東福岡vs大分
150キロを計測!直球をさらに生かすために・・・

佐野皓大投手(大分)
1回に大分守備陣のミス絡みなどで3点が入るなど、4対1と東福岡がリードで迎えた9回表にその瞬間はやってきた。
東福岡の3番吉村円希(3年)にタイムリーが出て、点差は4に広がる。勝負としては、ここで決まってしまった印象だ。
しかし、マウンドの大分エース・佐野皓大(3年)の顔つきは、より一層引き締まった。4番井上潤平(3年)との勝負で、腕の振りがさらに速くなり、[stadium]藤崎台球場[/stadium]のスピードガン表示が驚くべき数字を示すようになった。
144キロ
148キロ
148キロ
150キロ
試合の最後まで球場に残って観戦していた観衆からは、どよめきの声があがった。8回までの最速は143キロだったのに関わらず、9回で150キロを計測。球数は140を超えて出した数字である。
結果的に井上に対しては、145キロの直球で死球を与えてしまうのだが、続く5番日野恭輔(3年)をセカンドゴロに打ち取って、佐野は九州大会の投球を終えた。
「最初に148キロが出た時に、チームの仲間がストレートで行けよと言ってくれた。そしたら(150キロが)出ました。狙っていました」と9回を振り返った佐野。実は終盤にピッチングの中で、身体の使い方のコツを感じたという。
「インコースの投げるというか、向かっていくイメージ。逆に最後の死球は向かって行き過ぎた感じですね」。
確かに終盤、特に9回の佐野のフォームの躍動感は、前半とは違っていた。この試合の勝負とは別に、自分自身のこれからに勝負を挑んでいるようにも感じらほど。それが数字にも表れていたのだろう。

井上潤平(東福岡)
この試合、実は立ち上がりの第1球を、88キロのスローカーブで入っている。
「相手の1番バッター(佐藤力也=3年)は凄く、一番気をつけなければいけないと思っていたので、縦の変化球が必要だと思った。ただ、自分の制球力がなかったです」とこの意図を話す。
これ以外にも、前半からキャッチャーのサインに首を振ってスライダーを投じるなど、変化球が多かった。そして、試合の最後に出たのが150キロという直球だ。
この変化球と150キロの直球は、試合としては直結していないものの、これからの考え方や追求の仕方で、3倍にも4倍にも大きな武器になる要素を秘めている。東福岡の葛谷修監督は、相手チームの視点でこう話した。
「あれだけの能力があるので、(まだ)もったいないというイメージですね。真っ直ぐとスライダーだけでも十分良いのじゃないかな。それで来られる方が、相手は怖い」。
葛谷監督が語る二つの球種に加え、90キロ前後のスローカーブもある。見せどころ次第では、スピードガン以上の威力ある直球を見せられるはずだ。
佐野自身も、「カーブの制球力がつけば、もっと楽なピッチングができる」と、これからの練習でやるべき課題をはっきりと見つけられたようでもあった。
ただ最後にはこうも言った。
「強打者と戦える九州大会は楽しかったですが、やっぱり打たれるのが一番悔しい」。
敗れはしたが大きな財産となった一戦。ここから、佐野自身の勝負が始まった。
(文=松倉 雄太)