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平成最後の神宮大会を総括 出場10チームの収穫と課題とは

2018.11.15

平成最後の神宮大会を総括 出場10チームの収穫と課題とは | 高校野球ドットコム
トーナメント表

平成最後の神宮大会となった第49回明治神宮大会は、札幌大谷の優勝で幕が閉じた。そんな今大会を総括したい。

札幌大谷は優勝をプラスに変えることができるか?

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優勝を決めた札幌大谷ナイン

 今年の札幌大谷は一戦ごとに力をつけていった。まず初戦は近畿王者の龍谷大平安。1回裏に相手のミスをつけこんで5点を先制して、そのまま逃げ切って初戦突破を決めると、準々決勝の国士舘戦、準決勝の筑陽学園戦では16安打を放ち、さらに先発の太田流星が8回まで無安打のピッチング。9回に途切れ、2失点完投勝利。そして決勝でも優勝候補・星稜相手にも、接戦の勝負を持ち込み、7回裏、1番北本壮一朗(2年)が逆転打を放ち、そしてエース・西原健太が1安打1失点完投勝利。ミスが多かった龍谷大平安戦と比べて見違えるような試合内容だった。

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札幌大谷のエース・西原健太

 船尾監督は優勝直後のインタビューで「信じられない」と話すように、想像以上の結果だっただろう。これが自信となるのか、驕りが出てしまうのかはこれからの取り組み次第。確かに西原、太田を中心とした投手の駒は豊富で、打線も北本、センター・石鳥を中心とした打線も強力であることが分かった。

 札幌大谷はこれをピークをせず、この成功体験を機に、レベルアップができるか。選抜はもちろん、札幌地区にも強力なライバルが多い。それでも寄せ付けない強さを身に付けることを期待したい。

[page_break星稜は前評判通りの力を発揮 今後の課題・投手起用を考える]

星稜は前評判通りの力を発揮 今後の課題・投手起用を考える

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前評判通りの活躍を見せた奥川恭伸(星稜)

 準優勝の星稜も前評判通りの力を発揮した。注目が集まった広陵戦では7回コールド勝ち。準決勝の高松商戦でも7対4で勝利。決勝では札幌大谷に1対2で敗れたが、強さを見せた。エースの奥川恭伸は15.1回 26奪三振 失点は犠飛による1点があったが、これはエラーが絡んでの失点なので、大会通じての自責点は0と、前評判通りの力を発揮してくれた。打線は巧打者・東海林航介、攻守ともに安定した実力を持った知田爽汰、攻守優れた1年生ショート・内山壮真と能力が高い選手が多かった。投手陣では1年生の荻原

 課題となったのは4番打者の不在。内山は好選手ではあるが、やはり4番打者として物足りず、1番か3番にして持ち味が発揮する選手。奥川も長打力もり、読みも鋭い強打者だが、できれば6番打者としておきたい選手。個人的には一塁手・福本陽生がカギを握っている。どっしりとした構えから繰り出すスイングは重量感があり、本塁打級のファールを連発しており、この選手がメカニズム的に本塁打を狙える選手だと感じている。この選手が化ければ面白い。

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攻守優れた1年生・内山壮真(星稜)

 さて、絶対的なエース・奥川がいると、来年必ず議論になりそうなのが、控え投手の存在である。高校生ではとても攻略できそうにない投球術を持つ奥川だが、疲労がたまれば打たれるリスクは高くなる。そのため控え投手の力量が問われるが、幸い、星稜は投手陣の層は他校に比べて厚い。

 技巧派左腕・寺沢 孝多決勝戦では7回途中まで2失点の好投を見せた138キロ右腕・荻原 吟哉、今大会の登板がなかったが、140キロを超える長身右腕・寺西 成騎と3人いる。今回考えていきたいのは、投手陣の役割である。まず奥川が求めれる役割はこちら。

・先発完投

・僅差リード時のリリーフ

・クローザー

 基本的に先発となりそうだが、どうしてもほかの投手が先発するときは、リリーフでの起用になる。決勝戦では逆転を許してからのリリーフでの登場だったが、甲子園であれば、逆転される前のリリーフだっただろう。そこで流れを断ち切れる存在になってほしい。一方、奥川以外の起用法はこちら。

・6回3失点以内

・奥川をつなぐリリーフ

・僅差時のリリーフ及びクローザー

 今のところ寺沢・荻原は先発での起用が多くなるので、この2人は僅差でも長いイニングを投げ切れるようになってほしい。寺西に関しては奥川に次ぐ速球を投げ込む投手であり、クローザーができるような精神力、技術力は身につけてほしい。投手陣の起用の幅を広げる。それが星稜全国制覇のカギとなるのではないだろうか。来春、どんなチームへ成長しているのか楽しみにしていきたい。

[page_break残り8チームの課題と今後について]

残り8チームの課題と今後について

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香川 卓摩(高松商)

 ベスト4の筑陽学園桐蔭学園戦にコールド勝ちしたように強力打線を発揮した。ただ九州大会で好投を見せてきた投手陣は札幌大谷戦で打ち込まれ、全国レベル打線に通用する球速・制球力・変化球の精度を身につけることが課題になる。収穫・課題ありの神宮大会だった。

 同じくベスト4の高松商八戸学院光星との打撃戦を制した試合を見ると、バットコントロールが高い選手が多く、要所でセーフティスクイズを仕掛けたりなど戦術の幅が広い。ただ左腕・香川 卓摩、右腕・中塚 公晴はともに球速が135キロを超えるものの、要所での制球力が甘い。3年前のチームと比べても実力的には大きな差はないので、一冬大きく素質を伸ばしていけば、十分に全国でも戦っていけるチームである。

 他では八戸学院光星は、ベスト4に進出したチームと見比べても、実力的には差がない。1番から9番まで長打が打てる選手がおり、さらに内野手の守備は盤石。ただ外野手は打撃力が高い選手が多いが、まだ捕球・送球面で穴がある。投手陣は投球術がたけた後藤丈海はいるものの、打撃面のレベルアップが見込まれる春以降では、現状のままでは不安がある。外野守備・投手陣強化が最重要課題となりそうだ。

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後藤丈海(八戸学院光星)

 国士舘は全体的に力量不足。特に投手陣は絶対的な投手がいないので、全体的な底上げを図り、一冬で戦えるチームをつくりあげてほしい。

 桐蔭学園はアウトカウントのミスなどもあり、桐蔭学園らしさがなかった。桐蔭学園といえば、これまでのOBを見ても走攻守で抜け目のない選手が多かった。もう一度、基本を見直し、さらに今大会で明らかとなった投手陣の全体の底上げが復活のカギとなる。

 コールド負けした広島広陵は力量的には優勝していてもおかしくない布陣だっただけに初戦の星稜戦では守備のミスから大量点につながったのは残念。選抜でも上位進出候補と期待されるが、自分たちの思い通りの試合運びができないとき、逆転できる精神力が問われる。

 東邦は左腕・植田結喜が不調で登板できなかったのが痛いが、打線の力強さ、個々の選手の能力の高さは出場校の中でもトップクラス。ただ攻撃内容が淡泊。終盤に追い上げる逆転力はさすがだが、どうすれば最少失点にしのぐことができるか、得点を挙げることができるか。個人の能力を伸ばすことはもちろんだが、選手自身が駆け引きを学んでほしい。

 龍谷大平安は守備のミスから初回5失点。近畿大会で見られた緊張感のある試合運びができなかった。近畿大会の試合を見れば守備はきめ細やかで、打線もチャンスの場面で一気に畳みかける打撃も迫力がある。なぜ神宮大会のような試合内容になってしまったのか。選手自身が自覚すれば、来春は攻守に隙が無いチームへ成長するはずだ。

 神宮大会に出場した10チーム。良い結果に終わったチームもあれば、不本意な結果に終わったチームもある。ただ1つ言えるのは、多くのチームが来春へ向けて、冬のトレーニングに取り組んでいる中、全国大会を経験できたことは貴重な経験である。これを良い形で生かせるかは、選手たちの心がけ次第。良い意味で変わったと思う成長を10チームには期待したい。

(文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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