三河の雄として、安定した実績を誇っている豊川にはエース川口 颯太投手(3年)がいるが、下級生にも有力選手が多い。2年生のモイセエフ・ニキータ外野手の打撃も注目される。その豊川に4回戦で挑むのは伝統校の時習館か、今春は西三河地区大会を1位で通過して県大会進出を果たしている安城あたりだろうか。安城は、走者が出ると様々な形で仕掛けてくる加藤友嗣監督の采配も見どころだ。相手の嫌がる野球をしてくるという点では、まさに曲者と言っていい存在である。

 センバツ出場校で今春の県大会も優勝を果たしている東邦はエース宮國 凌空投手(3年)、春季大会で自信をつけた岡本 昇磨外野手(3年)、山北 一颯投手(3年)の3人の投手が安定している。初戦の相手は東三河の公立伝統校の成章になりそうだ。そこを通過すると、星城栄徳の尾東地区の強豪私学と当たりそうだ。そして、ベスト8を競う5回戦の相手は中部大一西尾東、4年前の優勝校のといったところになりそうだ。は、子迫 創太投手(3年)ら投手陣も安定している。東邦としてはいずれがきても油断ならない相手。全8ゾーンの中では、中堅有力校が集まったゾーンとも言えよう。

 昨夏と今春のベスト4の愛知啓成は140キロ超のスピードがある清水 凰史投手(3年)をはじめとした投手陣が充実して、安定している。打線も、小市 優作内野手(3年)を中心として山本 煌大内野手(3年)、主将の山谷 透生内野手(3年)などは、長打はあまりないもののシュアだ。4回戦では、近年躍進してきている科技高豊田菊華、全三河大会で4強に入った豊橋商あたりが相手になりそう。そこを突破すれば、5回戦では、名経大高蔵愛知黎明岡崎城西あたりと対戦しそうだ。例年以上に投打にまとまりのいい愛知啓成としては、2010年以来の決勝進出、さらには夏の甲子園初出場を目指したいところだ。

 今秋のドラフト上位指名候補の左腕・東松 快征投手(3年)が注目されている享栄は、先の学校創立110周年記念試合としてバンテリンドームで行われた記念試合で全国的な強豪の大阪桐蔭(大阪)を抑えるなどして、順調に仕上がってきている様子だ。春季県大会では中井 創友投手(3年)ら、東松に続く投手の成長も見られた。大藤敏行監督はしっかりと、頂上までのイメージはできているようだ。このゾーンでは開幕初日に、愛知産大系列校ダービーとなった「愛知産大工愛知産大三河」の好カードもある。この勝者が、4回戦で享栄と当たることになりそうだ。愛知産大工には、やはりドラフト候補の天野 京介投手(3年)がいて、鈴木将吾監督も、恩師・大藤監督に一泡吹かせたいところだろう。

 5回戦では、名経大市邨か2年生が底上げされて全尾張大会を制した誠信あたりが来るだろうが、初戦で名経大市邨に挑む犬山も侮れない存在だ。

 今大会、最大の「ノーシード爆弾」と言われていた中京大中京桜丘のゾーンに入った。春季大会では投手崩壊で思わぬコールド負けを喫したが、2年生の大型左腕・中井 遥次郎投手や1年生・宮内 渉吾投手らの台頭も含めて、立て直してきている。中京大中京としては初戦の岡崎東を突破したら、次は東三河3強の一つ豊橋中央と当たりそうだ。これを制した方が、東三河の雄で4年前の愛知大会では決勝進出を果たしている桜丘と当たるということになるだろう。桜丘は多彩な投手陣で、力のある湯地 隆登投手(3年)と村松 慎之介投手(3年)に加えて、下手投げの鈴木 颯投手(3年)も初めての対戦では、てこずりそうだ。桜丘の反対ゾーンには、昨夏旋風を巻き起こした東浦富田が入っており、今年も旋風を起こせるのかというのも興味深い。碧南豊田工科清林館安城東あたりも上位を窺う。

 昨夏の愛知大会では、シード8校中6校が順当にベスト8までに残った。今年も、それくらいの確率でシード校が残りそうだ。つまり、このところの上位校は安定しているということが言えよう。そういう意味では、昨秋と今春の県大会を制している東邦が、一番優勝に近いのではないかと思える。さらには、秋も春も東海大会に進出した至学館が追いかける存在の筆頭か。さらには愛工大名電享栄愛知啓成が続く。ただ、それぞれゾーンに、中堅校の何校かが集まっているということにも注目したい。

 また、夏の大会は、昨年ベスト8入りした富田や、中京大中京を下しシードの西尾東も下した東浦などのように、大会を通じて勢いをつけていく躍進する学校もあり、何があるかわからない。

 最終的には、最後に残ったところが強かったということになるのだろうが、そのプロセスこそが夏の大会の醍醐味でもある。

記事=手束 仁

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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