2つのトレーニングで精神面も成長


△ハワイ大で投手として活躍している武元

 アメリカの大学に入学すると、武元の何事にも積極的に取り組む姿勢と、一年中野球が出来る環境がマッチした。英語一つとっても、当初は「How are you?」「hello」など限られたボキャブラリーで会話をしていたというが、「自分はコミュニケーションを取りたいと思って話していました。たとえ発音が下手くそでも、会話を通じて慣れていきました。そういった姿勢を見せた事で、相手に伝わることも速かったです」と、積極性を発揮し、チームに溶け込んでいった。食事やウェイトルームなど、規模の大きい施設でプレーする環境にも恵まれ、「毎日が刺激的で本当に楽しいです」と充実した大学生活を送っているという。

 実際のプレーでも非凡な才能を発揮。一年目は主に抑えとして登板し、シーズン終盤には指名打者でも出場した。シーズン後にはサマーリーグのケープコッドリーグで最優秀投手に輝くなど、順調に結果を残している。武元自身も「真っすぐの平均球速も上がって、質も向上しました」と成長を実感。そこにはトレーニングが影響しているという。

「ウェイトトレーニングで自分の力を発揮できるキャパシティーが大きくなりました。自分の体をどう使うかをトレーニングの段階で考える事で体の鍛え方も変わります。こうした試行錯誤を繰り返して再現性を上げていかないと、トッププロを目指すことができないです」

 こうした技術力の面はもちろん、それ以上に向上したと語るのが精神面。その一環としてチームが取り組んでいるのが毎試合の前に行われるメディテーショントレーニングとビジュアライゼーショントレーニングという2つのトレーニングだ。メディテーションは心を落ち着かせ、気持ちを白紙にするトレーニング。日本の瞑想と同じように精神統一を図ることが狙いだという。次に行うビジュアライゼーションは、成功イメージを作ることで、試合でのパフォーマンスを上げる運動だ。いいプレーを思い描くことで、実際の試合でも好判断やスムーズな動作に繋がっているという。智弁和歌山時代から取り入れていた瞑想をアメリカでも体感し、「試合に向かう前にいい準備ができている」と話していた。

佐々木、森井が渡米も「周りを気にしている余裕はない」
△打者としても非凡な才能を発揮

 武元がアメリカで活躍する中、佐々木 麟太郎内野手、森井 翔太郎選手が米国進出を決めた。2人を追うように日本国内でも高校生の「メジャー志向」が騒がれ、アメリカの大学進学が一つの選択肢となっている。このことについて武元は意外な反応を示した。

「もちろん佐々木選手も見たりしますけど、あまり人のことを気にしていないというか…」

 さらに武元らしい回答を続ける。

「正直、自分の事で精一杯です。どうやって上手くなるかでいっぱいです」

 もちろん渡米した選手の活躍を楽しみにしているというが、「人のことを気にかけていても追い付かない」と、あくまで自分の成長を見据えているという。

 渡米から3年目を迎え、現在は「メジャーに行けるような技術、精神面、全てをレベルアップして、何が必要かを考えています」と目標を掲げている。常に高い意識を保ち、一心不乱に突き進む中で「必要なことは精神面と再現性。まだまだ足りていない。もっともっとレベルアップできる」と冷静さも保ちながら練習に明け暮れている。

 米国は21歳になると、ドラフトで大学生の指名が可能となる。今年6月に21歳を迎える武元にとっても重要な一年となる。

「未来は分からないので、やるべきことをやるのが一番です。結果を考えていても逆効果です」

 冷静に自らを分析した武元は、最後にこう言い放った。

「メジャーを代表する選手になりたい」

 日米を沸せるスターになるため、武元は前例なき挑戦に挑み続ける。