Column

連戦を勝ち抜くコンディショニング

2016.07.15

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 甲子園を目指す地区大会もいよいよ後半戦に突入してきました。トーナメント制の特徴として勝ち上がっていくとどうしても試合が続いてしまうことになります。今回は連戦に備えるための疲労回復方法や栄養面で準備すること、また試合中に足がつったときの応急処置などについてお話をしたいと思います。

連戦に耐えられる身体づくり

体のコンディションを把握するためにも試合後は必ずストレッチを行おう

 

 試合期間に入ってくると、急激な体力向上や筋力向上はあまり期待できませんが、その分身体に疲労をためないためのコンディショニングづくりを中心に行っていく必要があります。一日の練習や試合後の疲労をなるべく翌日に残さないようにして、次の試合に備えるようにしましょう。試合後はクールダウンを入念に行います。

 チーム全体で行う場合や個人で行う場合があると思いますが、基本的には自分の身体をチェックしながら違和感や痛みがないかどうかを確認しながら行いましょう。ストレッチをしてみると筋肉が張った状態を確認することができたり、左右で柔軟性の違いを感じたりすることが出来ると思います。痛みを伴う場合は氷などを使ってRICE処置を行うようにします。

 帰宅後の入浴は必ず湯船につかって全身を温めるようにしましょう。暑い時期にお湯につかると余計に疲れてしまうかも・・・という心配があるかもしれませんが、少しぬるめの温度設定にするとリラックス効果も期待できます。また温度だけではなく、浮力によって筋肉の緊張を和らげたり、水圧によって静脈血が心臓に戻るのを助けるクールダウン効果も期待できます。

 暑さが気になる場合は湯船のお湯と冷水シャワーを使った交代浴もオススメです。冷水シャワーは全身にかけなくても、足元や手先だけでも構いません。交代浴をする場合は最後に冷たい(ぬるくでもOK)水で身体を引き締めるようにします。

 そして帰宅後の食事も重要です。まずは試合に備えて炭水化物を中心にエネルギー源をしっかりとりましょう。試合前の食事では脂っこいもの、食物繊維が多く含まれるもの、生もの、普段食べ慣れていないものなどはなるべく避けるようにしましょう。翌日に突然の腹痛に襲われないためにも意識しておきたいところです。

 またオメガ3系の油には炎症を抑える効果が指摘されており、運動後に適量を摂取することで筋肉痛の軽減や疲労回復を促進させる効果が期待できます。魚にも多く含まれるのですが、試合前日であれば生魚ではなく焼き魚や煮魚などにしたほうが良いでしょう。オメガ3系の油は亜麻仁油やエゴマ油などにも多く含まれるので、ドレッシングとして適量サラダなどにかけてとるといった方法もオススメです。

⇒次のページ:連戦になると疲労や脱水との戦いも

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連戦になると疲労や脱水との戦いも

暑さだけではなくプレッシャーや緊張などによっても筋けいれんを起こす場合がある

 

 暑い時期ですので熱中症対策として水分補給・ミネラル分補給は意識して行っているチームが多いと思います。ただ水分だけをとり続けてしまうと自発的脱水といってさらに脱水症状が悪化してしまうこともありますので、適度な塩分をとるようにしましょう。ベンチ裏に補食として塩おにぎりや梅干し入りのおにぎりなどを準備しておくと、エネルギー源とともに塩分やクエン酸なども補給できます。

 前日の試合後に疲労回復のためにさまざまな取り組みを行ったとしても、翌日に疲労がゼロになっているというのは考えにくいため、エネルギー源をしっかり確保しながら試合に臨みたいところです。

 また試合中に足や腕などがつってしまう選手をよく見かけます。水分・ミネラル分補給をしていたとしても、暑さや疲労、プレッシャーや緊張、人工芝のグランドといった地面の問題などから、筋肉が軽いけいれんを起こすことがあります。足がつってしまったときは、慌てずに息を吐きながらゆっくりと筋肉を伸ばしていくようにします。一人で行うことがむずかしい場合は誰かに手伝ってもらってパートナーストレッチを行いましょう。

 足がつった場合などの一時的な筋肉のけいれん※は血流不足によるものですので、患部を温めたり、筋肉を軽くほぐしたりしながら血流の改善を促します。このような対処とあわせて水分・ミネラル分補給を忘れずに行いましょう。市販の経口補水液などがあればより早く回復することが症状の改善が期待できます。

(※筋肉のけいれんが長く続くと、筋線維を痛めて肉離れのような症状になることがあります。ストレッチや筋肉をほぐしても痛みが変わらない、痛みが増す場合はプレーをやめてRICE処置を行う必要があります)。

 ここまで勝ち残ってきていると疲労とうまく付き合いながら、よりよいパフォーマンスを発揮することが求められます。今までの練習の成果が活かされるよう、体調管理をしっかり行って試合に臨んでくださいね。健闘を期待しています!

●試合後にはクールダウンを行い、身体の変化をチェックしよう
●痛みのある部位は氷などを用いてRICE処置を行う
●入浴は湯船につかって血流をよくすること。交代浴もオススメ。
●食事はエネルギー源を中心に。オメガ3系の油も上手に活用しよう
●試合中の補食は塩分やクエン酸を含むものを準備するとよい
●筋肉がつったときは、慌てずに息を吐きながらストレッチをすること

(文=西村 典子

次回コラム公開は7月30日を予定しております。


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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