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今年の甲子園で全国制覇を狙える10校は?優勝候補筆頭がいない理由と大会予想を徹底展望 【後編】

2021.08.03

 甲子園出場49校が決まった。夏になると、大会前には、圧倒的に優勝候補だと思わせる学校が出てくる。10年の興南、12年の大阪桐蔭、15年の東海大相模、18年の大阪桐蔭、19年の星稜。ただ今年は優勝候補筆頭と呼べるチームがいない。ただ、上手く噛み合えば、優勝候補になるチームが10校ある。そんな学校と理由を紹介したい。後編では5校を紹介したい。

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今年の甲子園で全国制覇を狙える10校は?優勝候補筆頭がいない理由と大会予想を徹底展望 【前編】

出場校唯一のスーパーエース擁する明桜が優勝候補として推せる理由

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風間球打

 今大会、ドラフト候補と呼べる好投手は多い。その中で目玉投手に挙がるのが風間球打だ。最速157キロの速球、フォーク、スライダーを操る剛腕投手。マウンドに挙がれば、SNSでもトレンドワードになりそうなぐらい迫力がある。

 今は1人の投手だけで勝ち上がれない時代だが、最速143キロ右腕・石田 一斗も伸びてきたのが大きい。秋田大会では風間が投げずに、勝利した試合が2試合もある。これは非常に大きく、甲子園でも風間が投げずに勝てる試合があれば、全国制覇の確率が高まる。打線は、石田一、真柴育夢といった好打者で得点を重ね、守備は石田恋、石田一の兄弟二遊間は堅く、風間を支えている。

 組み合わせ、対戦相手にもよるが、1回戦で投げて、2回戦で投げずに3回戦を迎えたとすれば、1週間以上明けて投げることができる。それができるようになれば、負担はかなり軽減する。明桜はどの日に登場するかもポイントになりそうだ。

継投策を躊躇なく行う東海大菅生 機動力・破壊力を秘めた打線は脅威

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本田峻也

 選抜ベスト8の東海大菅生も十分に優勝を狙える。若林監督は昨秋から「甲子園に行くのではなく、甲子園で優勝するために練習をしてきた」と甲子園出場は一つの通過点として捉えていたのだ。

 東海大菅生の投手起用で特徴的なのは良い意味で投手を信用しない。ドライなように見えて、合理的なところだ。140キロ前後の速球と切れ味鋭いスライダーを投げ込む左腕エース・本田 峻也について、「完投はあまりしたことがないですし、この暑さじゃ9回まで持たない」と完投をさせず、躊躇なく継投策を行う。

 この春から急成長し、若林監督の信頼も厚い左の技巧派・櫻井海理、センバツではリリーフとして好投した左腕の松永大輝、クローザーとして140キロを超える速球でねじ伏せる右腕・千田光一郎。代打の切り札として活躍し、西東京大会でも投手としても活躍を見せた多井耶雲も控える。なお期待の大型右腕・鈴木泰成は肘の違和感からベンチから外れる見込みだが、それでも大きく戦力ダウンすることなく戦えそうだ。

 打線は千田、福原聖矢の1、2番コンビは長打力、足も使え、3番・堀町沖永、4番・小池祐吏、スラッガータイプの岩井大和は強力で、さらに機動力も使えて戦術の幅も広い。控えには盗塁ができて、声掛けがうまいショート・岩田一真、センバツで本塁打を放った鈴木悠平も控えており、選手層が厚い。

 十分に上位を狙える戦力だ。

[page_break:強力投手陣擁する近江も怖い存在]

強力投手陣擁する近江も怖い存在

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山田陽翔

 滋賀代表の近江も怖い存在だ。中学時代から騒がれた山田 陽翔は投打の柱へ成長。投手としては最速148キロの速球、切れ味鋭い変化球を武器に防御率0.00、打者としても綾羽戦で特大本塁打を放ち、今大会でも注目の打者へ成長した。

 また、148キロ右腕・岩佐直哉も最速148キロの速球を武器に好リリーフを見せ、この2枚看板の実力は全国トップクラス。打線は3番・春山陽生、4番山田、5番新野のクリーンナップは強力で、特に昨年からレギュラーの新野は期待の左スラッガーだ。

 攻撃力も高く、伝統の守備力も高さも健在。継投策も使えるため、勝ち上がってもおかしくない。

140キロ超え投手を多数擁する県立岐阜商も勢いに乗れるか

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髙木翔斗

 春夏連続出場の県立岐阜商は岐阜大会でも苦しみながら勝ち上がってきた。やはり戦力は厚い。
 なんと言っても注目は140キロ超え投手が多いこと。大会屈指の左腕・野崎慎裕は140キロ超えの速球、切れ味鋭い変化球を武器に圧倒し、右腕・大島成憧、次期エース候補・小西 彩翔井上悠がスタンバイ。センバツでも登板した148キロ右腕・松野匠馬は岐阜大会では野手だった。

 打線はプロ注目捕手・高木翔斗は岐阜大会でも本塁打を放ち、順調に成長を遂げた。打撃好調の1番・行方 丈が活躍し、トップバッターとして活躍していた2年生の内藤大輔が下位に座り、隙のない打線となった。

 どの選手もスイングスピードが速く、総合力はトップクラス。鍛冶舎監督の選手起用、重要な場面の采配も冴え渡っており、やはり怖いチーム。組み合わせや、戦い方次第では一気に上位に進出してもおかしくない。

[page_break:横浜野球復活 総合力が高い横浜も脅威]

横浜野球復活 総合力が高い横浜も脅威

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金井慎之介

 最後に横浜を挙げたい。昨年4月に就任した村田浩明監督は一から野球部を再建。神奈川大会の試合運びを見ても、往年の横浜を思い出すような打撃、走塁、守備であった。渡辺元智氏、小倉清一郎氏の指導も加わり、高度な横浜の攻めに神奈川の学校は封じることができなかった。

 打率5割の1年生・緒方漣、強打の2番・安達大和、投手ではあるが、チーム一の強打者である金井慎之介、広角に長打が打てる強打の捕手・立花祥希、鮮やかな三塁守備とチームトップクラスの打撃技術を誇る宮田知弥の6人は全国レベルの技量を持つ。他の選手たちもバットコントロールが高く、非常に隙がない打線だ。守備も球際に強く、落ち着いた守備を見せている。

 投手は、安定感が高い右の好投手・山田 烈士、ドラフト候補に挙がる大型左腕・金井 慎之介、右投手・田高 康成、決勝戦で好投した1年生左腕・杉山 遙希、三塁手の宮田もマウンドに登り、制球力重視の投球で打たせて取る。甲子園まで金井の調子がどこまで挙がるか。

 この1年、全国舞台に出ていないため、一番手の評価をされていないが、今年の出場校と比較した時、十分に上位も狙える。継投策も使え、やはりマークするべきだろう。

 以上となる。他にも上位進出が狙えるチームも多くあり、組み合わせを見てどの学校が上位に勝ち進めるのか、改めて紹介をしていきたい。

(文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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