学生主体の準硬式の象徴的な取り組み 選手、リーグ戦を支え、運営する学生集団を見逃すな<田中裕毅の”準硬ドットコム”第14回>
3月31日にセンバツ甲子園が終わり、高校野球界の注目は各地の春季大会に移った。
準硬式界も春季リーグ戦が始まり、全国各地で熱戦が繰り広げられている。リーグ戦の結果が、8月の全日本大学準硬式野球選手権に結び付くことを考えると、全国を狙うチームは一戦たりとも落とせない。
そうした戦いは是非球場で見て欲しいが、今回伝えたいのは、陰で支えている人たちの存在だ。
選手、大会を支える学生委員という存在
準硬式も大学硬式と同じく、リーグ戦を実施するにあたって運営をしているのは学生たち。各チームのマネジャーないし主務が、そのリーグの学生委員として攻守決定、公式記録、試合アナウンス、2試合目以降の試合時間の調整。さらには公式SNSへの試合結果や選手のインタビュー動画などの広報活動も行っている。
さらに学生委員を統括するリーグ委員長になると、仕事はもっと増える。
開幕前には、全試合日程の編成しつつ、試合日に伴う球場と審判の確保。各チームの部員登録情報を回収して、パンフレットを発注する。
リーグ戦期間中は運営責任者として全試合を観戦。審判への昼食手配、学生委員と相談して試合時間の調整およびシートノックの有無を決定して各チームに通達。もし雨が降るならば試合中止の判断や試合日程を再調整して各チームへ連絡する。
そしてリーグ戦が終われば、今後に向けた改善点などを話し合うといったように開幕前から含めると約3か月前後は多忙な毎日を送る。もちろん各連盟の事情で多少の業務内容に違いはあれど、選手たちが快適にリーグ戦を過ごすために、見えないところで奔走しているという事実は変わりない。
もっといえば、各リーグから数名を選んで構成される各地区の学生委員というのも存在する。これまで取り上げた関東大会のような、地区単位で開催されるイベントはもちろん、全日本大学準硬式野球選手権や清瀬杯全日本大学選抜準硬式野球大会、全日本大学9ブロック対抗準硬式野球大会といった全国大会の管轄地域になれば、その大会運営も担当する。
先述したようなパンフレットや昼食などの手配はもちろんだが、宿泊場所の準備も発生するため、多忙を極めることは想像ができるだろう。
かく言う私もリーグ戦の委員長までは経験し、リーグ戦を運営する難しさは身に染みて理解しているつもりだ。出来ることなら避けたいと思ってしまうようなことばかりだが、やっている学生たちの思いは違う。
「最初は運営に対して漠然と興味を持っていて、先輩に話をしたところが始まりでした。最終的に立候補して携わるようになるのですが、様々なプロジェクトをやる中で多くの人と協力してやることに魅力や楽しさがあるんですよね」(関東連盟学生委員長・池田有矢)
「人の上に立って指示をするのは上手くないので難しいと思うこともありますが、色んな経験ができているので、すごくいい機会をもらえていると思います」(元関東連盟学生委員長・鈴木陸太)
「正直、高校生の時は自分の力で何でもやろうとしてしまうところがありましたが、他の大学の学生委員と協力して運営をやっていく、周りを動かしていくことの大切さを学びました。もちろん、大人の理事の方々とも話す機会が沢山あったので人間関係が広げられたことも大きかったです」(元全日本連盟学生委員長・渡辺力)
興味をもって始めた学生もいれば、苦手でもやり切った学生もいる。それぞれ思いは異なるが、運営を通じて様々な学びがあって、人として成長できるというのは魅力だろう。
新年度を迎え、準硬式の門を叩く学生たちがやってくる季節だ。もちろん選手として、学生野球最後の4年間を満喫するのも大事だ。そのうえで選手とは少し違った視点で野球を見る主務や学生委員という立場にも、一度興味をもってもらえたら幸いだ。
取材・文/田中 裕毅(準硬式野球評論家)
小学3年生から中学生までは軟式野球。高校での3年間は硬式野球をプレー。最後の夏は控え捕手でベンチ入りを果たす。
大学から準硬式野球で3年間プレー。大学2年、3年生のとき、チームは清瀬杯大会に出場し、自身はベンチ入り。さらに3年生の1年はチームの主務として、選手登録やリーグ戦運営に携わる。特に春季リーグはリーグ委員長として、試合日程の調整をはじめとした責任者を任される。