第96回全国高等学校野球選手権神奈川大会 展望
190校が集う激戦・神奈川を制するのは
7月11日から開幕する第96回神奈川大会。第1シードは春季関東大会準優勝の向上、春季県大会ベスト4で強力打線がウリの慶應義塾、140キロ台の投手が揃う東海大相模、秋春の2季連続で県大会を制した横浜の4校となった。この4校が一歩リードしており、優勝候補と注目されるだろう。
だが神奈川はこの4校以外にも多数の好チームが存在し、虎視眈々と甲子園への切符を狙っている。ブロック別に今年の注目校を挙げていきたい。
Aブロック 関東大会準優勝の向上が一歩リード
▲高橋 裕也 (向上)
春季関東大会準優勝の第1シードの向上は、県大会準決勝で東海大相模との延長戦を制し、決勝進出。決勝では横浜に僅差で敗れたが、存在感を示した。春季関東大会初戦では甲府工に9回逆転サヨナラ勝ち、準決勝では選抜ベスト4の佐野日大に勝利するなど、大きな成長を見せた春だった。
エースの高橋 裕也(3年)は試合終盤まで140キロ前半を計測するスタミナがつき、最後まで強気の投球が出来るようになった。また2番手では長身左腕・日名子 広大(3年)が成長し、関東大会準々決勝・成立学園戦で、8回11奪三振を奪う好投を見せ、投手層の厚みが増したことが大きい。打線では俊足の三廻部 憂磨(3年)、パンチ力のあるショートストップ・菅野 赳門(3年)、正捕手で、攻守の要である安達 鴻希(3年)を中心に相手投手を打ち崩す。念願の甲子園へ、投打で底上げを目指す。
向上は、開幕戦で戦う横須賀総合と県立川崎の勝者と戦う。横須賀総合は2012年夏の神奈川大会で、向上と開幕戦を戦い勝利しており、もし対戦が実現すれば、なにかひと波乱がありそうだ。
第2シードの日大高は、2年生中心の投手陣の活躍により、秋季関東大会出場、春季県大会ベスト8進出。先発は右の技巧派サイドで打たせて取る投球が持ち味の中村 雅治(2年)が試合を作り、左腕からキレのある130キロ前後の速球で相手打者を封じる則竹 良太(2年)が中継ぎで登場し、ピンチを切り抜け、そして試合終盤はチーム内で最も威力ある速球を武器にストッパー的な役割をこなす右腕の川口 諒太(2年)が締めくくり勝ち進んできた。
打線では犠打を絡めてコツコツと1点を重ね、逃げ切りを測るスタイルだ。上位進出の鍵としては、3投手の継投のタイミングということになるだろう。
ベスト16入りし、第3シードとなった鶴嶺はエースの松田 裕樹(3年)、三塁手を兼ねる本格派右腕・若林 和哉(3年)の二枚看板で春季大会を勝ち上がってきた。経験者も多く、投打ともに技量が高い選手が揃い、上位進出に期待がかかるチームだ。同じく第3シードの相洋は横浜商大高と延長14回までの接戦を演じて、春季大会4回戦進出を果たした。夏も粘り強い戦いで、上位進出を目指す。
ノーシードからは上溝南の140キロ右腕・臼井 直哉(3年)と140キロ近い速球を投げ込む関東学院のエース・北村 和也(3年)の2人の投手に注目。このブロックの好カードは昨夏準優勝の平塚学園と、藤嶺藤沢の一戦で、注目は2年生エースの投げ合いだ。藤嶺藤沢のエースは将来性が高い右のサイドハンド・岡本 直士(2年)。平塚学園のエースは好左腕・新倉 慶輔(2年)で、見応えのある対決になりそうだ。
強豪が揃うBブロック!
▲原田 匠 (慶應義塾)
第1シードの慶應義塾は一発長打のある名幸 大成(3年)、広角に打ち分けるバットコントロールが光る柳町 達(2年)の2人を中心とした打線の破壊力は県内屈指。
投手陣ではキレのある速球、スライダー、シンカーを投げ分けるエース・原田 匠(3年)の好投がカギを握るだろう。
第2シードの桐蔭学園は大型右サイドの須永 悦司(3年)が、今年の春季県大会4回戦の横浜戦では2失点完投。惜敗したが、夏へ期待が持てる内容だった。勝ち進むには須永の好投がカギを握るだろう。
第3シードで、昨秋ベスト4の桐光学園はエース山田 将士(3年)が投打の柱であり、一発を打てる心強い存在。打線では好打者・武 拓人(3年)を中心にミート力が高い選手が揃い、点を積み重ねる。また伝統的に内外野の守備力が高いチームで、山田を含め、投手陣の底上げが出来れば、上位進出が期待できる好チームだ。同じく第3シードの山手学院は春季大会で横浜創学館に2対4で接戦を演じた好チームだ。
このブロックではノーシードながら注目チームが多く、いきなり横浜隼人vs横浜商大高の対決が実現。横浜隼人は走攻守三拍子揃った大型ショートストップ・宗 佑磨(3年)、一発のある手塚 渓登(3年)を軸に破壊力ある打線で、大量得点を築く。
また横浜商大高は、好投手・続木 悠登(3年)を擁しており、粘り強い戦いを見せる。
さらにもう一つ挙げたい好カードは横須賀大津vs厚木北で、こちらの注目は投手同士の投げ合いだ。横須賀大津エース・小林 輝(3年)は140キロ近い速球を投げ込む右腕で、厚木北のエース・福岡 美輝(3年)も最速140キロを超える直球が武器の速球派で、見逃せない一戦になりそうだ。
このブロックの注目校はノーシードの大師だ。東海大相模出身の野原監督の下、着実に力をつけてきており、春季県大会2回戦では横浜隼人に3対5と惜敗したものの、夏へ期待が持てる試合内容だった。夏も強豪校が揃う厳しいブロックに入ったが、春より成長した姿を見せて、上位進出を目指したい。
Cブロック 投手層の厚い東海大相模に注目!
▲吉田 凌 (東海大相模)
第1シードの東海大相模はやはり投手力が一番の武器だ。最速145キロ右腕・青島 凌也(3年)、常時140キロ中盤の速球に、スライダーを武器にする吉田 凌(2年)、191センチの長身から角度ある直球を投げ込み、スケールではナンバーワンの佐藤 雄偉知(3年)、キレのある140キロ台のストレートとスライダーを武器にする左腕・小笠原 慎之介(2年)と全国クラスの投手力を誇る。東海大相模はこの4人をうまく使い分け、実戦で結果を残すことが甲子園出場への鍵となるだろう。打線では好打者・杉崎 成輝(2年)、強打の捕手・長倉 蓮(2年)、勝負強さと長打力を兼ね備えた平山 快(3年)を軸とした打線は強力だ。
ベスト8入りした第2シードの南は好投手・神谷 翼(2年)を中心に粘り強く勝ち上がった。この夏も堅実な守備で失点を防ぎ、甲子園出場を目指す。
第3シードとなった法政二は140キロ右腕・河野 太一郎(3年)、仲島 大雅(2年)の2枚看板は強力で、勝負強い4番打者・田島 尚通(3年)、広角に打ち分ける打撃を得意とする向山 基生(3年)を中心とした打線の破壊力は脅威だ。同じく第3シード権を獲得した神奈川桜丘は春季県大会3回戦で、湘南に逆転勝利した粘り強さがウリだ。
またノーシードには私学、公立問わず強豪校が多い。まず私学では威力ある直球を武器にする右腕・関野 大哉(2年)擁する湘南学院、スラッガー・松野 悠大(3年)を軸に強力打線がウリの武相、大型捕手・下地 滉太(2年)、長打力のある半場 将太(3年)を軸に打ち勝つ日大藤沢の3校に注目。
公立では川崎工科に目を向けたい。広角に打ち分けるバットコントロール、スピーディな遊撃守備が光るショートストップ・江越 啓太(3年)の活躍に期待だ。伝統的に強力打線を育てあげる戸塚、春季県大会1回戦で鎌倉学園に10対0とコールド勝ちした厚木。この3校の戦いぶりが見逃せない。
[page_break: Dブロック 2年連続甲子園出場を目指す横浜、追う横浜創学館]Dブロック 2年連続甲子園出場を目指す横浜、追う横浜創学館
▲浅間 大基 (横浜)
秋春連続優勝を果たした第1シードの横浜。県内での試合を見ると、走攻守すべてにおいて一歩先のプレーを見せており、隙がなく、優勝候補に挙がる学校であることは間違いない。打線ではチャンスメーカーの川口 凌(3年)がチャンスを作り、主砲・高濱 祐仁(3年)、浅間 大基(3年)が期待通りの強打を披露し、試合の主導権を握る。選抜大会、関東大会ではエースの伊藤 将司(3年)が不調に終わり、伊藤の復調がカギになるだろう。伊藤の負担を減らす意味でも、本格派右腕・日暮 圭一(3年)、長身左腕・春日井 静斗(2年)の成長にも期待したい。
第2シード校の横浜創学館は、投手陣では140キロ右腕・海老塚 耕作(3年)、経験豊富な左腕・福田 俊(3年)の2人で勝ち上がり、打線は強肩で、勝負強い一打を見せる正捕手・北村 航太(3年)がキーマンになりそうだ。
チーム作りに定評のある佐相監督が率いる第3シードの相模原は春季県大会4回戦で、横浜に1対5と善戦を演じた。夏へ向けてさらに手強いチームに変貌し、他校の脅威となるか。同じく第3シードの立花学園は強打の捕手・荒井 貴仁(3年)がチームを引っ張る。
ノーシードだが、湘南は繋がれば一気にビッグイニングを作る打力が魅力。その中でも、小柄ながらパンチ力のある二塁手・大沼 拓都(2年)に注目だ。
今年は各ブロックに強豪校が散らばり、横浜隼人、武相のような強豪校がノーシードで登場するので、初戦から見逃せないカードが多く、白熱した試合展開が期待出来そうだ。
(文=河嶋 宗一)
第96回全国高等学校野球選手権神奈川大会 開催概要
組み合わせはこちら(神奈川県高野連HP PDF)
7月12日~7月30日 参加校数:190
決勝球場:[stadium]横浜スタジアム[/stadium]
その他の球場[stadium]保土ヶ谷・神奈川新聞スタジアム[/stadium]、[stadium]バッティングパレス相石スタジアムひらつか[/stadium](平塚球場)
[stadium]大和スタジアム[/stadium](大和引地台球場)、
[stadium]サーティーフォー相模原球場[/stadium]、[stadium]横須賀スタジアム[/stadium]、[stadium]藤沢八部球場[/stadium]、[stadium]等々力球場[/stadium]
[stadium]秦野球場[/stadium]、
[stadium]小田原球場[/stadium]、[stadium]いせはらサンシャイン・スタジアム[/stadium]、[stadium]俣野公園横浜薬大スタジアム[/stadium]
昨夏代表:横浜(第95回神奈川大会結果)
昨秋優勝:横浜(秋季神奈川県大会結果)
選抜出場:横浜(秋季関東地区大会結果)
今春優勝:横浜(春季神奈川県大会結果) (春季関東地区大会結果)
【高校野球ドットコム編集部】
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