【準硬式関東大会】チャレンジャー精神で中央大が優勝掴む 法政大、筑波大、東海大が躍進した関東大会を総括!<田中裕毅の”準硬ドットコム”第13回>
優勝した中央大 ※写真提供=関東地区大学準硬式野球連盟
3月11日から開幕した第66回関東地区大学準硬式野球選手権大会(以下、関東大会)は、中央大の優勝で幕を下ろした。
攻める野球で優勝した中央大、成長を実感した準優勝・法政大
決勝戦・法政大との一戦も4対0の0封リレーでの勝利と、5試合で5失点の盤石の投手陣の活躍が光った中央大。5試合中4試合で先発に起用された三浦凌輔を筆頭に、6人の投手を起用して優勝まで駆け上がった。
なかでも決勝戦を投げた三浦、そして145キロをマークした大山 北斗の2人が活躍。優勝投手にもなった大山は、「この1年間の悔しい思いを胸にこの大会に挑んだので、決勝で良い投球ができて良かった」と安堵の表情だった。これからのリーグ戦、さらに8月の全日本大学準硬式野球選手権(以下、全日大会)での活躍も期待される。
野手陣では主将・功刀史也、主砲・山口剛大がともに打率5割と、好調な状態で打線を牽引した。主将としてもチームをまとめた功刀は大会を振り返り、「どんな時でも後手に回らず先手を打つ、攻める攻撃ができた」とチャレンジャー精神で戦い抜けたことを優勝の要因に挙げた。
今回の優勝で、8月の全日大会への出場が決定。前回はベスト4まで勝ち上がるも優勝には手が届かなかった。「8年間優勝から遠ざかっているので、中央大らしい野球で優勝を目指したい」と主将・功刀の視線は既に全国大会に向いていた。全国での戦いぶりも非常に楽しみだ。
対して準優勝に終わった法政大は、ノーシードでのスタートだったものの、激戦区を勝ち抜いてきた実力はさすがだった。
初戦・東京薬科大を終えるとシード校・創価大、同じ東京六大学の明治大、今大会話題となった筑波大、そして再びシード校・神奈川大と強敵を破って決勝戦まで進んだ。
3試合に先発した村越 仁志克、右のエース・藤中 壮太を含めた計5投手で、6試合で6失点にまとめる活躍を見せた。決勝戦・中央大は4点を奪われたものの、それまでの5試合で3試合は0封と投手陣の安定感は、中央大に引けを取らなかった。
野手陣では須賀 椋也、菊池 開斗の2人が高打率をマークしたものの、中央大には及ばなかった。それでも主将・関宮楓馬は、「チームとして一回り二回りも成長できた大会だった」と振り返るとともに、「予選会で全日出場が決められるように頑張りたい」と準優勝で獲得した予選会出場権を生かして、全日大会出場を目指す姿勢だ。
諦めない野球で3位を掴んだ帝京大など、結果を残した8強のチーム
ベスト4には帝京大と神奈川大が入り、3位決定戦は帝京大に軍配が上がった。
前回王者として挑んだ今大会、連覇とはならなかったが、準々決勝・立教大戦では最終回に1点差をひっくり返す逆転勝ちなど底力を見せた。その点については主将の橋本恭平も「最後まで諦めない帝京らしい野球ができた」と今大会の収穫に挙げた。
と同時に「新しくスタメンに入った選手が結果を残せたことも大きかった」と新戦力の台頭も評価のポイントとして振り返った。全日大会へ行くにはリーグ戦で結果を残す必要が出てきたが、「全員野球で優勝します」と力強く宣言した橋本。今大会で出てきた新戦力とともに、まずは東都の頂点を目指す。
4位に終わった神奈川大だが、準々決勝では前回の全日大会ベスト4・慶應義塾大に3対1で競り勝つなど、シード校、そして神奈川大学準硬式野球連盟の雄として実力を見せつけた。
特にその試合で好投した近野歩飛は、下級生から主力投手で支えてきたが、今年が最終学年。自チームのみならず関東選抜にも選出される好投手が、最後の1年でどんな活躍を見せるか。リーグ戦から動向が見逃せない。
ベスト8には先述の4校に加えて立教大、慶應義塾大、筑波大、東海大の4チームが勝ち残った。
シード校として迎えた立教大は準々決勝で帝京大に逆転負けを喫したものの、上岡凛太郎や伊東 大夢といった投手陣、さらに打線は初戦・一橋大戦でホームランを放った陶山 泰誠などがチームを牽引した。
その立教大と同じ東京六大学で、ノーシードながら勝ち上がった慶應義塾大は、9人の投手が大会で登板。岡見 大也が活躍した一方で、注目右腕・田中 瑞希は課題を残す大会になった。無条件で予選会に出場する法政大を除いて、東京六大学はリーグ戦上位2チームが出場枠を争う。立教大はもちろん、ベスト16で姿を消した早稲田大、明治大、そして東京大と、慶應義塾大の2大会連続出場は、簡単な道のりではなさそうだ。
大会を沸かせた筑波大と東海大 日本大、早稲田大、高崎健康福祉大らの奮起に期待
そしてシード校を破って、大会を沸かせたのは筑波大と東海大だった。
東海大は春から2部で戦うものの、昨年の秋までは東都1部にいた強豪。全試合1番に座り、出塁率.632とリードオフマンの仕事をしつつ、ホームランも放った保科 康介の活躍が光った。
筑波大は、注目された橋本剛石は投打で大活躍。投げれば15.2回で16奪三振、打てば打率5割で2本塁打。前回大会で準優勝だった日本大に勝利するなど、チームのベスト8に貢献した。
ただ東海大、筑波大ともに春季リーグは東都2部でスタートするため、予選会への出場チャンスがない。今大会の活躍を考えると残念ではあるが、ともに東都2部を盛り上げて欲しい。
一方で今大会シードながら、日本大、早稲田大、高崎健康福祉大、創価大はベスト8に残れなかった。
日本大は前回、準優勝という結果だけではなく、ここ2年全日大会に決勝まで勝ち上がり、近年勢いに乗っていた。それだけに今回の結果を踏まえて、リーグ戦をどう戦うか。優勝した中央大を除く5校で、予選会への出場枠2つを争う。帝京大、国士舘大などのライバルとの戦いを制することができるか。
早稲田大も、22年の清瀬杯大会優勝、23年の全日大会出場と着実にステップアップしていたところで、今大会16強で終えた。リーグ戦で結果を残して予選会の切符を掴めるか。
高崎健康福祉大は2017年に創部され、8年目を迎える今シーズン。所属する北関東連盟では安定した結果を残しているだけに、全国の扉を今年こそ開きたいところ。今大会の収穫と反省を糧に、まずはリーグ戦を制したい。
創価大は法政大、明治大の強豪が揃い、厳しいブロックになってしまった。所属している新関東では結果を残すものの、予選会では厳しい戦いを強いられることが多い。準優勝校・法政大と対戦した経験を生かしてリーグ戦、そして予選会でも結果を残したいところだ。
4月からは各地でリーグ戦が始まる。新入生も加わり、チームに化学変化がもたらされる中、どのチームが躍進を見せるのか。
取材・文/田中 裕毅(準硬式野球評論家)
小学3年生から中学生までは軟式野球。高校での3年間は硬式野球をプレー。最後の夏は控え捕手でベンチ入りを果たす。
大学から準硬式野球で3年間プレー。大学2年、3年生のとき、チームは清瀬杯大会に出場し、自身はベンチ入り。さらに3年生の1年はチームの主務として、選手登録やリーグ戦運営に携わる。特に春季リーグはリーグ委員長として、試合日程の調整をはじめとした責任者を任される。